越えられないもの

言葉では語りえないこころがあるんだ
瞬きより刹那のゆらめきを
切り取ってしまうのはきっと美しくない

誰もが同じと錯覚する
言葉という線引きを
それでも手離さずにいられないのは
夢と現実の狭間に涙の匂いを思うから

音に心をのせてあげられない私の指は
歌にしきれぬ声を
不細工に筆にのせる

余計な音を切り捨てる夜に
心を奏でる音を聴いて
言の葉に捺しきれない熱を逃がす

果てしない営みの先に
何を待たせているというのか
探し物を知らぬまま
私はまた夜を越えてく




©2016  緋月 燈

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