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【エッセイ】降るならガッツリ降ってくれ

 笹井宏之さんの詠む歌が好きだ。雪の日にいつも思い出す彼の歌がある。
 
ゆきげしき みたい にんげんよにんくらいころしてしまいそうな ゆきげしき

笹井宏之 『えーえんとくちから』より
 
 雪国の方には申し訳ないけれど、日頃雪と無縁の私は、どうせ降るならこのくらい狂気に満ちて降ってほしいと願ってしまう。私を狂わせてほしい、この世界に私をとどめている最後のピンを抜いてほしいと、どこかで願っているからかもしれない。
 
 しかし今日の雪も狂うほどではなかった。
 だから私は、こうしていつも通りの週末の夜を過ごしている。

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