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ルソー『社会契約論』を読む

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過去に執筆した記事のうち、『社会契約論』の紹介をした記事がまとめてあります。
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#勉強

ルソー『社会契約論』を読む(最終回)

ルソー『社会契約論』を読む(最終回)

 これまで、本編を14回、号外を2回と、計16回もの間にわたって『社会契約論』を読んできました。いよいよ今回が最終回です。さっそく内容を読みましょう。

本題に入る前に この「市民宗教について」と題された章は、事実上、『社会契約論』の最終章といって良い位置づけになっています。厳密に言えば、「結論」と題された章がこの次に続きますから、最終章ではないのですが、そうした形式的な意味ではなく、この章の内容

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ルソー『社会契約論』を読む(13)

ルソー『社会契約論』を読む(13)

 さて、今回で第三篇も終わりです。さっそく読んでいきます。

従来の社会契約説との違い 市民は、「すべての人がなすべきことを、すべての人が命令することができる」といいます。

ここで言われる権利とは、まさしく、主権者が政府を設立するにあたって統治者に与える権利のことであって、すなわち「執行権」です。
(執行権について詳しくはコチラ)

 しかし、この「執行権」をめぐって、ルソー以前の社会契約論者と

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ルソー『社会契約論』を読む(12)

ルソー『社会契約論』を読む(12)

 今回は、「主権を維持する」ということについて、解説をしていきます。第三篇第十二章以降の議論です。

人民集会 主権者は、立法権以外になんらの力も持ちません。法によってしか行動できないのです。また、法とは、一般意志の真正の行為以外の何ものでもありません。なので、主権者は、人民が集会したとき以外は主権者として行動しえません。この「人民集会」についての議論は、この『社会契約論』のなかでものすごく重要な

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ルソー『社会契約論』を読む(10)

ルソー『社会契約論』を読む(10)

 ついに10回目になったこの連載記事も、おかげさまで大変評判がよく、ありがたい限りです。いつも読んでくださって本当にありがとうございます。特に、前回の第9回は、とても難しい内容でした。今回以降も、何とか頑張ってついてきてくださいね。(他力本願)

 今回は、第三篇第三章以降を扱います。

政府の分類 ルソーは、政府の形態を、民主政、貴族政、君主政(王政)の三つに分類します。以下に、定義を列挙します

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ルソー『社会契約論』を読む(号外)
ルソーにおける「執行権」の概念とその所在

ルソー『社会契約論』を読む(号外) ルソーにおける「執行権」の概念とその所在

以前書いた記事の中で、とあるコメントをいただきました。そのコメントは、「ルソーにおいて「執行権」という概念はあるのか?」という内容。

 こうして私の書いた記事にコメントを頂けるだなんて・・・と嬉しく思っています。と同時に、いただいたコメントが上記のような「質問」でしたので、今回はその質問に対して、私の知りうる限りでお答えする、という回にしたいと思います。

 いつも記事を読んでくださっている方々

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美しきルソー

美しきルソー

 前回の記事で、『社会契約論』第二篇第十一章が「美しい」という話をしました。今回は、なぜあの引用箇所が「美しい」のか、を見ていくことにします。

前回の記事はこちら

 というのも、前回、

と言ってルソーの引用をしたのですが、その引用直後に、

とまさかの「説明なし」のまま、ただ美しさを讃美するだけで終わっていたからなのです。今回は、しっかり説明します。

美しいルソーの文章・・・ね。美しいでし

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ルソー『社会契約論』を読む(8)

ルソー『社会契約論』を読む(8)

 今回は第二篇第十一章から。

第十一章 立法のさまざまな体系について ルソーの『社会契約論』を解説するこのシリーズ。・・・ですが、この章だけは解説しません!!

 この章は、解説してはいけないのです。(なんでやねん)

 そう、あまりにも美しい文章なのです。だから、私の拙い解説は「邪魔」です。彼の文章の美しさに、私の解説を釣合わせることは到底できません。ということで、ぜひここだけでもいいので、『

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ルソー『社会契約論』を読む(4)

ルソー『社会契約論』を読む(4)

 今回からは第二篇です。さっそくどんどん読んでいきます。

 今回は、民主主義の提唱者ルソーの思想の核心に迫る、まさに「神回」です(自分で言うんかい)。

第一篇のおさらい まず、第一篇で語られた「社会契約」について、いま一度確認しておきましょう。

主権は「譲渡できない」 さて、これまでの議論から導き出されることを、ルソーは次のように語ります。

国家はそもそも、公共の福祉を目指して設立されたも

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ルソー『社会契約論』を読む(3)

ルソー『社会契約論』を読む(3)

 大好評(?)の読解企画。『社会契約論』の第三弾です。

 今日はとても重要な箇所で、実は、以前別の記事で該当箇所を紹介したことがあります。良かったらそちらの記事もご覧ください。

これまでのおさらい 統治の正当性の解明を目指した『社会契約論』は、本論に入る前に、第二章で「父権」を、第三章で「最強者の権利」を、第四章で「奴隷権」を、それぞれ批判したのでした。

社会契約とは何か 上の「これまでのお

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