「彼女が死のうと思ったのは」エピローグ #創作大賞2023

ホームルームが終わって、バッグを掴むと、日傘が教室の後ろのドアから顔を出した。
手招きについて、部室に向かう。職員室にあるケースから取り出した鍵を使って、ドアを開けた。

「さあ、文化祭近いし、気合入れて書くよ!同好会から部への昇格目指して!」

今、僕たちは新入生の確保を目指して、小説を書いている。
小雨先輩の部活への所属については、日傘が自分から外してしまったので、部活動としての条件を満たせなくなり同好会へ降格となった。そのため、僕たちは新入生の獲得を目指して、部誌に載せる小説を一生懸命書いている。日傘はもちろん恋愛小説、僕はミステリ小説だ。

日傘の家については、校長と喧嘩の末、仕事量を見直してもらうことに成功した日傘の母がだいたい解決してしまったらしい。父親については、電話をかけまくって呼び出した後、散々怒鳴りつけて、半分くらいは返ってきたとのことだ。残りについては一家に二度と関わらないことを条件として、あげてやったらしい。

だから、僕の喫緊の課題と言えば、文化祭の締め切りが迫ってきていることである。できればそれまでに物語を完成させたいところだが、なかなか難しい。話は思ったように転がらないし、書く前には気づかなかった問題点が山積みだ。

だけど、僕たちはひたすらにもがいて、物語を編み出すことを辞めない。不格好だけど、それでも何回だって挑戦する。
網戸にした窓の方から、ブラスバンド部の演奏が聞こえる。
僕は息を吸い込んで、キーボードを叩く。

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