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随筆

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音楽とか映画とか読書とか。
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Kamasi Washington『Fearless Movement』/音楽レヴュー

Kamasi Washington『Fearless Movement』/音楽レヴュー

正座して初聴した際、満足できなかったのだけど、わたしが力み過ぎていたらしい。ドライブしながらふふ〜んと聴き重ねていくうち、繊細な表現にハッとしたり。サックスの咆哮に胸アツしたり。前作までと変わらない綱渡りのようにスリリングな演奏+今まで感じることのなかった傷を癒やすようなアンビエントなプレイに満足。まだまだわたしの感性を刺激してくれそうなので星は以下の通り。大きな期待を込めて。可能性は輝いている。

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Regurgitator『Invader』/音楽レヴュー

Regurgitator『Invader』/音楽レヴュー

ジャケットを目にした途端、いい予感がしたので、思わず勇み足で拝聴。これが、ん~、いいっ。チープと見せかけて、ド*洗練された80sポップス&ロック。97年に発表された名盤『Unit』の進化版。演奏は音数が極端に削がれていて清々しい。『Unit』の頃は偶然の感覚で生まれた演奏もあっただろう。四半世紀以上経って、すべては計算して生み出したはず。偶然の産物ほど神々しいものはないが、経験がモノを言うこともあ

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【観劇レヴューのようなのもの】「アイカとメグミ」演劇ユニットゆめのあと

【観劇レヴューのようなのもの】「アイカとメグミ」演劇ユニットゆめのあと

ケンジたちは普通列車のボックス席に座っている。車内は早い夕方だが、土曜ということもあってそれなりに混雑。ケンジたちの座った目の前には姉妹らしき20代のふたりがスペースにちょうど良く横並びになって前歯のように並んで座っている。窓の外にはケンジの写し絵と、止まったままの景色が見える。電子車掌が抑揚のない声で出発のアナウンスをする。プシュ~ッと音を立ててドアが閉まる。動き出す車窓。時空の旅が始まる。

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ただの映画感想『レザボア・ドッグス』

ただの映画感想『レザボア・ドッグス』

★★★★★

*ネタバレあり注意⚠

4点か5点か迷っての満点。個人の好みなので嫌いな人は嫌いな映画かもだけど。DVDでは何度も観ているのだが、映画館で観るのは初めて。やっぱ大きなスクリーンで観るのや、大音量で体験できるのイイネ!そこが5点にした後押しでした。ほかの理由はカッコいいからっていう言葉しか出てこないんだけど笑。お話の展開の仕方、登場人物たちのアナザーストーリーの挟み方、冴えに冴え渡るジ

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芸術作品としての『らんど』

芸術作品としての『らんど』

ここで言う芸術作品とは、商業主義一切抜きで、かつ受け手のことをあえて考えない、純粋に自分自身に向けられて作られたARTのことを指す。しかし、この芸術作品『らんど』(2024年1月24日発売)を生み出す時点でZAZEN BOYSは少なくとも稼ぐためにやっているのだろうし、リスナーのことだって意識して考えているはず。それでも、根底にあるのはビジネスでもファンサービスでもなく、自己探検だとわたしは確信し

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ただの映画感想『12人の優しい日本人』

ただの映画感想『12人の優しい日本人』

★★★☆☆

「痛快&爆笑の会心作。渦巻く人間模様とテンポの良い展開に目が離せなかった。老若男女にウケる邦画史上の金字塔!」……、きっとそういう作品なのだろうが、年々、脳みそがおじいちゃん化しているわたしには複雑だった。いや、全然複雑ではないと思うのよ、中3の娘は話についていってたからネ。わかった範囲で書くと、日本人の性格をあんなに明瞭に書き分けているところ、三谷幸喜すげえ。あと一貫として有罪を唱

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ただの映画感想『ちょっと思い出しただけ』

ただの映画感想『ちょっと思い出しただけ』

★★★☆☆

会話の巧妙なトリックが印象的。最初は気づかず、内容のない会話だなあとマイナススタートだったわけだが、決めるとこではきっちりパンチラインハメめてくる展開にハッとした。会話劇ならぬ《会話映画》だった。あと、妻を待ち続ける男(永瀬正敏)の存在も気にかかった。葉(伊藤沙莉)は待っているタイプではなく、自分から掴みにいくタイプに見えた。妻を待つのも、恋をトライしようとするのも、儚くていいな。そ

