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戦闘が終わっても、戦争は終わらない ~映画「ほかげ」~
今月になって漸く、塚本晋也監督作品「ほかげ」を観た。
100分弱の上映時間にも関わらず、登場人物一人一人に対する描写や挿話、いずれも密度が濃く、(軽く聴こえるが)痛々しく、生々しいものだった。
シリアスな主題の作品だと、描写や表現の方向が「悲惨」「哀切」に強調されることもあるが、「ほかげ」はむしろ、とても抑制した表現を選んでいた。
映画の時間は、戦後少し経った(と推測できる)頃で、前半は、バ
「虎に翼」の良さ、快さ
今のNHK朝ドラ「虎に翼」は、心動く場面がたくさんある。
シリアスであり、硬派である、と感じてもいる。
もちろん、良い意味で。
第一週の場面から例を挙げてみる。
何かの仕事をしている中、新憲法を読みふける女たち(昭和戦後)、
立ち止まり、苦し気に下を向く少女(昭和戦前)、
大きな荷を背に負い、休み休み歩く老女(昭和戦前)。
この女たちはセリフがない、通行人や街の景色の一部でもある。
第二週の終
The Beatles "Now and Then" / Songs of Those Days - February 1983, Tokyo
この文を書いている2023年11月は、一の酉の直前に突然、寒くなって、北の方では初雪、関東でも初氷が相次いでいるという。
昔も今も、寒さに違いはないと思うのだが、今の私の齢では、寒さもそうだが、風邪をひくのが怖い。情けないが。
1983年の1月から3月のことは、今でもよく憶えている。
その記憶の中心である町は、私の家(親の家)の町から電車で5、6駅のところにあって、中学、高校の時期に、買い物や喫
「ジャーナリスト堀潤さんによる スーダン写真展」
蒸し暑さのある曇りの土曜の今日、6月10日、東京・両国ピクトリコギャラリーへ、「ジャーナリスト堀潤さんによる スーダン写真展」を見に行ってきた。
お昼過ぎに入ると、ちょうど、主宰者である堀潤さんが在廊していて、写真展の説明をしてくださった。
「写真の子どもたちの目がキラキラしているのは何故だろう、と思って、よく見たら、瞳に空が映り込んでいるのです。」
「スーダンの空は『スーダン・ブルー』とい
私が好きな坂本さんの曲を
坂本龍一さんが亡くなった、と報じられてから二週間が経った。
坂本さんについて語るべきことは、まだまだ山積していると思うが、それは日々、コラムや評論が発表されるという事実、そして、日を追うごとに著者によっては、新たな視点による論評もあり、ひとつひとつが読まない訳にはいかないものだ。
いろいろな感情が起きて来るが、私は坂本さんの音楽を40年以上にわたって聴いて来た単なるリスナーなので、彼の作品から
His Favorite Songs of Ryuichi Sakamoto
坂本龍一さんが2023年3月28日に亡くなった。
TOKYO FM番組「Radio Sakamoto」の終了(最終回は大貫妙子さんが代わって進行を務め、高橋幸宏さんの追悼特集だった)、神宮外苑の樹木伐採中止を東京都知事等に対し求めた手紙の文面は、嫌な予感を抱かせるものだったが、しかしこれほど早く、とは、40年以上、彼の音楽をライヴ、レコードやCDで聴いてきた者として、気持ちを整理できないままでい
英映画「バビロン」--"移民"たちの怒り
イギリス映画「バビロン」は1980年に公開されたのだが、日本では2022年に初公開となった。
日本公開はピーター・バラカンさんの尽力によるものだが、40数年経った現在見ても、映画に溢れる「怒り」は、生々しいものだ。
1970年代末のロンドン市内、ブリクストンが舞台。
主人公ブルーは工場で働きながら、仲間たちと「サウンドシステム」を持ち、DJをしている。
ブルーたち移民二世は、ナショナル・フ