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映画『ちひろさん』を観た話。 #映画感想文

いよいよ公開されました映画『ちひろさん』。
私も本当に待ち遠しかったです。

『窓辺にて』を鑑賞した時点で『ちひろさん』の公開は既に決まっていて、正直期待値は爆あがりでした。なぜって主演がこれまた大好きな女優の有村架純さん。しかも主題歌は愛しのくるり。こんなもん誰がどう頑張っても外さんやろ絶対おもろいやんけと思いながら、公開日を心待ちにしておりました。

とはいえ、本心ではやはり配信サイトよりもリアルの映画館で一発目は観たいなぁ。と思ってたら、ごく一部の映画館限定で上映を行なっているとのこと。というわけで早速大阪唯一の上映館『シアタス心斎橋』に急行し、鑑賞してまいりました。

Netflix映画『ちひろさん』。1999年から2年に渡り漫画誌『モーニング』他で連載された安田弘之氏原作の漫画を、主演:有村架純・監督・今泉力哉という布陣で映像化。2023年2月24日・日本時間午後17時よりNetflixで全世界同時公開された。

主人公のちひろさん(演:有村架純)は、街のお弁当屋さんで働く綺麗なお姉さん。一見すると到底そんな人には見えないのだが、実は元風俗嬢らしい。ただ、お客の男たちを綺麗にあしらったりする様を見るとその片鱗を感じることができる。ちひろさんもそのことを隠さず、お客さんにもオープンに接するので街でもちょっとした有名人だ。

小学生と遊んだり、ホームレスに弁当を与えたり、海に足を浸して黄昏たり。妙な人で、でも自由なちひろさん。そんなちひろさんを陰からコソコソ追いかけるある高校生・オカジ(演:豊嶋花)がいて・・・。


ちひろさんが醸し出す雰囲気というかオーラがそうさせているのか、映画も四十まったりとした空気感が流れる。ともすればコメディのようにも見えそうなぐらい有村さんの演技がハマっているというか、ちひろさんがしっかり宿って見えた。クスッと笑える瞬間とか、さすがだな〜と思う瞬間とか、色々な見え方があって面白かったです。

しかし、そんなまったりとした中に家庭や学校で馴染めず浮いてしまう子の葛藤とか、素直に愛や感情を表現できない子の苦しみとか、いろんな人間の側面がミックスされていて、口の中がなんかザラザラチクチクするような舌触りの悪さを覚える。

オカジの家庭の冷え切った様子とか、マコトがレンジでチンして食べてる冷凍スパゲティの不味そうな感じとか。ちひろさんが売ってる弁当も、食べてるたこ焼きもラーメンも暖かそうで本当に美味しそうなのに、こんなにも食べ物だけで心情を表せるんだ、と胸にくるものがあった。

例えるなら、冷たい氷を急に
口の中に放り込まれるみたいな違和感が苦しい。

でも、それでいいんだよ。とちひろさんが苦悩とか葛藤とかを全てを明るく包んでくれる。その明るさに見る者も救われた気がして、それがまた心地よかったりする。そして、そんなちひろさんもまた実は誰かの明るさや優しさに救われる側の人間だった。

この優しさの繰り返し、あるいは連鎖と表現する方がピッタリかもしれないが、ちひろさんを起点として繋がっていく心の輪がどんどん広がっていくことがとても素敵だと感じたのでした。

「結局は人と人でしかない」
「女と男でしかない」

半ば諦め気味に、自嘲するように、この作品でもそんな言葉が出てくる。でも、そんな人に対してどこかで温かな心を求めているのも事実。ちひろさんは、はぐれものや心の弱いものにも等しく光を与え、優しい暖かさで包み込む。包容力がある、という一言で片付けられないほどシンボリックな存在なのだと私は感じた。

今回の作品は、劇伴音楽をくるりの岸田繁氏が提供し、主題歌もくるりがそのまま担当した。その曲の名は『愛の太陽』。ちひろさんを表現するにこんなに相応しい言葉は他に無いだろうな、と納得してしまった。
愛の太陽。うん。いい言葉だ。


ちなみに余談だが、既に公の場でも明かされている通り実は劇場上映版にはNetflixでは配信されていない(らしい)特別映像が最後に差し込まれている。なので皆さんぜひNetflixでもいいけどお近くの劇場に行って実際に観てほしい。

そしたら、「なぜ今泉監督はあえてあのシーンを選んで差し込んだんだろう??」という意図を考えずにはいられなくなり、きっと次の日の昼飯には餃子をたらふく食べたくなるに違いない。あれを蛇足だなんて思いませんよ監督。目に映る全てのことはメッセージですから。(急なユーミン)

というわけで、ネトフリご契約勢の皆様はぜひお手持ちのモバイル端末やテレビで。非課金勢の皆様は劇場にて。映画『ちひろさん』ぜひご覧くださいませませ。



おしまい。



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