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作詩-言葉たち-vol2

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#詩

息苦しさが定位置化しつつある
苛む棘は私自身
此の今を抜け出せるのだろうか
果てしなく迷い続ける
まだ涙を許せないよ
心が何を欲しいのかまだ知らないんだ
荒れきった頬に沁みる熱が
心臓の奥を濡らしつづける

夢にしたくない
私が痛いの
掛け違えたスイッチつなげて
私を知りたい

はてしない寂しさ

はてしない寂しさ

はてしない寂しさ
体をくりぬいて
心の奥底までからんからんにした

音も鳴らない
声もしない
空洞は
空洞にすらなりえない空気

無酸素の宇宙は
大気圏を越えなくとも私のなかに横たわる

ならば自由に泳ぎたいのに
何一つ思い通りにいかなくて悔しい

だけど私は
思い通りを知らない
通したい思いを
私は知らないから

波間に揺られて漂うぶん
沈むことを厭わなかったあの時よりは
すくわれているのか

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濡れてゆく

心が感情に彩られてゆく
スポンジのようなものなら
人の心とは、
案外美しくはないのかもしれないね

いろんな絵の具を吸って時に混ざりあい
時を重ねるほどに
染みてゆく色々

みずみずしく濡れゆく心は
いつも涙を湛えているかのよう
でもそのうるおいは美しい

乾ききって
どんな色にも染まされないよう
押し潰しきったスポンジは哀れだ

息を止めたら、
けっきょく、苦しい
だけだもの。

使ってなかった

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二羽の鳥

低い梢の木々の奥
鳥の鳴き声響いてる
さあ早く目覚めなさい、
巣立ちなさいと鳴いている

小鳥は古巣にうずくまり
夢うつつのように空を見上げる
鳴かない小鳥は何も知らない
羽も風もどこへ行くのかも

老いた親鳥は鳴いている
早くお飛びと鳴いている
古巣の小鳥に背中を見せて
早くお飛びと鳴いている

小鳥は古巣に臥せたまま
光をさがして空を見つめる
鳴かない小鳥は殻を割ってる
雛より幼いこころの卵の

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生きることに出逢うこと

生きる人に出逢いました
生きている人に出逢いました

星のように果てしない願いには
まぶしい人でした
大地に根ざす強さでしょうか

それでも彼らは生きていた

同じ糸を手繰っていたら
きっと代わり映えのない景色
違う扉を探してみよう
星の欠片を見つけられるかも

獣道を掻き分けたら
乾いた笹の葉に傷ついても
腐りかけた果実に涙するよりいい

星を輝かせる
決して手放したりしない

生きている人たち

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重なりきれない大切

私が大切にしたいもの、大切にするものを、
大切にすることで、
私が大切に想う世界を大切にしよう

私の大切は、あの人の大切になれない
あの人の大切は、私の大切になれない

重なりきれないふたつを
それすら愛おしんで慈しむ

あの人のいだく宝石が煌めくことを祈るよ
そこに正しさなんてなくて
あの人の放つ光が答えなんだろう

光に望む姿などない
ただ望む光を浴びられることを願う

あなたが生きる姿が見

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「わたしの・・・」

頑張れない
頑張らない
理想の
夢の
谷間におっこちて
這い上がる力もない

傷だらけのわたしを
この痛みを
もっと感じていてもいい

裂けるほどの透明な泣き声は
他の誰にもわかることはできないから
あなたの痛みは誰にもわかれない
あなた以外は 誰も

だから痛くないようにしないでいい
目を背けた傷はいつか
思わぬあなたの心臓を突く

一人で抱えきれない息苦しさをどうにかしたくて
必死にのばした指

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「次は春色の傘を掲げて」

今日は一日中、
断続的な雨
しとしと しとしと
思い出したように降り続いた

曇天の雲間にわずかに射す太陽も
微笑むことなく行ってしまった

重たい雲は目蓋を腫らして
涙模様の街を見下ろした

ぽつんと浮かぶ傘の色は
悲しみめいたブルーみたいで
後悔滲むパープルのようで
じつは怒りにも似たマゼンタ

気づけば雨はいなくなり
人色ばかりが行き違う

場違いな傘を畳みたいのに
空はまだまだ晴れていない

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水底の月

夜に溶けてしまいたい
月も差さない深い夜に
このまま溶かされてしまえたら
あたたかい闇が抱きしめてくれるかしら

漂っているだけで
空気の摩擦に傷ついてしまうよ

摩擦係数ゼロのクラゲだったら
皮膚にまとわるヤスリの熱に
焼かれなくて済むのだろうか

波にゆられて
全て委ねて

水底へゆこうか
月も差さない水の底へ

©2016  緋月 燈

夜明けのひかりをとじこめて

夜明けのひかりをとじこめて
金いろの希望を留めておけたら
曇り空の下でも
どしゃ降りの雨の中でも
歩きつづけてゆけるだろうか

朝陽よりもまぶしいのに
月のようにやさしい
あのひかりを
いつも胸に抱いていたい

傘をさすこともできないくらい
雨を降らせて
道なんか見えなくても
たったひとつのひかりが欲しいの

夜明けのひかりをとじこめて
この胸に飾れたら
どんな希望より晴れるのでしょう

ガラスの

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寂しさのしずく

隣にいる人すら
意味を持たぬほどの
寂しさがこぼれでるときがあるの

紫いろの夜は
差し伸べられる手すら厭わしくて
すくいあげられることを望んでいない

闇にも呑みこめない雫を
熱く濡らしては
絞りだせない声を滲ませる

今夜は
孤独なほど寂しくなくなるから
どこまでも一人にして頂戴

世界に別れを告げて
一人 待ち侘びる雨音は
月光の音色よりピアノらしく寂しく響くのでしょう

透明にしすぎた寂し

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越えられないもの

言葉では語りえないこころがあるんだ
瞬きより刹那のゆらめきを
切り取ってしまうのはきっと美しくない

誰もが同じと錯覚する
言葉という線引きを
それでも手離さずにいられないのは
夢と現実の狭間に涙の匂いを思うから

音に心をのせてあげられない私の指は
歌にしきれぬ声を
不細工に筆にのせる

余計な音を切り捨てる夜に
心を奏でる音を聴いて
言の葉に捺しきれない熱を逃がす

果てしない営みの先に
何を

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涙雨を抱いて

大気に孕まれた水が
空気の境を這い出してくる寸前
空があついねずみ色を帯びる
きっともう涙腺は限界なんだ

それでも泣けない君の背を
風があたたかく撫でてゆく

生温い風はヒトの不快指数を上げるけど
赤ん坊が泣くのは当然のように
悲しみを抱えきれない涙が産声をあげるのだって
当然じゃないか

涙を拭ったりなんてしなくていいよ
ただ 今は泣けばいいよ
寄り添う腕はそこにあるから

たくさんのものを見

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思い出すということ

流されてゆく自分
流れてゆく時間
さらさら さらさら・・・・・・音も立てずに

――今何が見えているの?

こたえようとして思い知る
一瞬前のことを思い出せない

言われなければ
忘れたことすら忘れたまま
何も残せずにいた、と
空恐ろしくなる

自分も、時間も、街も、みんな
流れゆくことに慣れすぎたの?

私が見ているもの
見えているものが、見ているもの
立ち止まってみないとわからない自分の記憶

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