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配給会社ムヴィオラの映画1本語り

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シアター・ムヴィオラPICK UP(3)『春江水暖〜しゅんこうすいだん』

シアター・ムヴィオラPICK UP(3)『春江水暖〜しゅんこうすいだん』

驚嘆の映画。ずっとながく胸のどこかに残る映画。『春江水暖〜しゅんこうすいだん』をピックアップ。

若き新人監督の長編第一作にしてカンヌ国際映画祭批評家週間クロージング作品に選ばれ、東京フィルメックス審査員特別賞やキネマ旬報ベスト10入りを果たした傑作をぜひご覧ください。

『春江水暖〜しゅんこうすいだん』本編 配信ページはこちら:https://mirail.video/title/5230019

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑬公開前日。明日は春節。人事を尽くして…「天地」に祈る!

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑬公開前日。明日は春節。人事を尽くして…「天地」に祈る!

明日は2月11日。映画『春江水暖〜しゅんこうすいだん』がBunkamuraル・シネマでついに封切りとなるのである!この映画は『鬼滅の刃』のような「全国一斉400館公開!」というメジャー作品とは違うので、まず東京が開き、そこから全国へと広がって50館位を巡回するような公開形式。なので東京のヘッド館が初日を迎えても仕事はまだまだ続くのだが、東京の初日が一つの大きな区切りになる。

*金曜日の新聞に出す

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑫パンフレット完成間近。目から血が出そうな公開前。

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑫パンフレット完成間近。目から血が出そうな公開前。

あっという間に1月が終わってしまった。みなさん、映画館には行っていますか?東京は緊急事態宣言延長。「喋らないで映画を見ていればコロナリスクは低い」と言われても、「とにかくステイホーム!」の大号令で、私の周りの映画館はどこも「いやー大変で…」ととても辛そう。でも、邦画は『花恋』(というらしいですね)も『ヤクザと家族』も盛況だと聞く。コロナのせいで、外出を控える層と外出を控えない層、どの層に届く映画か

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑪「河(川)の映画」というものがある気がする

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑪「河(川)の映画」というものがある気がする

ちょっと入稿続きで、間が空いてしまいました。

とある新聞社の映画記者Iさんとメールのやりとりをしていたら、「「河(川)の映画」のことを思い出した。Iさんは昔、パオロ・ソレンティーノの『グレート・ビューティー/追憶のローマ』の映画評を書いていたのだが、そのテベレ川の描写が見事で、文章を読んで「このテベレ川を観なくては!」と映画館に駆けつけた。後日、お会いした時に「川の映画がお好きですよね」と言った

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑩シャオガン監督の好きな映画10本が届いた

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑩シャオガン監督の好きな映画10本が届いた

世は映画ベスト10シーズンですね。今年の洋画は『パラサイト』でしょうか。そんな中、Brutusでホンマタカシさんが『春江水暖〜しゅんこうすいだん』を2020年ベスト1に選んでくれた!

さて昨日、グー・シャオガン監督からWeChatで「今日2021年1月22日現在の好きな映画10本」が届いた。オールタイムベスト10ですね。ではさっそく。

1.《悲情城市》——ホウ・シャオシェン 

2.《ヤンヤン

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑨声フェチ発動!

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑨声フェチ発動!

昨日はグー・シャオガン監督とZOOM取材を、なんと7時間30分も!監督、本当にありがとう。通訳さんにも大感謝。またもたっぷり面白い話を聞きましたが、新聞やwebメディアのインタビューなので、内容は各媒体で掲載されたらご案内と言うことで。

*ZOOMインタビュー中のシャオガン監督 

前回『春江水暖〜しゅんこうすいだん』の“音”について書いたので、今日は“声”について。映画の音が好きな私としては、

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑧“音”の良い映画は信頼できる。

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑧“音”の良い映画は信頼できる。

“グー・シャオガンは中国人監督だが、台湾の監督、エドワード・ヤンやホウ・シャオシェンに近い。本作は『ヤンヤン 夏の想い出』や『童年往事 時の流れ』の子供と言っても過言ではない。” これはカンヌ映画祭で上映された時のハリウッド・リポーターのレビューの一文。

*エドワード・ヤン『ヤンヤン 夏の思い出』 可愛らしい子ども映画のようだが、ヤン監督らしい洞察に満ちた厳しくも温かい映画。私はオールタイムベス

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑦山水画の絵巻を映画にする、と簡単に言うけれど。

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑦山水画の絵巻を映画にする、と簡単に言うけれど。

「ストーリーを通じて現代の町の変化をいかにとらえるかを考えるうちに、英題にもなっている『富春山居図(Dwelling in the Fuchun Mountains)』という絵巻物からヒントを得て、映画を絵巻物のように描くことを思いつきました」(グー・シャオガン監督/2019年11月24日 東京フィルメックスでの上映後Q&Aより)

*フィルメックスでのQ&A 左は市山尚三さん、右は、今監督取材で

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑥10分53秒のシーンを何十テイクも? 鬼ですか?

