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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2021年8月の記事一覧

自由をいかに守るか‐ハイエクを読み直す (渡部 昇一)

自由をいかに守るか‐ハイエクを読み直す (渡部 昇一)

自由 本書も、先に読んだ「日本史から見た日本人」と同じくセミナーの課題図書としていただいたので読んだものです。

 恥ずかしながら本書に触れるまでは、ハイエクという人は知りませんでした。
 辞典の受け売りですが、ハイエク(Friedrich August von Hayek 1899~1992)は、オーストリアの経済学者で、1974年ノーベル経済学賞を受賞しています。自由市場経済を擁護し、その著書

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日本史から見た日本人 昭和編‐「立憲君主国」の崩壊と繁栄の謎 (渡部 昇一)

日本史から見た日本人 昭和編‐「立憲君主国」の崩壊と繁栄の謎 (渡部 昇一)

 参加したセミナの課題図書として指定されたので読んだ本です。
 渡部昇一氏の著作は初めてでした。

 渡部氏は、本書で、自身の昭和史観の集大成を目指したと言います。昭和史の中でも、特に「第二次世界大戦(渡部氏の用語では「大東亜戦争」)」に至る背景を詳細に論じています。

 渡部氏は、不幸な戦争に至った根源的遠因は明治期の「大日本帝国憲法での規定事項の欠陥」にあったと指摘します。

(p9より引用)

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史上最強の論理パズル-ポイントを見抜く力を養う60問 (小野田 博一)

史上最強の論理パズル-ポイントを見抜く力を養う60問 (小野田 博一)

 問題のパターンに変化が乏しいので、著者には申し訳ないのですが、自分で考えて問題を解くのは途中で諦めてしまいました。

 キチンと問題にあたって実際頭を悩ませてみるという「実戦」が一番身になるのでしょうが、解答ページに書かれている「論理的に考えるポイント」に目を通すだけでも、首肯できるコメントがいくつかありました。

 たとえば、

(p30より引用) 「瞬時に答えを得ようとする態度」を捨てよう!

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トヨタ 愚直なる人づくり ‐ 知られざる究極の「強み」を探る (井上 久男)

トヨタ 愚直なる人づくり ‐ 知られざる究極の「強み」を探る (井上 久男)

トヨタウェイ トヨタの「強さ」の源泉を説く書籍は、それこそ山のように出版されていますが、本書は、その中でもかなり最近のもの(最初にBlogを投稿した当時)です。

 切り口は、「カイゼン」「カンバン方式」といった定番の生産管理関係ではなく、「人づくり(人材育成)」に焦点をあてています。

 とはいえ、やはりトヨタに関する本で「カイゼン」に触れないわけにはいきません。もちろん「カイゼン」活動も「人」

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私の古寺巡礼 (白洲 正子)

私の古寺巡礼 (白洲 正子)

 「プリンシプルのない日本」、「白洲次郎の流儀」など白洲次郎氏に関する本は何冊か読んだことはあるのですが、白洲正子氏の本は初めてです。

 本書は、正子氏が若狭・熊野・近江・奈良等の寺社を巡った、その折々を記したエッセイ集です。

 飾り気のない素直な語り口で、それでいて細かな心遣いが感じられる文章ですね。
 たとえば、こういう感じです。

(p57より引用) 織物でも織るように、そうしたさまざま

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ウェブを変える10の破壊的トレンド (渡辺 弘美)

ウェブを変える10の破壊的トレンド (渡辺 弘美)

 著者の渡辺弘美氏は、2007年までJETROニューヨークセンターにおいてIT分野の調査を担当していたとのこと。

 本書では当時最新だったWebの世界のトレンドを10のキーワードにまとめ、それぞれごとに、欧米を中心にすでに提供されているサービスや技術の具体的な紹介により、その内容や意味づけ等を明らかにしていきます。

 著者が示す「10のトレンド」は以下のキーワードでまとめられています。

ダイ

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効率が10倍アップする新・知的生産術-自分をグーグル化する方法 (勝間 和代)

効率が10倍アップする新・知的生産術-自分をグーグル化する方法 (勝間 和代)

 勝間和代氏の本を手に取ったのは初めてです。

 正直なところ、ちょっとがっかりしたというのが読後感ですね。本質的な部分について、説明が貧弱だったり、他の書籍の紹介で済ませていたりと物足りなさが残ります。How-Toのインデックスといった趣きです。
(もちろん、そういう本も使い方次第では有益ですし、その観点からいえば、読みやすく即効性のある内容だと思います。)

