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「虎に翼」の良さ、快さ

今のNHK朝ドラ「虎に翼」は、心動く場面がたくさんある。
シリアスであり、硬派である、と感じてもいる。
もちろん、良い意味で。

第一週の場面から例を挙げてみる。
何かの仕事をしている中、新憲法を読みふける女たち(昭和戦後)、
立ち止まり、苦し気に下を向く少女(昭和戦前)、
大きな荷を背に負い、休み休み歩く老女(昭和戦前)。
この女たちはセリフがない、通行人や街の景色の一部でもある。

第二週の終盤(昭和戦前)では、女たちが対峙する現実に泣き怒る主人公、寅子の級友。

いずれも、記事やコラムで称賛されている場面だが、実際にドラマを見ると筋書やセリフのある役者たちよりも印象的だ。

なぜ、女たちは辛く、苦しいのか。
男たちは辛く、苦しくない(なかった)のか、と考えると、決してそんなことはなかったと思う。

しかし、男たちには「社会的な役割」はあった。
例えば、投票(一部にせよ)、公的私的組織への参加、家長に就く、いずれも女たちには持たされなかった「役割」だ。
女たちの(公的な)役割は、それぞれの家の内で閉じられ、妊娠、出産、育児を押し付けられる。
そのようにされた理由や成り立ちを考える前に、そのような現実だった、というのが重要だと思う。
しかし、その現実は今でもさほど変わっていないのではないことも事実だ。
(毎週のように、孤立出産、棄児で女性が、女性だけが逮捕されることは、何も変わっていない証拠だろう。)

「虎に翼」の登場人物の背景は、まだ詳しく語られていないが、寅子(と母親)以外の女たちは皆、辛そうな顔をし、目を横に逸らして溜息を吐く場面がある。
それは現実を受け入れながらも、体は拒んでいることを、ドラマ制作者たちが表現している、と感じる。
これから、女たちの外との、内との闘いが始まり、続いていくのだろう、と思う。

追伸のようなこと。

これから寅子は法律をさらに学び、実践していくのだろうが、並行して戦争の時期ともなる。
前作「ブギウギ」も、戦争の新しい描き方をしたが、「虎に翼」は女性の権利が主題であるだけに、さらなる新しさを期待している(例えば、女性が戦争への参加を通じ、自身を「主体者」と認識した活動と言える、愛国婦人運動)。

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