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑥10分53秒のシーンを何十テイクも? 鬼ですか?

昨日の記事の続きになるが、「競争しないか?僕は泳いで君は歩く」の、泳いでから最後船に上がるまでの10分53秒の超ロングテイク。これは素人キャストだからこそできたシーンと言ってもいいと思う。もちろん「映画のためならなんでもやります!」と、延々と泳いでくれる奇特な俳優さんももちろんいるだろうけど。普通なら「スタント使いましょう」だ。

このシーンに登場している孫娘グーシー役のポン・ルーチーさんは、小さ

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑤「これは驚いた」「これは映画史に残る」。10分53秒の自由。

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』⑤「これは驚いた」「これは映画史に残る」。10分53秒の自由。

リュミエール兄弟によって、パリのグラン・カフェ地階の「インドの間」で、『工場の出口』を含む10本の短編が上映された1895年12月28日。この日を「映画が誕生した日」と呼んだりもするが、それから125年。それだけ経てば、映画の撮り方・作り方はセオリーだらけで、もう「映画の表現」は出尽くしたろう、新しいことなんかないだろうと思う人がいるかもしれない。映画に愛着のない人だと「映画はもう古いメディアです

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』④ジャ・ジャンクー、アピチャッポン、イニャリトゥ、ワン・ビン以来の…

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』④ジャ・ジャンクー、アピチャッポン、イニャリトゥ、ワン・ビン以来の…

『春江水暖〜しゅんこうすいだん』は1988年生まれの中国新世代監督グー・シャオガンの長編劇映画第一作。うっかりすると、これまでも中国映画で見たことのある「ある家族の大河ドラマ」という印象を与えてしまう面もあるのだが、私の初見での印象は何をおいても「驚き」だった。こんな映画が出てくるなんて!という嬉しい驚きに溢れていた。

その後、監督に話を聞いたところ、さらに驚かされたのが、「クルーと一緒に撮った

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』②お皿の中身と汽水域のスズキ

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』②お皿の中身と汽水域のスズキ

昨日の『春江水暖〜しゅんこうすいだん』1回目、「停電とロウソクと扇子」は冒頭3分くらいまでしか行けなかった。また今日もそうなるかもしれない。

爆竹の場面が終わると再び誕生会の会場へカメラが戻り、宴の御馳走が運ばれてくる。「富春江の新鮮なスズキよ」。ここでカメラが俯瞰になり、皿にのった美味しそうなスズキの蒸し物が映り、円卓に並ぶ他の料理もよーく見える。青梗菜が添えられた肉料理らしきもの、大ぶりの赤

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』③汽水域と借景のキャスティング?

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』③汽水域と借景のキャスティング?

その昔、エルマンノ・オルミ監督の『木靴の樹』を見た時、農民たちが土を耕したり、種を蒔いたり、収穫したり、鋤を使ったり、トウモロコシの皮を剥いたりする、全ての所作が美しくて、それを見ているだけで感嘆したものだ。

映画の舞台はイタリアはベルガモで、オルミ監督はベルガモの本当の農民に演じさせたと知った。物語は、脚本を書いたオルミのものだろうけれど、そこには農民の人生が持ち込まれていて、言ってみれば劇映

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【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』①停電とロウソクと扇子

【配給会社ムヴィオラの映画1本語り】『春江水暖〜しゅんこうすいだん』①停電とロウソクと扇子

2021年が始まった。今日は1月11日。1並びで眺めていると気持ちがいい。でも、首都圏緊急事態宣言の3日目だ。よほどの人でない限り、誰もが大なり小なり不安を感じざるを得ない毎日が続く。

ムヴィオラの今年の配給公開作の1本目は、2/11に文化村ル・シネマでスタートする『春江水暖〜しゅんこうすいだん』。(全国順次なので他劇場は公式HPの劇場ページをどうぞ!)

正直、去年の緊急事態宣言の際に、冬には

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