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#わたしの本棚

ヘヴン 《残るものは、なにをしても残る》

ヘヴン 《残るものは、なにをしても残る》

ヘヴン 著 川上未映子

もし、私の髪が金髪だったら。
もし、肌が白ければ。
鼻が高ければ。
それは、私では無くなるのだろうか。
目に見えるものが、全てなのだろうか。

中学生の『僕』は日々いじめを受けている。
あまりにも残虐で、耐え難いような。
そんな中、クラスメイトのコジマという女子生徒から『私たちは仲間です』と書いてある手紙を渡される。
それかは2人は、手紙交換をする仲になる。

『僕』は斜

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汝、星のごとく 『正しさなど誰にもわからないんです』

汝、星のごとく 『正しさなど誰にもわからないんです』

著 凪良ゆう
2023年本屋大賞の受賞作品。
先月から、本に関わる職場に勤務している身としては、読んでおきたい、知っておきたいという純粋な好奇心があった。

瀬戸内の島で育った高校生の暁海と、転校生の櫂が惹かれ合い、すれ違い、別れ、しかし離れていながらも互いを思い合う14年間の恋愛物語だ。
高校卒業後、暁海は地元に残り就職、櫂は上京し漫画家として活躍する。

正直、淡々とした日常の中に、男女の恋愛

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おふろー!

おふろー!

虎のたましい 人魚の涙 著 くどうれいん

エッセイの何が好きって、表現したくても、うまく言葉にできなかった感情や感性を、著者がうまい具合に表してくれている点である。
こう思ってたのって、私だけじゃないんだ、という発見で、救われることもある。
自分に寄り添ってくれている気がする、そばにいなくとも、味方でいてくれている気がする。
くどうれいんさんも、その1人なのだ。

数々の項目中で、特に共感したの

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死にがいを求めて生きているの 

死にがいを求めて生きているの 

死にがいを求めて生きているの 著 朝井リョウ

ある1人の、登場人物のセリフが、頭から離れない。

お金があるから幸せなのか。
褒められたいから勉強をするのか。
私たちは、手段と目的が逆転していることに、知らないうちに、社会に揉まれているのではないか。

与志樹は、中学時代は、周りから評価されるために本を読み、ビブリオバトルという本の感想を述べる大会に力を入れていた。
また、大学に進学後は、自分が

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3週間続ければ一生が変わる

3週間続ければ一生が変わる

3週間続ければ一生が変わる 
あなたを変える101の英知 著 ロビン・シャーマ

3週間経てば、今年が終わってしまう。

焦っている。
ただ、時間の流れに任せて過ごす日々。
やりたいことリストを並べても、追いつかない。
映画を観たい。読みたい本が溜まっている。
近所の喫茶店にはまだ行けずじまいだし、甥っ子のクリスマスプレゼントも買いに行きたい。
いらない服は処分したいし、大掃除なんぞは31日にとり

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私的生活

私的生活

やってしまった。

恋愛は楽しい。
誰かが、さほど美人でもない私のことを優しくしてくれて、かわいいと甘い言葉をかけてくれて、会いたいと思ってくれて、寒い日も、そうでない日も、温もりが欲しい時に寄り添ってくれる。

別れた後も、会う約束をしているのに、会いたいと思う。寂しくなる。

恋愛は楽しい。
しかし、のめり込むと、自分の時間を失ってしまう。
本を読むこと。映画を見ること。何かを制作すること。

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あしたから出版社 何にでもなれる私たち

あしたから出版社 何にでもなれる私たち

あしたから出版社 著 島田潤一郎

たったひとりで出版社を立ち上げた著者は、そう話す。
あしたからYouTuber。あしたからバンドマン。
もっと狭めたっていい。簡単でいい。
あしたから規則正しい生活をする人。
あしたから素直になる人。
あしたから無駄にコンビニに寄らない人。
(すべて、私の決意表明である。特に、節約のためにコンビニへの寄り道は避けたい所存。ローソンのカヌレをとりあえず手に取る癖を

