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▸幸福は美味しいものでできている ▸作家志望の読書記録

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記事一覧

2024年上半期の自選短歌

2024年、6月。 わたしは短歌を詠みはじめた。 きっかけは、作家のくどうれいん先生。 小説・短歌・エッセイ・絵本に俳句。なんとも多岐にわたってご活躍される先生との出…

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4時間前
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口数の少ない僕の好きな人いつかまたねと動くくちびる

仁科すばる
13日前

幸福を祈れぬことが罪ならば罰を与えて欲しかった

仁科すばる
2週間前
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短歌エッセイ「同じ道 走るきみらは全力で キラキラ光れ 眩く光れ」

残業を終え、帰り道を歩いていると 懐かしいブランドのロゴを見かけた。 疲弊したわたしに、一瞬の夏を見せるような二人組。 高校生か大学生か。 若い女の子ふたりが「Nit…

仁科すばる
3週間前
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まあるい靴しか履きたくない

優しい雰囲気の子に憧れている。 ほんわかとした、アイボリーのカーディガンが似合うような 見ているだけでほんわりとする雰囲気を持った女の子に、わたしはいつも憧れてい…

仁科すばる
3週間前
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悲しいときは本屋さんへ

落ち込んで、悲しくて、どうしようもない日だった。 朝、バスに乗りこみ、ハンカチを忘れたと気が付いた瞬間から ずっと上手くいかない一日やった。 会社で電話を取ったと…

仁科すばる
3週間前
9

【正解の道】

Ⅰ  わたしが小学校の低学年だったころ、下校の途中で迷子になったことがある。正門を出てすぐの曲がり角を左に曲がるべきなのに、なにを思いついてしまったのか右に曲が…

仁科すばる
1か月前
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本の記録「虎のたましい人魚の涙」

出張先で気になっていた くどうれいん先生のサイン本を見つけて 思わず購入しておりました。 初くどうれいん先生。 そして、これがわたしのエッセイ沼のはじまり。 「虎の…

仁科すばる
1か月前
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本の記録「リライト」

SF史上最悪のパラドックスの謳い文句にひかれて、 購入した「リライト」 伴名練先生の「滑らかな世界と、その敵」以降、SFに惹かれてます。 タイムリープ、タイムトラベ…

仁科すばる
1か月前

本の記録「おいしいご飯が食べられますように」

こんにちは、今日は人生初の芥川賞受賞作品です。 川上美映子さんや奥田亜希子さんをはじめとした純文学を読むことはあるのですが、芥川賞受賞作品ははじめましてでした。…

仁科すばる
1か月前
5

粒餡かこし餡か。それとも、

このあいだ会社の人が差し入れをくれた。 どこかの支社の偉いおっちゃんで、去年もこの時期にやってきた。 ぺーぺーのわたしからすると、ある一定を超えた偉い人はテレビに…

仁科すばる
1か月前
11

先輩がくれたホットケーキ

わたしは食べることが大好きだ。 朝ごはんが食べたいからといって、 どれだけ疲れていたとしても早くに起きる。 3食が楽しみだから、 どれだけ体調が悪くても何かしらは口…

仁科すばる
1か月前
4

本の記録「君が降る日」

最近、ばっさりと髪を切りました。 ショートカットではないけれど、肩くらいまで。 ここまで短いのは5年ぶりで、なんだか新鮮な気持ち。 「君が降る日」/島本理生島本先…

仁科すばる
3か月前
2

本の記録「誰も死なないミステリーを君に」

こんにちは。 最近、はやりのインフルエンザに罹患いたしまして苦しい日々を過ごしました。熱が上がりやすい体質なのか、41℃近くまであがり。 体調には気を付けていきたい…

仁科すばる
3か月前
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本の記録「不在」

文庫化された、彩瀬まる先生の「不在」を読みました。 なんだかんだと初 彩瀬まる先生。 購入当時(角フェスだったかな、、?)カバーが限定仕様で、 平積みされていまし…

仁科すばる
4か月前

読書記録「愛じゃないならこれは何」

斜線堂有紀先生の「愛じゃないならこれは何」を読みました。 ズームのトーク会に参加し、サイン本をゲットしてから随分積んでしまっていました。読むのがもったいなくて。…

