濡れてゆく

心が感情に彩られてゆく
スポンジのようなものなら
人の心とは、
案外美しくはないのかもしれないね

いろんな絵の具を吸って時に混ざりあい
時を重ねるほどに
染みてゆく色々

みずみずしく濡れゆく心は
いつも涙を湛えているかのよう
でもそのうるおいは美しい

乾ききって
どんな色にも染まされないよう
押し潰しきったスポンジは哀れだ

息を止めたら、
けっきょく、苦しい
だけだもの。

使ってなかった肺は
ビキビキと人体ならざる音をたてて軋むけど
流せることを知った涙みたいな痛みがちょっといとおしい

やっと、これから、はじめられる
その痛みに泣いても
スポンジを濡らしてゆくんだ

©2016 緋月 燈

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