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【ショートショート】淡色の太陽
もう7日間部屋から出ていないので、太陽の色すら朧気にしか思い出せない。
湿気った脳味噌にはとうに黴が溜まって、思考にこびりつく不快感がどうにも抜けきらない。
開けた冷蔵庫には、半端に残った麺つゆと、とっくに腐ってしまった苺。そして飲みかけのコーラが一つだけ。
付けっぱなしのエアコンからはひっきりなしに音がする。24時間×6日に亘る連続勤務で体調を崩してしまったのだろう。最後のコーラを呷ると、一筋
「彼女が死のうと思ったのは」エピローグ #創作大賞2023
ホームルームが終わって、バッグを掴むと、日傘が教室の後ろのドアから顔を出した。
手招きについて、部室に向かう。職員室にあるケースから取り出した鍵を使って、ドアを開けた。
「さあ、文化祭近いし、気合入れて書くよ!同好会から部への昇格目指して!」
今、僕たちは新入生の確保を目指して、小説を書いている。
小雨先輩の部活への所属については、日傘が自分から外してしまったので、部活動としての条件を満たせな
「彼女が死のうと思ったのは」第9話 #創作大賞2023
遺書には、小雨先輩が自殺した理由の全部が書かれていた。日傘は嗚咽を漏らしながら、涙で顔中を濡らしながら、それでも歯を食いしばって読み進めた。やがて、最後の行が終わって、僕は代わりにファイルを閉じた。
日傘は声を震わせて、しばらく泣き続けた。怒りと悲しみがないまぜになった表情で。
雨粒が屋根を叩く音が聞こえる。
「私、悔しい。お父さんにもムカつくし、何も言ってくれなかったお姉ちゃんにもムカつく!
「彼女が死のうと思ったのは」第8話 #創作大賞
お父さんに久しぶりに会ったのは、4月の終わりのことだった。両親の離婚から、5年が経っていた。奢ってやるからと、外れの喫茶店まで連れて行ってくれて、そこで色々な話をした。
父は私たちの学校生活や、家での話を聞きたがった。学校では文芸部に入って楽しい日々を送っているということや、テストで学年トップをとった話をした。日傘の話もした。部活の同級生と仲良く喧嘩したり、小説をお勧めし合ったりしていることを話