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2024年上半期の自選短歌

2024年上半期の自選短歌

2024年、6月。
わたしは短歌を詠みはじめた。

きっかけは、作家のくどうれいん先生。
小説・短歌・エッセイ・絵本に俳句。なんとも多岐にわたってご活躍される先生との出会いは、エッセイでした。
なんて素敵なんだ!!と思い、くどうれいんさんのSNSを見ていると、
盛岡冷麺を詠んだ短歌を発見。
日常をさらりと詠んだ1首に心を奪われてしまった。

もともと百人一首や万葉集が好きなので、(ちはやふるの影響

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口数の少ない僕の好きな人いつかまたねと動くくちびる

幸福を祈れぬことが罪ならば罰を与えて欲しかった

短歌エッセイ「同じ道 走るきみらは全力で キラキラ光れ 眩く光れ」

短歌エッセイ「同じ道 走るきみらは全力で キラキラ光れ 眩く光れ」

残業を終え、帰り道を歩いていると
懐かしいブランドのロゴを見かけた。

疲弊したわたしに、一瞬の夏を見せるような二人組。
高校生か大学生か。
若い女の子ふたりが「Nittaku」のロゴマークが入ったおそろいのTシャツを着て歩いている。

もし、わたしが続けていたら、同じTシャツを着たがっただろうなぁと
残業で疲れた頭でぼんやりと思い描く。

あのころのわたしは、どの代の先輩が考えたのかと問い詰めた

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まあるい靴しか履きたくない

まあるい靴しか履きたくない

優しい雰囲気の子に憧れている。
ほんわかとした、アイボリーのカーディガンが似合うような
見ているだけでほんわりとする雰囲気を持った女の子に、わたしはいつも憧れている。

わたしは陽気だと称されることが多い。
元恋人に「ちょっと静かにできないの」と言われたことを根に持ちつつ
確かにわたしはおしゃべりが過ぎる、と実感するくらいにはおしゃべりだ。

わたしが憧れるほんわかとした女の子たちは、
みなゆっく

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悲しいときは本屋さんへ

悲しいときは本屋さんへ

落ち込んで、悲しくて、どうしようもない日だった。
朝、バスに乗りこみ、ハンカチを忘れたと気が付いた瞬間から
ずっと上手くいかない一日やった。

会社で電話を取ったとき、
間違って前の部署の名前をいって先方を混乱させた。

折り返しの電話をかけるために伺った電話番号は
復唱までしたというのにメモ書きに記した番号が間違っていた。

シュレッダーのゴミを捨ててあげようとして、
粉々に割かれた書類をぶちま

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【正解の道】

【正解の道】


 わたしが小学校の低学年だったころ、下校の途中で迷子になったことがある。正門を出てすぐの曲がり角を左に曲がるべきなのに、なにを思いついてしまったのか右に曲がった。心赴くままに知らない道を歩き続け、気が付いたときにはすっかり迷子になっていた。

 いまとなっては、あのとき感じた恐怖を鮮明に思い出すことなんてできやしない。それでも、しばらく彷徨ったのちに見つけたファミリーマートで、いざお母さんに電

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本の記録「虎のたましい人魚の涙」

本の記録「虎のたましい人魚の涙」

出張先で気になっていた
くどうれいん先生のサイン本を見つけて
思わず購入しておりました。
初くどうれいん先生。
そして、これがわたしのエッセイ沼のはじまり。

「虎のたましい人魚の涙」うたうおばけ、コーヒーにミルクを注ぐような愛
書店で見たほかの作品もすべて可愛らしい表紙です。

感想

かけぬけるような日々でした。
苦しくて、愛おしくて。二度とは戻ることのない日々。

眩しかったり、真っ暗だった

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本の記録「リライト」

本の記録「リライト」

SF史上最悪のパラドックスの謳い文句にひかれて、
購入した「リライト」

伴名練先生の「滑らかな世界と、その敵」以降、SFに惹かれてます。

タイムリープ、タイムトラベルはいいですよ。非現実なのに現実的に読めますし、ハッピーエンドが多いですから(盛大なフラグ)