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おいしいごはんが食べられますように 

おいしいごはんが食べられますように 

おいしいごはんが食べられますように 
著 高瀬隼子
芥川賞を受賞された、話題作。
ポップな装画とは反して、なかなかブラックな作品である。

食への意欲が無に等しく、『食事が面倒』という考えのサラリーマン・二谷と、それを取り巻く人物の物語だ。

みなさんは、食べることは好きですか?
私はめちゃくちゃ好きです。
まず、食への興味を無くしてしまったら、人生の楽しさ半減はする。
そして、ど田舎住みのため、

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正欲

正欲

多様性というワードが、この世の中に溢れている。
そして、私たちは、自分を基準とし、自分の価値観が一般的であると信じて疑わない。

クリスマスは恋人と過ごすこと。
男は女に性的興奮をすること。
みんなと一緒であることが、正しいと思うこと。

しかし、本作品に登場する人物は、自分はマイノリティだと思い込んでいる。
欲望に正解がないにしても、マイノリティというだけで、肩身が狭くなる。つまり、『生きにくい

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ひとまず上出来 変化を楽しむ

ひとまず上出来 変化を楽しむ

ひとまず上出来 著 ジェーン・スー

『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』を読んだのが約2年前。
40代を明るく、丁寧に、そして新鮮な気持ちで生きる著者の姿勢に好感を持った。
何より、文章が面白い。
泣ける作品を作るより、笑える作品を作る方が難易度が高いような気がする。
そして、笑える中に、グッとくる台詞が刻まれている作品は、なによりも愛しい。

そんな理由で、ジェーン・スー先生の作品第2弾を購

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おかえり横道世之介 善良であることを諦めちゃいけない

おかえり横道世之介 善良であることを諦めちゃいけない

おかえり横道世之介 著 吉田修一

前作 『横道世之介』は、世之介の大学時代を描いた作品。一方本作は、大学卒業後、バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐ世之介と、その友人たちの『人生のダメな時期』の愛しさを描いた作品である。

世之介は、人生の目標なし、職なしでフラフラしている印象だが、なぜか憎めない。
世之介の周りにはいつも誰かがいて、愛されいて、そして世之介も人を愛して

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表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 《明日も、まだ行ったことがない所に行ける》

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 《明日も、まだ行ったことがない所に行ける》

オードリー若林先生の著書。

先生、あなたは天才です。
あまりにも素敵な作品、語らせてください。

皆さんは、若林正恭という人にどんなイメージを持ちますか?

M-1直後にブレイクし、最初は『春日の隣の人』という薄いイメージしかなかった。
次第に、女性が苦手で、人見知りで、内気な人なのだと知った。
しかし、実は大喜利が得意で、ひな壇でも、ポッと面白いことが言えて、司会もそつなくこなす、器用な一面が

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寝ても覚めても 恋とは勘違いのことである

寝ても覚めても 著 柴崎友香
東出昌大と唐田えりか主演の映画化でご存知の方は多いと思います。

簡単なあらすじは、主人公の朝子と謎多き男、麦が恋に落ちるが、麦という男はふらふらとしていて急に行方をくらませてしまう。何年後かに朝子は麦そっくりの男、亮平と出会い、あまりにもそっくりなため困惑するが心惹かれていく、、、という、昔好きだった人とそっくりな人を好きになるのか?好きになってもいいのか?を疑問提

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人のセックスを笑うな 恋するものは皆真剣

人のセックスを笑うな 恋するものは皆真剣

人のセックスを笑うな 著 山崎ナオコーラ

主演永作博美が、笑っていいとも!でこの映画の宣伝をしていたのが鮮明に覚えている。『すみませんお昼から、、、』と申し訳なさそうに、恥ずかしそうに笑っていた。当時小学生の私は、とんでもないタイトルだ、、、どんないやらしい話なんだ、、、と子供ながらに引いていた。(永作博美にではなく、そのストレートすぎるタイトルに)

時は経ち、とっくに20を過ぎた私は、じわじ

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