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29歳、人間ドックを受ける。

 高校生、大学生の頃まではそこまで健康に興味関心がなかった。若いというものは時にとても恐ろしいまでに、自己の身体能力を過信することがあるように思う。いや、これは私だけに限った感覚なのかもしれないが……。
 風邪を引いても、インフルエンザに罹ろうとも、まぁ寝て水分摂ってれば治るだろう。身体がなんとかしてくれるさ、という肉体からしてみれば非常に勝手であり迷惑な話である。
 楽観的な私が、健康に興味を持つようになったのは、小林麻央さんの存在が大きい。乳がんを患い、闘病している姿をブログ等を通じて発信していった彼女は、メディアでも大きく取り上げられていた。そんな彼女が亡くなった。
 あんなに美しい人が、少し前まで、元気な姿を見せていた方が、聡明さを纏った方が、亡くなってしまうのか。と、そして彼女が亡くなった年齢を見てさらに驚愕したのだった。検診に行くことの大切さを、徐々に強く感じた。また、さくらももこ先生も乳がんで亡くなった。
 自分も、きちんと検診を受けよう。そう思った。
 明日は我が身、数年後は我が身、かもしれない。それを予防するには、定期的に検診を受けるのが一番なのではないだろうか。
 芸能人や著名人の死というものは、それまで考えもしなかった感情を、確実に湧き起こさせる力があると私は感じる。影響力というものだ。
 去年、私は生まれて初めて婦人科で乳房超音波検査(エコー検査)を受けた。小林麻央さんやさくらももこ先生の死から数年が経つ中で、日々の仕事の忙しさや諸々のことにかまけていたのだが、ある日突然衝動のようなものが走った。すぐに診てもらいたい!思い立ったが吉日である。婦人科を予約し、きちんと向かった。
 検査をしてくださる病院の方に、自分のだらけた身体を見せる羞恥はあったものの、一度しっかりと見てもらった方がいいのではなだろうかと考え、エコー検査を選択した。幸いにも異常はなく、安堵感を得た。そして婦人科から帰る道で、健康は自分で管理していかないといけないものなんだろうなぁとぼんやり思ったのだ。

人間ドックを受けよう
 
今年私は三十路になる。三十路というと響きが悪く一気に歳を取ったような気持ちになり、項垂れそうになるが事実なので致し方ない。新卒採用から勤めた会社を辞め、それまで一年に一度必ずあった健康診断がなくなってしまった。
 さて、どうしたものか。健康診断がないというのは、私としては結構問題だった。体重だ、体重。家に体重計はあるが、基本的に乗らない生活を送っており、自らの肥満化を認めたくないのだ。
 自己中心的なルールのもとに暮らす中で、健康診断での体重測定は、嘘偽りのない全うな結果のみが現れ、おまえは太ったんだ!痩せろ!と叱咤激励を受けられる、貴重なケツ叩きの場なのだ。それで、色々と考えた。辿り着いたのは、そう、人間ドックだったわけだ。

