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ルソー『社会契約論』を読む(8)

 今回は第二篇第十一章から。


第十一章 立法のさまざまな体系について

 ルソーの『社会契約論』を解説するこのシリーズ。・・・ですが、この章だけは解説しません!!

 この章は、解説してはいけないのです。(なんでやねん)

 そう、あまりにも美しい文章なのです。だから、私の拙い解説は「邪魔」です。彼の文章の美しさに、私の解説を釣合わせることは到底できません。ということで、ぜひここだけでもいいので、『社会契約論』を手に取って読んでみてください。いや、やっぱり、せっかくなので全部読んでください。買うのは無理、と言う人は、本屋で立ち読みでもいいので・・・。いや、やっぱり、出版社を応援する意味でも、買ってください。皆さんが買わなければ私が代わりに皆さんの分も買って何回も読みます。なんでやねん。(二回目)

 さて、とは言っても、なぜ美しい文章だと思ったか、その理由くらいは説明しないと、さすがにルソーに怒られてしまいます。

 この章は、こんな風に始まります。フランス語の紹介です。

Si l’on recherche en quoi consiste précisément le plus grand bien de tous, qui doit être la fin de tout sistême de législation, on trouvera qu’il se réduit à ces deux objets principaux, la liberté, et l’égalité. La liberté, parce que toute dépendance particuliere est autant de force ôtée au corps de l’Etat ; l’égalité, parce que la liberté ne peut subsister sans elle.〔注1〕

<1文目の読解>
あらゆる体系的立法の目的(qui doit être la fin de tout sistême de législation)であるべき、すべての人々の最大の福祉(le plus grand bien de tous)は、正確には一体何から成り立っているかを探求してゆくと(Si l’on recherche en quoi consiste précisément)、われわれはそれが二つの主要な目標、すなわち自由と平等とに帰着することがわかるだろう(on trouvera qu’il se réduit à ces deux objets principaux, la liberté, et l’égalité)。

<2文目(;より前までの読解)>
なぜ自由なのか(La liberté, parce que)。特殊的なものへの依存はどのようなものであれ、すべて国家という政治体から、それだけ力を奪うことになるから(toute dépendance particuliere est autant de force ôtée au corps de l’Etat)である。

<2文目(;以降の読解)>
なぜ平等なのか(l’égalité, parce que)。それがなければ自由は存続しえないから(la liberté ne peut subsister sans elle)である。

・・・ね。美しいでしょう?

「え?どこが美しいのですか?」と思った人は、今すぐ本屋さんに行って、『社会契約論』を買ってきてください。もう、義務です。何なら観賞用と読書用で2冊買いましょう。なんでやねん。(三回目)


法の分類

 ルソーは第二篇第十二章で、法を以下のように分類します。

①国家法、あるいは基本法
②市民法
③刑法
④習俗、慣習、世論

そして、こう区別したあと、ルソーは、

これらさまざまな部類の法のうち、政治の形態を定める国家法のみが、私の主題にかかわってくる。〔注2〕

と言います。なぜでしょうか。ルソーは、主権者としての人民と臣民としての人民との間の媒介項として、「政府」を想定し、この政府について、次章以降で分析を進めていくのですが、この「政府」に応じて主権者の国家に対する関係が変わる、と言い、その関係に「国家法」が大いに関係する、と述べるからなのです。

 少しここは難しいかもしれません。具体的に、次章以降の議論を見て、そこで確認することにしましょう。・・・と書きかけておいて、実は、これで第二篇はおしまい。キリがいいので、この続きは次回以降に譲ることにします。それでは、乞うご期待。



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本文中に〔  〕で示した脚注を、以下に列挙します。

〔注1〕Rousseau, Jean-Jacques. Du contrat social, Œuvres complètes, III, Éditions Gallimard, 1964, p.391. 

〔注2〕『ルソー全集 第五巻』作田啓一訳、白水社、1979年、162頁。

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