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【読書メモ】『古書の来歴』ジェラルディン・ブルックス
数奇な運命をたどった古書「サラエボ・ハガダー」が発見された。古書鑑定家が調査している現在(1996年)と、時代をどんどん下りながらこの本を手にしていた人々の話が交互に語られる。本自体は実在するけれどそれにまつわる物語は全てフィクション。
「サラエボ・ハガダー」というユダヤ教の本は、14世紀にキリスト教国だったスペインで作られ、第二次世界大戦中もサラエボ紛争の時もイスラム教徒によって守られた。たし
【読書メモ】『テヘランでロリータを読む』アーザル・ナフィーシー
ヴェールの着用を拒否して大学教授の職を追われた女性が、自宅で女子学生たちと密かに行った文学研究会の回想録であり、イラン革命とその後のイラン・イラク戦争によって存在そのものが翻弄されてゆく女性たちの物語でもある。
人にはなぜ文学が必要なのか、そのひとつの答えがあるように思う。彼の国で息の詰まる思いをしている女性たちの現実逃避と、現実に立ち向かう勇気を得るための束の間の休息。
女性の連帯の物
【ショートショート】サーディンスプーン
蚤の市で不思議なカトラリーを見つけた。
木製の柄がついていて、形はフォークのようだけれど先っぽが一文字にくっついていて突き刺せないのでフォークとしての用はなさない。かといって溝があるのでスプーンとしても役に立たない。お店のお兄さんに尋ねると、オイルサーディン用のスプーンだと教えてくれた。オイルサーディンの油を落としながら身を崩さずに掬うためのものとのこと。
へぇ、おもしろい。
デン
【エッセイ】「エルピス」#06
ドラマ「エルピス」を毎週楽しみにしている。
骨太だけどまじめすぎない。
冤罪事件を追うことを縦軸に、ボンボン育ちのAD、スキャンダルで落ちぶれた女子アナ、報道から飛ばされたプロデューサー、彼らを取り巻く環境と心情の描き方が絶妙で面白い。
今回、長澤まさみ演じる恵那の、斉藤(鈴木亮平)との終わりを予感させるこの独白がすごくよかった。
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この人は、大事なことを絶対に口にしない
ただサ