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『週刊 金曜日』編 『検証 産経新聞報道』 : 『産経〈異世界〉新聞』 または、 転生したら新聞社だった ネトウヨの件

書評:『週刊 金曜日』編『検証 産経新聞報道』(金曜日)

『産経新聞』の見ている世界は、私たちが見ている「この世界」ではない。『産経新聞』が見ているのは〈願望充足的な異世界〉である。

そこでは、日本は世界に冠たる「美しい国」であり、世界の人々の憧れの的。つまり、モテモテなハーレム状態である。
その一方、周辺諸国は、そんな我が国を目の敵にし、「反日」を掲げて、我が国の権益を侵害してくる。彼らは「悪」の「特定アジア」帝国であり、今のラスボスはシューキンペー。しかしまた、一番ウザい、手先の現場幹部はムンジェインだ(2019年9月現在)。

転生したら新聞社だったネトウヨは、日夜そうした〈異世界〉の事情を、「こちらの世界」へと記事にして報道している。
つまりこれは、単なるフェイクニュースではなく、彼らの「脳内世界における現実」なのだ。

例えば、彼らの世界では、すでに村上春樹はノーベル文学賞を受賞しているし、中国の国家主席だった江沢民も2012年に死去したことになっている。
このあたり、彼らの〈異世界〉が、彼らの願望の生み出したものであるという事実を、よく示していよう。
彼らの『産経新聞』で、この世界では無かったことが、あったことになっていたり、存在するはずのない匿名証言者がいたりするのも、それはすべて、彼らの願望的〈異世界〉における現実でしかないからだ。

しかし、彼らが本当にモテモテならば、わざわざ「我が国は、世界に冠たる美しい国」などと自家宣伝に明け暮れたり、それを国民に刷り込む教育をしなければならないなどと、必死になるはずもない。
むしろそうしたことに彼らが必死になるのは、彼らにも「この世界の現実」が多少は見えているからなのではないだろうか。
ただ、それ(この世界の現実)を認めたら、彼らの脆弱な自我が崩壊してしまいそうで、怖ろしいのであろう。彼らはあくまでも自分たちこそが、悪に立ち向かう正義のヒーローでなくてはならないのだ。

本書は、〈異世界に転生した〉病に罹患した新聞社の、ユニークな妄想・盲信・妄言の数々を採取し、それを検証した、病理学的な臨床記録の書である。

ネトウヨ病の症状を理解する上で、たいへん参考になる一冊なので、同病罹患者に対応する必要のある方には、本書をハンドブックとして必携することを、強くオススメしたい。

初出:2019年9月21日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)

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