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書いた詩です
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#現代詩

窓の色

あなたは目を閉じて宇宙を作っている
窓に座った柔らかい虹の鉛筆
頬にふれる声のように温かい記憶を見たから

水中に存在しない音色の雨を
薄い光の底に反射するペットボトルを数える
表面だけ消えている色んな空が
あなたの作る窓に浮かんでいく

春の星

指先から春になった、わたしは大好きな歌を口ずさみながら、
誰もいなくなった地球を歩いている。
夜なんてものが本当にあるとしたら、きっとこんな表情をしているんだろう。
つま先まで春になった、だけどわたしはひとりぼっちで、
生き物たちをずっと探している。人をずっと探している。
いつまでたっても、春になっても、世界は全然あたたかくならない。
誰も冬眠からさめない。
だからわたしは、夜空に指先で、
春の星

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泥の空想

四足歩行から二足歩行へ、いつの間にか背が伸びて、視界は地面から離れていった

地面を手放して、人工的な空を話す

泥や砂にまみれた手で作った空想は、どこかで今も呼吸しているだろうか

具体的な空想は抽象的な現実に替わり、本当の空を忘れてしまった

そんな空っぽの手のひらが、懐かしい風の音色を想い出している

朝色

あなたが引き止めたかった星
色と輪郭だけ残って空になる
空っぽの果物

横断歩道は虹の影
朝の月を見ている顔が
あざやかな夢を描いた

存在し始めた日

この脳の一番ふるい記憶。
自分の存在を知った最初の日。
何月何日かも、本当に存在したかも分からないその日が、
自分の意識にとっての、僕の誕生日だと思う。
その日から今まで、覚えたり忘れたりしながら生きてきたことを、
なんだかすこしだけ夢のように感じる。

そんな日が、あなたにもあったのだろうか。

詩と

だれかの言葉について考えることが、ぼくにとっての詩だった。

耳を澄ますこと。きみが笑ってみせること。

いつかは消える声がここに届いて、

星の光がすきだと思った。

詩を書くと、あなたの顔が浮かぶ。

時間の中で永遠がはためく。

ぼくもきみも、すべてを話せはしないから、

ぼくらの間に詩があるんだろう。

枯れた雨から話す 静かに丸く咲く
ゆれる空にその手を数えた
消え入りそうな声に止まるきみの鳥
見えない日々の月となつかしいベランダの地面にいる
カーテンは風になったみたい

浮遊 憂いの目

透明な姿になってしまう前に、
好きだった景色をこの目に焼き付けておきたいと思った
一喜一憂の中に浮かぶ心
きみの記憶に降り積もっていく色彩
過ぎ去って風よりも透明になったもの

寒い夜にも夢を見たのは、涙の温かさをこの体が知っていたからで、
きみの優しさがずっと残っているんだろう

晴れない

腕を伸ばして八月にふれて

燃えるようないかり

凍えるようなひかり

喜劇みたいな夕焼けへ溶け出す劇

どこにもない空を見上げる

腕はそこら中

肌に居た

まだ晴れることのない青空

晴れないで

きみの存在

きみの存在に飾られた配られた花と果物なら

それを星として見つめる 枯れ葉降る日々と人

関節に澄む鳥の歩いた火を狩り

部分で言い表せないオレンジに終わる

ぼくの脳が最後にすがった優しい記憶

数が降る

君の頭のなかに幾千もの数が降り続けている。

暇さえあれば君は、暇さえなくとも君は、一心にノートに数式を書き続ける。

あまりにも君が夢中だからみんな不思議がるけど、なんのことはない、数が降ってきているだけなんだよね。

目には見えないものを数え続けているだけなんだよね。

今の君の世界にはきっと、数しかない。

君の書く数式は、美しくて、

まるで世界とはなにも関係がないみたいだ。

いつか君の

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