#読んでくれてありがとう
君の重さを空の青さに覚える話。本当にその場の思いつき1場面物語
「それなら、私が囮になるよ」
全員が疲れきっていた。
状況は悪くなる一方で、どうしようもなかった。
崩れかけたコンクリートブロックの壁にもたれてマナカはそう言ってきた。
「いや、それは…」
「全員で抜け出そうよ」
「そ、そうよ。そんな一人見捨てるみたいな…」
昨日までは、こんなサバイバルを体験するとは思っていなかった。
誰も、覚悟なんて出来ないし、今あることも信じたくなかったんだと思う。
1場面物語「ろうそく婦人」
「マッチ売りの少女というお話を知っていらっしゃる?」
その日のお茶会で、ろうそく婦人は集まる私達に聞きました。私達は一斉に首を傾げて、ざわざわとしました。
「マッチ売りの少女?」
「マッチならここにいるけど」
「少女って人間のこと?」
「ねぇ、お茶が溢れちゃうじゃない」
「ちょっとそれは私のクッキーよ!」
「人間の子供のことでしょ?」
「ウリって、瓜?」
ざわざわする私達に、ろうそく婦人は優
思いつき1場面物語。《猫とまたたび》
「猫じゃらしは好き。
だって楽しいもの。」
彼女はそう言って、尻尾をくねらせた。
私はふむふむとメモを取る。
─どんな猫じゃらしがお好きなんです?
彼女の額をワシャワシャっとしながら聞くと、彼女は気持ちよさそうにしながらこたえた。
「そうねぇ。キラキラしてたり、音がなったり、そういうのが楽しいから好き。」
私はまたふむふむとメモをとる。
彼女のガラス玉のような目が私の手をみている。
過去に書いた1場面物語
フカフカとしたシート。
ゴトゴトと揺れる足元。
流れてゆく景色には誰もおらず
窓に反射した自分だけが映る。
名前も知らない花達で埋め尽くされた風景に
少しだけ、ほんの少しだけ笑みが溢れる。
昼間の太陽とは違う、凍るような満月の光が
花畑を青白く照らしている。
熱くも寒くもない車内に一人きり。
外の匂いも感じない。
外はきっと花の香りに包まれている。
そして思っているより寒いはずだ。
『こ
1場面物語 途中の茶屋にて
「あーあー獏に会いたいなぁ」
はねた髪を指先で弄りながら、茶屋の長椅子で独りごちる。
季節は巡って、いつの間にやら紅葉も色づく秋になった。
「お前、あいつが寝てまだ一年も経たないんだ。無理だよ」
声がしたので見てみると、奴が隣でいつの間にか団子を頬張っている。
それ私の三色団子なのに…。
獏はそれは美しい女性に変化する。
真っ黒でツヤツヤの髪に、昔の中国のお姫様みたいな衣装が映える。
赤や金の似
1場面物語 つくづく、縁がない
縁側で足をプラプラやっていると、彼はにこやかな顔で隣に座った。
「西瓜でも」
などと言って、丸々とした西瓜を出してくる。
「おう。もらおうか」
私はそう言って野菜包丁で西瓜を切る。
風鈴が機嫌良くチリチリと鳴る。夏空の青が透けて、絵柄の金魚も良く泳ぐ。
「川で泳ぎたい」
彼は金魚を目を細め見る。
私は西瓜をサクサクと切りながら
「そいつはそこに捕らえたんだから駄目だよ」
と答えた。
思いつき一場面物語~屋上から~
大切にしたいと思うものは大抵、私の手元には残らないんだ。
と笑った彼女は、なんて名前だったけ?
よく考えれば、あの時に彼女が言った「大切にしたいと思うもの」は自分のことだったんじゃないか?
彼女が言うように、すっかり手元から離れて自分は彼女を薄っすらとしか覚えていない。
あんなに、毎日楽しく話していたのに。戯れあっていたのに。
薄情な奴だと彼女は思っているだろうか?
頭の中でぼんやりした光
一場面物語『サイドᗷ +』ふみ
「ふみはさ、俺のことちゃんと好きじゃん。」
資料をとめる作業を黙々こなしていた私の向かいに座った司はそんなことをいう。
私はチラッと、顔を上げて司を軽く睨む。
「俺の顔がどうだの、なんだのじゃなく、俺のこと好きでしょ?」
まるで独り言のようにそう言う。
私は作業する手をとめることなく、その、独り言に応える。
「うん」
「だから、ふみがいいんだよ。」
私は軽くため息をつく。
「とんだ告
連続1場面物語。 『サイドᗷ 』カナタ
熱気に包まれる体育館。
わけもわからず盛り上がる新入生。
いつ練習したんだよって言いたくなるほど
揃った合いの手の同級生達。
あっという間に散る桜の花が珍しく遅咲きで
大きめの窓の向こうが優しい薄紅色の光にそまっている。
どんなスポットライトより綺麗だと思った。
少しだけ冷える昼のステージで
俺らは何処よりも熱い場所にいた。
きっと世界の中で一番熱かった。
真ん中で飛んで跳ねるアイツは楽しそ