いざ、人間ドックへ

 人間ドックといっても価格設定が病院によって異なり、公式ホームページ等を見比べてみると、安価なものもあれば目玉が飛び出そうなものもあった。私は、地元の病院で受けたかったので、ここだ!と思ったところへと決めた。検査当日までに準備するのは、私の場合は、尿検査と検便があった。ここでとても不安に駆られた。というのも、お通じの問題がある。タイミングよく出るもんなのか。定められた期間内があり、検査当日までの間に完遂できるのか。自分のケツ穴と要相談したい気持ちがあったが、そんなことは身体は知ったことではない。意思疎通など殆ど出来ないのだから、あとはもうなるようになるしかないわけで、私は家にいる時に来いよ!!!とひたすらに願うのみであった。
 検査当日は、とてもスムーズなもので、受付を済ませ、尿検査と検便のキットを提出し、人間ドックの内容等の説明があった。検査着に着替えを済ませ、まずは血圧測定を行った。血圧など日常的に計測していないので、機械に腕を突っ込みながら、あぁ人間ドックが始まるんだなぁなどと呆けたことを考えていた。ちなみに、案内してくださる方が、美女で眼福でした。ありがとうございました。
 次に、採血。私はとっても採血が好きだ。針を刺されるところから終わるまで全てをじっと見て、血が溜まっていくのをうおおおおと感動しながらいつも観察している。する方からすれば、なんでそんなにガン見するんだと思われそうだが、あの自分の血液がどんどんと容器に溜まるのはとても面白い。これでおしまいですか……などと、別れを切り出された女のような名残惜しさを覚えながら、次に指示された場所に向かった。そう何本も自分の血が必要になるケースなどあってはならないのだが、採血が終わる頃には謎の淋しさが募った。
 それからは問診、心電図、医師の診察と続き、ここで初めてのMRI検査を受けた。前もって友人から、音がうるさいのだという情報を得ていたので、一体どれほどすさまじいものなのだろうかと、変にワクワクしながら挑んだ。私は脳ドックのコースも選択していたので、MRI検査もあったのだが、耳栓を両耳にねじ込むのには一苦労した。MRI検査には諸注意が幾つかあり、検査を受ける前に幾度か確認をしてもらった。細心の注意を払っているのだなと感心し、そのまま検査室に入ると、真っ白な大きな機械があった。
 寝そべり、ヘッドフォンをつけてもらい、カメラかなんかを装着されそのまま機械の中に。ヘッドフォンからは心地よい音色が流れ、反対にMRIの機械からはカンカンカンカンだとかゴンゴンゴンゴンだとか、そういう音が頻繁に流れていた。
 時に振動もあったのだが、それがなんだかマッサージチェアに座っているような感覚で、MRIの検査の後半は寝ていた。検査担当の方に、終わりましたよと言われ目を開けると、すっかり検査は言葉どおりに完了していた。結構あっという間だ。耳栓とヘッドフォンというダブルでの遮断効果のおかげか、音も予想していたよりは気にならなかった。
 初めて受ける検査項目というと、他には腹部エコー検査というものがあった。腹部エコー検査は、婦人科で受けた乳房のエコー検査のお腹らへんバージョンであったので、感覚はなんとなく予想がついたが、息を吸ったり吐いたりと指示に従う必要があった。そしてなによりも、このたるんだ腹を見せるという相手への申し訳なさに情けなくなった。向こうとしては仕事なのだから、私の腹がどれだけだるんだるんだろうが、検査を行うことに意識は集中しているのだろうが、私としては「なんか、すみません……こんな……すみません。」と感じてしまい仕方がなかったのだ。
 この間のどこかに胸部レントゲンも撮影した。これは前職での健康診断でもあった項目であった為、お!またこれか!という慣れた感覚で挑むことが出来た。あっという間に終了してしまい、え、もうおしまい?となったのだが、速くて確実ならば言うことなしではないか。
 聴力検査、眼底・眼圧検査、そしてフィナーレは内視鏡検査だ。

胃カメラよ、また会ったな

 胃カメラ検査は今回で実は三回目ということもあり、慣れたものであった。というのも、まだ前の会社で勤めていた頃に胃カメラを二回ほど受けたことがあるのだ。鼻も口も経験済みなので、検査自体の流れは知っていたし、胃カメラ検査は個人的に楽しいと思っているので全然苦ではなかった。
 今回は鼻を希望していたのだが、狭いということもあり無理そうであれば口からになるという事前説明は受けていた。口からだとやっぱりオエオエなるのだが(カメラが喉を通る瞬間。)、まぁ、医師の判断に従うのが道理だ。そこらへんは一存するほかない。
 結果的には鼻からの検査で済んだ。おまけに過去一、スッキリとした検査だった。上手い!この先生、うまいぞ!となった。胃カメラ検査の利点は見たまんま、すぐに結果が分かるのだ。先生から綺麗な胃ですよと言われ、ホッと一安心した。
 胃カメラ検査で辛いのは麻酔かもしれない。鼻に麻酔を噴射してもらうのだが、それが辛くて飲み込むのがちょっと苦労する。カメラが鼻と喉を通っていくのは私は、おー通ってんなあという認識程度なので全然問題なかったが、怖い!という気持ちが強すぎると、結構苦手意識は芽生えそうだ。
 しかし私が思うに、そこまで辛くはないと思う。バリウムの方が個人的にはしんどそうに思える。バリウム検査は受けたことがないのだが、どうなのだろうか……。

起承転結、さあフィナーレです

 胃カメラが終わると、人間ドックも終盤。視力検査と身体測定・体脂肪測定があった。身長も自動で機械が測ってくれるものなのかと、時代の進みを痛感した。小学生の頃や、前職での健康診断では、先生や担当の方が手動で頭のてっぺんまでおろしてくれたものだが。
 私服へと着替えを終え、会計を済ませると人間ドックは終了となる。会計後に、検査を終えての食事での注意点を受け、お食事券を貰った。というのもここでは、1,000円分の食事券をもらうことが出来るのだ。指定されている店で使えるのだが、胃カメラの麻酔の兼ね合いもあり、売店で昼食を買うことにした。(私が選択したコースのみの可能性もあります。必ず付くというものではないかもしれないので、一概にはなんとも言えません。)こういうサービスは結構有難い。


 人間ドック、中々に貴重な経験ばかりで得るものの方が多かった。お値段はそこそこかかるが、健康状態の確認や、意識を引き締め直すにはちょうどよさそうだ。30歳、節目にみなさんどうでしょうか。節目と言わず、生きているのであれば、気になったら受けてみるのはプラスになるのではないだろうか。出来れば海外のラッコやパンダ、行きたい国を制覇するまでは、夢を叶え極楽生活を送り続け皺くちゃの婆さんになるまでは、元気でありたいものだ。


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