法条遥先生の本は初めて拝読したのですが、いろいろ気になる本を出していらっしゃいます。また、読みたい本が……

感想&あらすじ(ネタバレ含

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本の記録「おいしいご飯が食べられますように」

本の記録「おいしいご飯が食べられますように」

こんにちは、今日は人生初の芥川賞受賞作品です。

川上美映子さんや奥田亜希子さんをはじめとした純文学を読むことはあるのですが、芥川賞受賞作品ははじめましてでした。実を言うと、直木賞受賞作品もあまり読んだことがないです。

「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子食事をここまで不味そうに、気持ちの悪い風に言葉にできるなんて……
おいしいであろう食べ物を、食べたくないと感じさせられました。
食べ

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粒餡かこし餡か。それとも、

粒餡かこし餡か。それとも、

このあいだ会社の人が差し入れをくれた。
どこかの支社の偉いおっちゃんで、去年もこの時期にやってきた。
ぺーぺーのわたしからすると、ある一定を超えた偉い人はテレビに映る人と同じ感覚になる。
あー偉い人だ。
そんなこと考えると知ったら、上司は笑いながら形だけ咎めるに違いない。

偉いおっちゃんが差し出した蒸気でふやけた箱いっぱいに並んでいたのは、鯛焼きだった。
お行儀よく一列に整列する様が、なんだか滑

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先輩がくれたホットケーキ

先輩がくれたホットケーキ

わたしは食べることが大好きだ。

朝ごはんが食べたいからといって、
どれだけ疲れていたとしても早くに起きる。
3食が楽しみだから、
どれだけ体調が悪くても何かしらは口にしたい。

例えば、
熱があるときのバニラアイス。
残業帰りの炭水化物。
給料日に買ったフルーツタルト。

どんなときに食べたって間違いなくおいしいけれど、タイミングや共に食卓を囲む人によって
「おいしい」は更新されていく。

先輩

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本の記録「君が降る日」

本の記録「君が降る日」

最近、ばっさりと髪を切りました。
ショートカットではないけれど、肩くらいまで。
ここまで短いのは5年ぶりで、なんだか新鮮な気持ち。

「君が降る日」/島本理生島本先生の本は、デビュー作のシルエットぶり。
Twitterのフォロワーさんが読んでいて、気になっての購入です。

どうして文庫が1刷しかされていないのだろうと思うほどの傑作。
いっぱい買ってほしい。いっぱい知ってほしい。

表題作「君が降る

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本の記録「誰も死なないミステリーを君に」

本の記録「誰も死なないミステリーを君に」

こんにちは。
最近、はやりのインフルエンザに罹患いたしまして苦しい日々を過ごしました。熱が上がりやすい体質なのか、41℃近くまであがり。
体調には気を付けていきたいですね。

「誰も死なないミステリーを君に」井上悠宇

ハヤカワ文庫の目録で気になり、購入しました。
目録って素敵ですよね。本屋で無料配布されているのを見かけると、絶対に購入するのですが、なかなか見つからない。
お金払うので全社分買えた

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本の記録「不在」

本の記録「不在」

文庫化された、彩瀬まる先生の「不在」を読みました。
なんだかんだと初 彩瀬まる先生。

購入当時(角フェスだったかな、、?)カバーが限定仕様で、
平積みされていました。
「愛っていうのは本当に、気持ちの悪い言葉だよ」という言葉に
惹かれて購入を決定。

感想(ネタバレを含みますので、ここから先は自己責任で!

この作品は、このタイトル以外つけることができない。
最も端的に作品を示す言葉だと確信しま

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読書記録「愛じゃないならこれは何」

読書記録「愛じゃないならこれは何」

斜線堂有紀先生の「愛じゃないならこれは何」を読みました。
ズームのトーク会に参加し、サイン本をゲットしてから随分積んでしまっていました。読むのがもったいなくて。(笑)

収録作品

・ミニカーでも一生推してろ
・きみの長靴でいいです
・愛について語るときに我々の騙ること
・すこやかだけど、役に立つけど
・健康で文化的な最低限度の恋愛

感想

どれも甲乙捨てがたく好みの作品ばかりだったのですが、一

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