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作詩-言葉たち-vol2

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#作詩

濡れてゆく

心が感情に彩られてゆく
スポンジのようなものなら
人の心とは、
案外美しくはないのかもしれないね

いろんな絵の具を吸って時に混ざりあい
時を重ねるほどに
染みてゆく色々

みずみずしく濡れゆく心は
いつも涙を湛えているかのよう
でもそのうるおいは美しい

乾ききって
どんな色にも染まされないよう
押し潰しきったスポンジは哀れだ

息を止めたら、
けっきょく、苦しい
だけだもの。

使ってなかった

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重なりきれない大切

私が大切にしたいもの、大切にするものを、
大切にすることで、
私が大切に想う世界を大切にしよう

私の大切は、あの人の大切になれない
あの人の大切は、私の大切になれない

重なりきれないふたつを
それすら愛おしんで慈しむ

あの人のいだく宝石が煌めくことを祈るよ
そこに正しさなんてなくて
あの人の放つ光が答えなんだろう

光に望む姿などない
ただ望む光を浴びられることを願う

あなたが生きる姿が見

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「わたしの・・・」

頑張れない
頑張らない
理想の
夢の
谷間におっこちて
這い上がる力もない

傷だらけのわたしを
この痛みを
もっと感じていてもいい

裂けるほどの透明な泣き声は
他の誰にもわかることはできないから
あなたの痛みは誰にもわかれない
あなた以外は 誰も

だから痛くないようにしないでいい
目を背けた傷はいつか
思わぬあなたの心臓を突く

一人で抱えきれない息苦しさをどうにかしたくて
必死にのばした指

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「次は春色の傘を掲げて」

今日は一日中、
断続的な雨
しとしと しとしと
思い出したように降り続いた

曇天の雲間にわずかに射す太陽も
微笑むことなく行ってしまった

重たい雲は目蓋を腫らして
涙模様の街を見下ろした

ぽつんと浮かぶ傘の色は
悲しみめいたブルーみたいで
後悔滲むパープルのようで
じつは怒りにも似たマゼンタ

気づけば雨はいなくなり
人色ばかりが行き違う

場違いな傘を畳みたいのに
空はまだまだ晴れていない

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水底の月

夜に溶けてしまいたい
月も差さない深い夜に
このまま溶かされてしまえたら
あたたかい闇が抱きしめてくれるかしら

漂っているだけで
空気の摩擦に傷ついてしまうよ

摩擦係数ゼロのクラゲだったら
皮膚にまとわるヤスリの熱に
焼かれなくて済むのだろうか

波にゆられて
全て委ねて

水底へゆこうか
月も差さない水の底へ

©2016  緋月 燈

とどまるものへ

抱きしめられるより
抱きしめていたい
ちゃんと、今度こそ

誰にも手をのばせるのに
誰にも手をのばせない
だから今度こそ
手をのばしたい
次なんてないかもしれないから
精一杯の今を 手をのばして

愛していたい
そっと抱きしめて
わたしの全部で伝えたいの
押しとどめていたこころ

大丈夫、ちゃんと送り出してみせるから
ひとりぼっちの君へ
約束するよ ひとりにしない
隣に寄り添う人を探すからね
だか

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SSノスタルジック

懐かしい表紙をひらいたら
あなたは愛しく 其処にいた

そんなに昔じゃないけれど
触れなくなって いつからだろう
忘れるよりも ずっと残酷
心を寄せなくなるなんて

だけど不意に呼び戻された
あなたを愛しく思ったことを
あなたがくれる物語を
そっと見つめていたことを

懐かしい表紙をひらいたら
片付けられた愛しさがまた
桜のように花開いて
胸の奥に熱がさした

永遠なんて誓えないけど
今また少し共

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波にのる
たった一言
とても難しくもあること

櫂を棄てた
流れゆく小舟になるんじゃない
激流を物ともせぬ
船頭となること

流れの道筋を見出すこと
過たず舟を操ること
不意の潮目にも櫂を放さないこと

身を任せながら
諦めないことと似ているのかもしれない

泣きたくなって櫂を棄て去ってしまいたい
激情に駆られる
それでもどうしようもなく此処に在ることを思い知らされて
光はまだ其処にあると教えられ

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夜明けのひかりをとじこめて

夜明けのひかりをとじこめて
金いろの希望を留めておけたら
曇り空の下でも
どしゃ降りの雨の中でも
歩きつづけてゆけるだろうか

朝陽よりもまぶしいのに
月のようにやさしい
あのひかりを
いつも胸に抱いていたい

傘をさすこともできないくらい
雨を降らせて
道なんか見えなくても
たったひとつのひかりが欲しいの

夜明けのひかりをとじこめて
この胸に飾れたら
どんな希望より晴れるのでしょう

ガラスの

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寂しさのしずく

隣にいる人すら
意味を持たぬほどの
寂しさがこぼれでるときがあるの

紫いろの夜は
差し伸べられる手すら厭わしくて
すくいあげられることを望んでいない

闇にも呑みこめない雫を
熱く濡らしては
絞りだせない声を滲ませる

今夜は
孤独なほど寂しくなくなるから
どこまでも一人にして頂戴

世界に別れを告げて
一人 待ち侘びる雨音は
月光の音色よりピアノらしく寂しく響くのでしょう

透明にしすぎた寂し

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越えられないもの

言葉では語りえないこころがあるんだ
瞬きより刹那のゆらめきを
切り取ってしまうのはきっと美しくない

誰もが同じと錯覚する
言葉という線引きを
それでも手離さずにいられないのは
夢と現実の狭間に涙の匂いを思うから

音に心をのせてあげられない私の指は
歌にしきれぬ声を
不細工に筆にのせる

余計な音を切り捨てる夜に
心を奏でる音を聴いて
言の葉に捺しきれない熱を逃がす

果てしない営みの先に
何を

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涙雨を抱いて

大気に孕まれた水が
空気の境を這い出してくる寸前
空があついねずみ色を帯びる
きっともう涙腺は限界なんだ

それでも泣けない君の背を
風があたたかく撫でてゆく

生温い風はヒトの不快指数を上げるけど
赤ん坊が泣くのは当然のように
悲しみを抱えきれない涙が産声をあげるのだって
当然じゃないか

涙を拭ったりなんてしなくていいよ
ただ 今は泣けばいいよ
寄り添う腕はそこにあるから

たくさんのものを見

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いのちの奇跡

目を閉じたら
全て終わってしまう気がしていた

5歳のわたし

人が生きる仕組みの輪郭を
ぼんやりと知るようになった

息をしていることが当たり前じゃなくなった
身体の奥できこえる鼓動が生きてるうれしさになった

今よりも大事にできていただろう

この息を吐いたらもう吸えないかもしれない
今のどくんで、次のどくんはないかもしれない

次なんてないかも
続いてけるかなんてわかんない

途方もない怖さ

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deep breath

自分の足で立つこと
それがなければ言葉を紡ぐことすらできないのかもしれない
でも それでも

心が苦しいまま
あなたを縛り続ける道を行かなくてもいい

きっと守りたいもの
大切にしたいもの
たくさんあって
守るために大切にするために
苦しくてもなお進む人もいるだろう

だからこそ、頑張りすぎないでほしい

辛いなら立ち止まって
休んだっていい

あなたを駆り立てるその衝動が
あなた以外の思いである

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