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スターリン ― その秘められた生涯 (J.バーナード ハットン)

 家の本棚にあったので読んでみました。
 原題は「The Private Life of Joseph Stalin」(ヨシフ・スターリンの私生活)で、そのタイトルどおりスターリンの私的生活の面を中心にその一生を紹介した著作です。

 とはいえ、私的生活に止まらず、レーニンやトロツキーといった面々との関係ややりとり、さらにはスターリンが政敵に対して下した公式には確認されていない行為等も記されています。

 たとえば、いわゆる「レーニンの遺言書」といわれる書き物の一節です。

(p78より引用) 「スターリンは書記長となるに及んで、その手に巨大な権力を掌握した。しかしわたしは、彼が細心の考慮を払ってその権力を行使するすべを心得ているとは信じない」・・・
「わたしは、同志諸君がスターリンを書記長の地位から追いだし、もっと誠実で、礼儀をわきまえ、もっと思慮に富み、移り気でない他の同志を書記長に指名する手段を講ずるよう提案する」

 そして、このレーニンの遺言書が政治局のメンバーに明かにされて、しばらく後、

(p85より引用) 彼(スターリン)の秘書カンネルは、レーニンの侍医二人がスターリンの部屋に入るのをみた。・・・スターリンは侍医の一人に向かっていった。「君はすぐゴルキーまでいってもらわねばならない。急いでレーニンを診察してもらいたいのでね」・・・
 翌日、致命的な発作がレーニンを襲った。

 第二次大戦最終盤から戦後にかけてのスターリンの外交活動は極めて精力的なものでした。必ずしも当時の国際政治の牽引者ではなかったスターリンですが、チャーチル、F.ルーズベルト、その後のトルーマンらに伍して外交面での影響力は大きなものがあったようです。
 もちろん、これが故にスターリンの独裁制が正当化されるものでは決してありません。また、この外交方針がその後の国際社会において正しい道であったかといえば、そうではなかったという評価にもなるでしょう。

 ちょうど8月6日、本書で「広島への原爆投下」が触れられている部分を読みました。スターリンにとっての「原爆投下の意味」についてです。

(p185より引用) アメリカの原子爆弾が広島で炸裂した時、スターリンの打算はすべて、裏切られてしまった。彼はこの原子爆弾の成功は、西欧側の政治家たちが、もはやソビエトの軍事力をさほど高く評価する必要のないことを示すものであると理解した。

 直後、スターリンは、原子爆弾の製造を促進する指示を出しました。



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