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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2021年9月の記事一覧

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて (佐藤 優)

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて (佐藤 優)

 会社の先輩の方がご自身のBlogで紹介されていたので、私も読んでみました。同時代の個別具体的テーマを扱った本はあまり読まないのですが、この本は以前から気にはなっていました。

 佐藤優氏の側からの事実とそれに基づく評価ではありますが、事件関係者について巷間に伝えられる人物評とかなり異なる“人となり”が書かれています。
 このあたり、本書の内容がすべて真実であるか否かは脇に置くとしても、大衆迎合的

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團十郎の歌舞伎案内 (市川 團十郎(十二代目))

團十郎の歌舞伎案内 (市川 團十郎(十二代目))

 古典芸能については全くの門外漢ですが、ちょっと興味はあります。
 そういうこともあり、以前、茂山千三郎氏による「世にもおもしろい狂言」という狂言の入門書を読んでみました。

 今回は「歌舞伎」です。
 本書は、歌舞伎の代表的役者である市川團十郎氏が、2007年9月青山学院大学で話された集中講義の内容をベースに1冊の本にまとめたものとのことです。話し言葉で記されたとっつき易い内容です。

 本の前

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社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流 (斎藤 槙)

社会起業家―社会責任ビジネスの新しい潮流 (斎藤 槙)

 出版は2004年7月ですから、かなり前の本です。

 本書では、ビジネス(企業)の社会化、NPOのビジネス化及び両者のパートナーシップといった社会責任ビジネスの動向を概説するとともに、米国及び日本の社会起業家の活動を具体的に紹介しています。

 私も、CSR(企業の社会責任)のコンセプトについてはある程度の知識をもっていましたが、「社会起業家」という言葉はこの本を読むまで知りませんでした。
 「

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歴史をさわがせた女たち 日本篇 (永井 路子)

歴史をさわがせた女たち 日本篇 (永井 路子)

 作者の永井路子さん。今から30数年前、中学時代に体育館で講演を聞いた記憶があります。本書の第1刷が1978年とありますから、講演はその少し前ですね。

 本書は、ごく気楽に読める歴史エッセイです。テーマは「歴史上の女性たち」。
 「愛憎にもだえた女たち」「ママゴン列伝」「強きもの―それは人妻」「女が歴史を揺さぶるとき」「ケチと浪費の美徳」「勇婦三態」「裏から見た才女たち」という7章、計33名の女

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ローマ人の物語‐賢帝の世紀 (塩野 七生)

ローマ人の物語‐賢帝の世紀 (塩野 七生)

 先に読んだ「ローマ人の物語‐終わりの始まり」はマルクス・アウレリウスの時代が中心でしたから、少し時代を遡ったことになります。

 五賢帝時代の中期、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの物語です。この3人の皇帝は、それぞれに個性が全く異なっていて、その対比と連続がなかなか興味をそそりました。

 まずは、トライアヌス。
 ネルヴァの後継のトライアヌスは初めての属州出身の皇帝でした。塩

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日本の町 (丸谷 才一・山崎 正和)

日本の町 (丸谷 才一・山崎 正和)

廃墟の美 この本も書棚から引っ張り出してきた古い本です。
 丸谷才一・山崎正和両氏による「日本の町」をテーマにした1980年代の対談集です。

 題材になったのは、日本の8つの町。

金沢―江戸よりも江戸的な
小樽―「近代」への郷愁
宇和島―海のエネルギー
長崎―エトランジェの坂道
西宮芦屋―女たちがつくった町
弘前―東北的なもの
松江―「出雲」論
東京―富士の見える町

 宇和島以外は、私も訪れ

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古往今来 (司馬 遼太郎)

古往今来 (司馬 遼太郎)

 司馬遼太郎氏の小説やエッセイは一時期よく読んでいたのですが、最近はご無沙汰しています。
 今回の本は書棚を眺めていて、気になって手に取ったものです。書棚にあるわけですから以前読んだ本のはずなのですが、どんな内容だったのか全く記憶がなかったので・・・。

 中身は、新聞や雑誌で発表された昭和50年代以前の随筆を集めたもので、司馬遼太郎氏ならではのフレーズを垣間見ることができます。

 たとえば、京

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史実を歩く (吉村 昭)

