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好きなもの

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すき、は偉大なる杖だ。幾度となく折れでも、幾度となく立ち上がった。いくつになっても、すきだと叫んでばかりいる。
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2018年8月の記事一覧

すきなひと

ものすごく好きな人がいました。
もう20年くらい、いや25年くらいすきでいます。
10年ぶりかでその人の新刊を読みました。

その人の言葉に触れると
自分の中にふだん隠しているマグマみたいなのが
ダクダクと沸騰し泡が爆ぜてしまいます。

ホントのわたしに戻してしまうのです。

この体がいちばん喜ぶことを知る、言葉でした。

わたしはまた あのときと同じ様に
爆ぜたマグマが内壁にベッタリとこ

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妖怪キモチアライ

妖怪キモチアライ

noteには浄化作用があるとおもっている。

風呂トイレのついてない
レオパレス式共同マンションにいて、
たまに誰かと顔を合わせることができる。

ゲストハウスで色んな刺激をもらいながら
心が洗われるような体験に近い。

ここに吐き出した言葉は一陣の突風に吹かれ
またたくまに 埃をはたかれ
水を浴び 日光で滅菌される。

このゲストハウスでは
書きながらじぶんの階段を上る旅人たちが憩う。

みな、

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仕事

仕事

満月の夜。

9時を回る前から、光が真っ白になった。

三原色は重なると白になる。
光は加算される。

あの白のどこに青と赤と緑があるのかわからない。

この網膜はその波を捉えないし
照らされる肌も変わらなく見える。

ないのに ある ということが、
こんなに普通で 日常だ ということに気がつかない。
すぐそこの境界線は こんなに揺らいでいるのに。

南南東に輝く白光の対局、
北北西の空の大半

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いのち短し、夏夜の乙女たち

いのち短し、夏夜の乙女たち

夏のビーチに オンナの子が1人でいた。
申し訳程度にしかない 面積の小さな水着をくくり
まっさらな肌に 夏の跡を残しにきた。

ここは静岡の とあるビーチ。
駿河湾に囲まれた穏やかな波が
白砂の砂丘に 広く浅く かぶる。
波跡が 何筋もきざまれている。

もう午後3時をまわり
お目当ての こんがりした男たちは
さんざん、波と女の体に騒ぎ疲れ
砂遊びに夢中か 昼寝を貪り
だれも おんなのこに

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東吾せんせい、と呟く変態の側面

東吾せんせい、と呟く変態の側面

夕方から地元に帰る。
兎にも角にも、はやくかえりたい。
帰ったところで、あの屋敷は変わらないのだけど
自分の部屋に帰りたい。
あの中でねむりたい。

そんなこんなで嬉々とパッキングし
今回のお供を真っ先に詰める。

なにはなくとも、お供だけはここから連れて行く。

とくに上二冊と左下一冊、右下の彼は捕捉役。

ここ最近猛烈に、おかしいくらい
地名にハマっている。

なぜその名と

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川になれ

川になれ

中島飛行場 三鷹研究所跡地の都立武蔵野公園は
なだらかな丘と窪地を持ち
いちめん、背丈のひくい緑の絨毯におおわれている。

かつての中島飛行場は広く
いまその敷地内には、
体育館ひとつ
平成になって設立した都立公園がふたつ
飛行場をひとつと
みっつの大学と高校がひとつ
そして後進である大手自動車工場がひとつ
収まっている。

うちひとつ、都立武蔵野公園の向かいの公園には
栗やグミの木などが、く

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深夜の首都高に響く声

深夜の首都高に響く声

午後11時、深夜の首都高を走る。

大きく畝るコンクリートを滑り、目下にテールランプが直線に並ぶ様を見て、ここは空中に浮かぶ川だとおもう。
ガードレールの堤防に、ライトの樹木が植えられ、何処までも続く道は、荒川顔負けの車専用の川にみえた。この川は人の作ったものだ。

高速脇に佇むいくつもの赤い目をもつ巨人群たちの体は、所々明るく、その中でかすかなミニチュアの人影がみえる。

彼らは一様に誇らし

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感想:未来のミライ

感想:未来のミライ

満月で台風の日、太平洋では満潮時刻
国土に大きな風の塊が乗り上げた。
地元は海辺に近く
広い砂浜に遠浅の海がやってきたに違いない。

その日、東京という平地で
わたしは子どもにせがまれて映画を観た。

『未来のミライ』

とんでもない時代がきたなとおもった。
あれはリトマス紙だ。
恐らく本当にいろんなものの
中和剤、中和点のような作品に見えた。

子どもにリアルを。大人にファンタジーを。
どちらか

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哲学カフェのお侍さん

哲学カフェのお侍さん

少し前に、何ヶ月か、都内の哲学カフェを巡っていた。

テツガク、という言葉にただならぬ魅惑の気配を感じた猛者が、どこからともなく湧き集い椅子に座る。

どうひっくり返しても、面白い、以外の何でもなく、どこも、まあ本当に、多種多様な奇特な蜂の花園だとおもった。

テーブル上には、世代と地域を超えた料理が並び、かつそれらを混ぜたり、かけたりして、元の料理は少しずつ味を変える。

その味変中に、ファ

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