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ただの映画感想『ほかげ』

ただの映画感想『ほかげ』

★☆☆☆☆

★は限りなく5に近い1。理由は感情がシンクロしてしまいすぎて、精神的にずっときつかったから。喉ぼとけに包丁を突き付けられ、眉間にも短銃を押し付けられた気分の95分。何度か耐えきれず発狂してしまう!という危機に瀕した。内容に触れると、子どもは女のまぼろしであり、希望だとずっと思いながら観ていた。だから女が子どもに「嫌いだ」と伝えたシーンには胸が張り裂けた。あんな気持ちをぶちまければいけ

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ただの映画感想『パラサイト 半地下の家族』

ただの映画感想『パラサイト 半地下の家族』

★★★★☆

本作公開前、はりきって観るつもりだったのに、メディアに取り上げられ、話題になってしまったので、あまのじゃくなわたしは観るのをやめた。あれから数年が経ち、気まぐれにゲオでレンタル。結果……、いやあ、観て良かった。悲しくも愉快。でもやっぱりせつない。韓国映画の真骨頂を見た。まったく先が読めなかったですねえ。「とにかく面白かった」となんのひねりもなく言うのもためらわないほどに、良かったなあ

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ただの映画感想『野火』

ただの映画感想『野火』

★★★☆☆

息詰まる作品だった。ただ冒頭の軍隊と野戦病院をたらい回しにされるシーンは滑稽でしかなかった。声に出して笑った。ジョークのように人が死んでいき、肉体もろとも吹き飛んだり、脳天を撃ち抜かれたり、笑いしかなかった。が、徐々に追い詰められ、田村一等兵(主人公)が狂っていくと一転、戦争の現実を突き付けられた。今もこの映画のような惨劇が、遠い世界で起こっていることに絶望した。すぐに近くに戦争が

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透明から永遠。

透明から永遠。


待ちに待ちすぎた!

《向井秀徳が少女だ。》
ZAZEN BOYS『永遠少女』を聴いてそう思う、聴き重ねる度にその思いは強くなるばかり。

12年も待たされた。
でも、待った甲斐があった。新曲のタイトルが『永遠少女』と来れば、『透明少女』という魔法のような曲を思い出さずにはいられない。あれから四半世紀経とうとしているが、『気づいたらオレは夏だった!!』という歌詞の鮮度は冷凍保存されたようにフレッ

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コンテンポラリーダンス、わかんねえよ!

コンテンポラリーダンス、わかんねえよ!

【公演名】
Choreographers2023松本公演
2023年12月8日(金)19:00

【内容】
コンテンポラリーダンス作品が4作楽しめるイベント

【行った理由】
①友人が上演前のプレトークに出るから。
②その友人の奥さんが上演される1作品に出演するから。

【総じての感想】
わからないままでいいこともたくさんある。わからないままで生きている節も大いにある。だから、それでいいんだと噛み

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チバさん、ありがとう。じゃあ、またね。

チバさん、ありがとう。じゃあ、またね。

「チバよりかっこいい男はいない」って言った
旧友は訃報をどう受け止めたのだろう。
今さら連絡を取れる相手でなくて。
でも、この機会を逃したら一生後悔するだろうから
メールしてみるよ。
LINEは知らないんだ。
機会をくれてありがとね。

昨日は泣かなかったのに
今日は泣けて、全然違う曲で。
ミッシェルでもバースディでもなく、
ほかのバンドの曲で。
嫌だなあ、もう。

♪「お前のそのくそったれの世界

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使命は音楽を鳴らすこと。

使命は音楽を鳴らすこと。

❏ライブレポート
ZAZEN BOYS/長野クラブジャンクボックス

序章~今夜も泣けなかった~

泣けない自分が情けなかった。手も足も出ない自分が悔しかった。だからこそ、わたしは書き続けることで戦っていくんだと決意した。

久しぶりの再会と初の対面

2023年11月16日木曜日、午後7時に開演。定刻通りに登場したメンバー4人を目撃した時、静かにわたしは興奮。ライブ参戦人生で、初めて最前列で陣取

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