史実を歩く (吉村 昭)

 吉村昭氏の作品は、以前数冊読んだことがあります。
 テーマ選定の鋭さ、描写の緻密さ等、作品に対する一本気な姿勢が感じられて、私の好きな作家のひとりです。

 本書は、いくつかの作品の執筆に関わる吉村氏ならではのエピソードを氏自らが紹介したものです。改めて、吉村作品の厚みの根源を知らしめられます。

 まずは、歴史小説を執筆するにあたって、吉村氏の「事実への執着の強さ」を物語る言葉です。
 作品「

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コンサルタントの「質問力」 (野口 吉昭)

コンサルタントの「質問力」 (野口 吉昭)

語彙と語感 最近とみに目に付く「○○力」と銘打った新書です。

 著者の野口吉昭さんは、まず冒頭「はじめに」で、「いい『質問』の効用」についてこう切り出します。

(p3より引用) いい質問は、いい空気を作るし、いいコミュニケーションを作る。いい質問は、相手を元気づけるし、楽しくさせる。いい質問は、相手を動かし、成果を出すプロセスを作る。
 いわばいい質問とは、「動機づけ」の結節点であり、エネルギ

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日本史はこんなに面白い (半藤 一利)

日本史はこんなに面白い (半藤 一利)

 「週刊文春」誌や「文藝春秋」誌の編集長を歴任した作家の半藤一利氏が、16人のゲストの方々と日本史上の人物やエピソードをテーマに語り合った対談集です。

 対談相手の方々もそれぞれ一家言ある強者(つわもの)なので、興味深く読み進めることができました。

 語られる説は、語るご本人の思い込みもあるものですからすべてが真実であったかといえば疑問符がつきます。しかしながら、各人の知識と想像力を駆使した仮

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戦略の本質 (野中 郁次郎 他)

戦略の本質 (野中 郁次郎 他)

賢慮型リーダー 本書の姉妹編である「失敗の本質」においては、その分析スキームに組織論的な観点が見られました。
 他方、今回の「戦略の本質」においては、著者のひとり野中郁次郎氏を中心に主張されている「知識創造理論」における最近の成果が活用されているようです。

 その考えでは、「場」や「リーダーシップ」といった要素が重要視されます。

 本書の終章「戦略の本質とは何か」でまとめられている10番目は「

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アルハンブラ物語 (W・アービング)

アルハンブラ物語 (W・アービング)

 著者のワシントン・アービングは1783年ニューヨークに生れました。
 本書は、1826年在スペインアメリカ公使館書記官としての約3年間のスペイン生活の間に記した紀行文のひとつです。

 物語の舞台はアルハンブラ。ご存知のとおり、スペイン南部アンダルシア地方のグラナダにあるイスラム王朝ナスル朝の宮殿です。

 アービングは、幼いころからアルハンブラには憧れを感じていたようです。

(p66より引用

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ローマ人の物語 ‐ 終わりの始まり (塩野 七生)

ローマ人の物語 ‐ 終わりの始まり (塩野 七生)

終わりの始まり 塩野七生さんの本は、以前にも「マキアヴェッリ語録」「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」等を読んでいるのですが、今回手にした本は、塩野さんの代表的シリーズ作「ローマ人の物語」の中の1冊です。

 第1巻から読み通すパワーがないので、まず選んだのは個人的に最も関心のある「マルクス・アウレリウス」が登場する巻でした。彼の「自省録」は私の読んだ本のなかでも印象に残っているもののひと

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銀座のプロは世界一 ‐ 名店を支える匠を訪ねて (須藤 靖貴)

銀座のプロは世界一 ‐ 名店を支える匠を訪ねて (須藤 靖貴)

 以前、「銀座の達人たち」という本を読みましたが、本書も同じような系統のものです。
 「食」「飲」「美」「匠」「装」「趣」の6つの世界で、銀座の名店を支える名人31名が登場します。

 その中で私の印象に残った名人の言葉をいくつかご紹介します。

 まずは、まさにプロ中のプロらしい台詞をふたつ。
 「レストラン銀圓亭シェフ萩本光男氏」の言葉。

(p29より引用) できない人ほど手を抜く。できない

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