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噛み締める日常という味
私が印象深く記憶に残っているごはんは、デニーズというファミリーレストランの期間限定のメニューであった鯵の丼だ。
その年、今から3年ほど前のこと。母が乳腺外科に行き生検を受けることとなった。というのも、胸の痛みがあり本人が自らの意思で受診した結果、一度生検を受けた方がいいということにまとまったらしい。
私はまだ二十代後半に差し掛かる頃の年齢で、特別身体のことにさほど興味関心がなかった。それより
『花束みたいな恋をした』
映画館で観た時、胸の辺りがキュッと苦しくなった。似た者同士だと思っていた2人がどんどんすれ違い、仕事と生活そして追い求めていた終着点が違った時、恋は呆気なくもあたたかな終わりを迎える。
生活、というものは本当に平坦に見えてしまい、いつもと変わらない普遍性を感じてしまう。ところが一旦別れを決めたことで、過去を顧みてしまうと、あの頃は良かったな、あの時何かがひとつでも違っていたら2人で一緒にいられたの