 たとえば、「情報洪水から1%の本

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奇想遺産‐世界のふしぎ建築物語 (鈴木 博之 他)

奇想遺産‐世界のふしぎ建築物語 (鈴木 博之 他)

 建築関係の本は、安藤忠雄氏の「連戦連敗」をはじめとして、中村好文氏による「意中の建築」、古市徹雄氏による「世界遺産の建築を見よう」等々を読んでみています。

 今回の本は、朝日新聞日曜版「be on Sunday」の同名《奇想遺産》という連載コーナーで紹介された建築物の中から「77作品」をセレクトしてまとめたものです。
 個々の紹介文はそれぞれの建築物の解説にとどまらず、その建築物に触発された著

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バカにならない読書術 (養老 孟司・池田 清彦・吉岡 忍)

バカにならない読書術 (養老 孟司・池田 清彦・吉岡 忍)

 養老孟司氏の本は、いままでもベストセラーの「バカの壁」をはじめ「ぼちぼち結論」など何冊か読んでみています。

 今回の本は、大きく2部構成。

 前半は、「本を読む」ということを材料に、養老氏お得意の「脳」の話や「虫」の話が、気の向くままという感じで展開されます。
 その内容は、必ずしも「養老流読書術」の解説とは限りません。

 たとえば「読み聞かせ」の効用について語っている章では、脳の発達にお

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庭と日本人 (上田 篤)

庭と日本人 (上田 篤)

 著者の上田篤氏は、建築家・建築学者です。

 とはいえ、本書は、建築学的側面からの「庭」の解説・紹介ではありません。縄文時代から江戸期にかけての「庭」を材料に、「日本人の精神文化」を論じた著作です。

 「日本文化論」としての専門的論考を求めると、さすがに少々立論に粗さが感じられますが、著述のなかの「和歌」や「俳句」を引用した解説には興味深いものがありました。

 たとえば、宝池を中心とした浄土

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ゴルギアス (プラトン)

ゴルギアス (プラトン)

 プラトンの著作は、ちょっと前にも「プロタゴラス」を読んでみましたが、本書は、参加しているセミナーでの課題図書として指定されたので手に取ったものです。

 例のごとくソクラテスと論客との対話形式で立論が進んで行きます。

 以下のフレーズは、ソクラテスの「対話」に対する姿勢の表明です。

(p48より引用) ところで、そういうわたしとは、どんな人間であるかといえば、もしわたしの言っていることに何か

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旅の途中で (高倉 健)

旅の途中で (高倉 健)

(本稿は10年以上前に別ブログで公開したものの再掲です)

 特に、高倉健さんのファンというわけではないのですが、健さんのエッセイの評判が結構高いとのことで読んでみました。

 健さんは1931(昭和6)年生れですから、もう70歳半ば(当時)を過ぎていらっしゃいます。本書は、健さんが60歳代のとき、ラジオ番組ニッポン放送「高倉健旅の途中で…」で語られた内容を書き起こしたものです。

(p35より引

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NTTの自縛 知られざるNGN構想の裏側 (宗像 誠之)

NTTの自縛 知られざるNGN構想の裏側 (宗像 誠之)

 数年前にNTTが取り組んでいた「次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)の構築」をひとつの材料に、当時のNTTグループが直面していた大きな課題を明らかしようとしたレポートです。

 著者は、NTTグループが抱える課題の根幹にあるものを「電話的価値観」だと指摘しています。

 そういった視点から捉えられたいくつかの問題的事象を紹介しましょう。

 まずは、著者が

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脳と日本人 (松岡 正剛・茂木 健一郎)

脳と日本人 (松岡 正剛・茂木 健一郎)

二人の会話 松岡正剛氏・茂木健一郎氏、お二人の本はそれぞれ何冊か読んでいます。
 特に、松岡氏の著作は、時間的にも空間的にも広い視野でテーマをとらえ、刺戟的な視点から意外な立論がなされるので非常に勉強になります。

 本書は、その松岡氏と脳科学者である茂木氏との対談集です。面白い顔合わせですね。
 そのお二人の話の中から、興味を惹いたやりとりや、松岡氏・茂木氏各々の考え方が際立ったフレーズを私の覚

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