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ショートショート

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記事一覧

ショートショート テラシビト

ほんの少し前まで
闇の中を彷徨っていた闇彷徨い人の俺は、
光照らし人になるべく、
日々、修行修行の毎日だ。

闇の中で苦しんでいる者がいれば、
懐中電灯を取り出し、
光を照らしてさしあげる。
それが光照らし人だ。

ただ、顔に光を当てるので、
「喧嘩売ってんのか!」
とブチギレられることが多々あり、
「いや、これは正義の一環でございまして」
などと訴えても、全く聞き入れられず、
ぶん殴られることが

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ショートショート 仲直り

仲なんて悪くなった覚えはないけど、
とりあえず、
「仲直りしようぜ」
と神妙な顔で友達に話し掛けた俺は、
友達から、
「いやいや、どういうこと?」
と困惑の表情を浮かべられた。

なので俺は、
「昨日は言いすぎた」
と何もなかった昨日のことを謝罪し、
「許してくれ」
とお願いした。

それだから友達は、
「いやいやだから、えっ何?
 分かりません。
 言っている意味が分かりません。
 俺ら別にケン

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ショートショート ほっとけ

何もかもが終わりすぎている僕は、
「大丈夫大丈夫、
 もうすぐ世界は終わるって」
という慰めの言葉に対して、
「黙れ!」
と一喝した。

僕には今、
そんな慰めを受け止める余裕はない。
余裕のない人間だ。
「おはよう」
の挨拶さえ受け止めることができない。
「おはよう」
に対しても、
「黙れ!」
でお返ししてしまう。
僕は今、そんな状態だ。
そんな状態人間だ。
そして、もちふわホットケーキ大好き人

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ショートショート そして

そして僕はいつものように牛乳を飲み残し、
部屋に一人を残して、
鎖で繋いでいる二人と部屋を出た。

外に出ると寂しい世の中だからか、
寂しい風が吹いていた。
鎖で繋いでいる二人は、
パンツ一丁だから中々に寒そうだ。
しかしまぁ、それはどうでもいい。
どうせこの二人は殺人マニアに売るのだから。

という訳で、
二人をそうしてきました僕は、
いつものようにいつもの喫茶店で、
いつも頼むカルボナーラと

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ショートショート そんなに泣くのなら

なんだかよく分かんないけど、
あれじゃないのか、
君が大いなる力を
使えばいいだけのことじゃないのか。

相当、体力を使うのか知んないけど、
今その力を使わなくて、いつ使うんだ?
さっさと使えよ。
それが嫌なら、
なんかもう一個あったろ。
ほら、君だけに許された禁断の薬が。
それ飲めばいいじゃん。

いや、言っても薬が恐いってのは分かるけど、
そんなことを言ってる場合じゃないだろ。
タラタラしてた

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ショートショート 新生活

お父さんお母さんからも
おじいちゃんおばあちゃんからも
新生活の応援をされなかったまさかの事態に、
僕は新たなる住処で一人むせび泣いた。

なんで誰も応援してくれないんだ。
みんなとは仲が良かったはずだぞ。
僕は反抗期とかもなかったし、
めっちゃ良い子だったじゃん。
こんなのってないよ。
僕がなにをしたって言うんだ。
おかしいだろ。
本当おかしいよ。

お父さんお母さんは僕が家を出て行く時、
お見

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ショートショート 赤

僕が誰に対しても優しいとかそんな訳なくて、
僕は自分が思う限り、
性格がよろしくないと思うし、
クズだしバカだしウソつきだし、
いつも目にゴミが入ってるし、
だからこそいつも目が赤いし、
おめめかゆかゆでしかないし、
目薬がすぐなくなっちゃうし、
まつ毛がいつも顔のどこかにくっついてるし、
って感じで僕は別に優しくない。

僕は目が赤い人間だ。
僕は全然優しくない。
優しいの前にまず目が赤いからな

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ショートショート 殺しすぎ?

バスを逃してしまったものの、
バスに代わる何かに乗れた私は
遅刻をせずに済んだ。

助かった~!
本当に助かった。
あのバス代わりの奴に乗れなかったら、
今年で百回目の遅刻になるところだった。
流石にこれ以上の遅刻はヤバい。
これ以上遅刻したら、
「人殺し」
のレッテルを貼られちゃうというのもあって、
これ以上の遅刻はできない。
なぜかそういう風な約束を交わしちゃったから、これ以上の遅刻は絶対でき

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ショートショート いいんだ

君の家に入った瞬間、
何かぐちゃっ
とした物を踏んだ気がするというか、
いや、
これは確実に何かを踏んだんだけど、
僕はなんか嫌な感じがしたから、
何を踏んだのかは確認しなかった。

そうして君に案内されるまま、
君のお部屋に入らせてもらったんだけど、
君のお部屋にはゴキブリのおもちゃが
壁一面に釘で打ち付けてあった。

その光景に僕は凄い嫌な気持ちになったし、
凄い帰りたくなったんだけど、
君の

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ショートショート 影響

誰誰が言ってたとかは僕には関係なくて、
僕は僕の意志で、
色味で、
世界観で、
それをやろうとしている訳で、
僕が誰かに影響を受けた
って訳ではないんだよ。
そこは疑わないでほしいし、
間違えないでほしい。

僕がそれをやろうと思ったのは、
純粋に
強い人間になりたいと思ったからなんだ。
僕は今まで、
自分に自信が持てなかったというのは勿論、
他人に無関心だったし、
起きるのがとても遅かった。

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ショートショート その時の為に

言われてみれば
ゴミのような人生だった悲しき俺は、
その悲しい事実に絶望して涙した。
畜生、なんでこんなことに。

あの時、
鍵盤ハーモニカを頑張っていれば、
俺の人生は違ったのか?
鍵盤ハーモニカだけじゃなく、
あの時、
膝立ちを頑張っていれば、
あの時、
笹笛を頑張っていれば、
あの時、
豚の鳴き真似を頑張っていれば、
俺の今は違ったのか?
違ったんじゃないか?

畜生、
俺はなんで
豚の鳴き

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ショートショート マボロシ

見たことのない生き物が、
聞いたことのない鳴き声で
必死に鳴いていたので、
僕は、
「なんじゃコイツ」
と思わざるを得なかった訳だけど、
僕はしかし、
その生き物に対する興味はそれだけに終わり、
特に写真や動画を撮るとか、
捕まえるとかはせず、
「なんじゃコイツ」
という驚きだけを抱いて帰った。

あれは完全に見たことのない生き物だった。
多分、新種だろうな。
いやもう、絶対と言っていいかも知れな

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ショートショート 合戦

友達二人とうるさいくらいに騒いでいたら、
「うるさい!」
と言われた晴れ時々曇りな今日、
僕と友達二人は
「すいません」
とその人に謝って、
下を向きながら
その場所をそそくさと去った。

そして、
そのあと僕らは
石投げ合戦をして遊んだ訳だけど、
流石に危なすぎるので、それはすぐに止めた。
あまりにも危険だった。

やる前から
止めた方がいいんじゃないか
っていう空気はあったんだけど、
僕ら全員

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ショートショート 食べる

僕というか、
私というか、
なんというか、
まぁその俺は、
現状、一生懸命に生きていないというか、
熱々の食べ物は
フーフーしないと食べられないというか、
クリオネみたいな神秘性が欲しいというか、
まぁ、なんというかその、
なんとも言えないんだけど、
まぁでも私としては、
その日笑えてればいいかなって、
そんな風に思うよね。

でも俺はそんな風に考えられないっていうか、
日々思い悩んじゃうし、

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