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ふわふわしたエッセイ的なものです。
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記事一覧

「最近どう?」から始まる哲学的迷走

「最近どう?」から始まる哲学的迷走

例えば、久々に話す友人と通話する場面を思い浮かべてほしい。十中八九、いや99%ぐらいの確率で、最初にするのは、こんな会話だろう。

「久しぶりー! 最近どう?」

もしあなたがそう尋ねられた場合、例えば「この間のライブ行ったんだけど、ほんと最高で!」「いや聞いてよ、最近めっちゃダルいことあってさ」のような返事をするかもしれない。あるいは「まあ、ぼちぼちかな〜。そっちは?」という風に会話を繋いでいく

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お前はお前の道をゆけ

お前はお前の道をゆけ

昨晩は仕事を速攻で切り上げて、「銀河鉄道の夜」を読む読書会へと行ってきた。

読書会のために表題作を読み返していたのだが、やはりいい話。電車の中じゃなければ多分泣いてたと思う。賢治作品の中では異色らしく、テーマがテーマだけに重くなってしまうところもあるのだけれど、自分はこの寂しくも美しい感じがとても好きだ。(ちなみに、主催者の方は「月夜のけだもの」が好きとのこと)

読書会では参加者自身の人生を振

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べきじゃない自分

べきじゃない自分

自分はここにいるべきではない。
生きているべきではない。

そういう「べき」からは脱出できたものだと思っていたけれど、最近またそうした思考が頭をよぎるようになった。口に出しては言わないけれど、行動や態度の節々に、そういった気持ちが表出しているような気もする。
 たぶん、「死にたい」よりはちょっとマシ、ぐらいの感じだと思う。「生きているべきじゃない」は文面的に「死にたい」とほぼ同じように見えて、「死

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ごちゃごちゃした人生

ごちゃごちゃした人生

おそらくだけど、自分の書く文章は読みにくい。理路整然としてなくて、話があっちこっち飛び回って、結局言いたいこともよく分からない。「文章の書き方」的なセオリーをことごとく無視した悪文である。
 何度か直そうとしたことがある。文章術の本をいくつかざっと読んで、下書きの骨格みたいなものを作ろうとした。そこで挫折した。たぶん、自分が理路整然とした文章を書くには相当な努力をしなければならない。それが無理だっ

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過剰について

過剰について

「あなたを一言で表すと?」みたいな質問って考えるのが面倒なので好きじゃないけど、今の自分にはぴったりの言葉がある。「過剰」である。
身の回りの、あらゆる物事が過剰になっている。それでめちゃくちゃ困っているというわけではないのだけれど、なんとなくこのまま放置するのも気が引けるので、じっくり考えてみようと思った。

出費の過剰

まず第一に、出費が過剰になっている。
家計ノートをつけているが、月末に総

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読書ニート山に登る

読書ニート山に登る

運動不足がマジでやばいという懸念が、ずっと頭の片隅に居座り続けていた。年始に燃え尽きてしまってから、それまで(ほぼ)毎日続けられていた朝の散歩が途切れ始めたり、ラジオ体操の習慣が完全に途絶えてしまったり、連なって起床時間は後ろにずれて、夜ふかしが増えて、頭が働かない……
地元の低山に登らないかと誘われたのはそんな折だった。秋口から出稼ぎに行こうと思っていたので、いい加減このままの生活リズムではまず

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宿題は終わらないものだから心配するな

宿題は終わらないものだから心配するな

学生時代、夏の終わりはとても憂鬱だった。
家族旅行やお盆の親族の集いなどイベントごとは一通り終わり、気だるげな暑さの中、変わらない日々を過ごす期間。そして何より、終わらない宿題に悩まされ続けた。
小学生時代は交通安全ポスターに自由研究。中学では読書感想文や人権ポスター。高校時代は課題のワークやプリントがバカみたいに多かった。夏休み明けにはテストがある。ぼくは計画性もやる気もなかったので、宿題が終わ

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版画作品展へ行った話

版画作品展へ行った話

田園の中の一本道、汗を流して自転車を漕ぎつつ、先ほどまで訪れていた版画展のことを思い出している。

展示会場はぼくも度々訪れるオープンスペースだが、普段と違った賑わいを見せていたので、入るのをちょっとためらった。「ひとが来だすと急に来ますね」という声が聞かれたので、たまたま来場の多い時間帯だったのだろう。壁面には想像していたよりも1.5倍ぐらい大きな作品がずらりと並んでいる。まるでギャラリーみたい

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語れども語れども…

語れども語れども…

読書会で6冊の本を紹介した。みんな大体2〜4冊なので、がっつり多い。それはあらかじめ分かっていたので、なるべく短時間で話せるように、事前に練習を重ねた。録音して聞き返し、本当に言いたいこと以外は削った。はじめ42分だったプレゼンは、15分ほどに圧縮された。

当日、終了時間が差し迫る中、話した。とにかく話した。途切れることなくぶっ続けで話し続けて、14分で用意した原稿を読み終えた。誰にも突っ込む隙

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図書館に生かされている。

図書館に生かされている。

大げさではなく、本当にそう思う。

繰り返す自己否定を、頭の片隅に追いやるために本を読む。読書をしていると、心は朝凪の海のように静かに、落ち着いてくる。逆に、本が読めない日は苦しい。

静かに読書するためには、自室ではない場所が必要だった。物が散乱した部屋は、あまりにうるさすぎる。机の片隅に積まれた本の圧迫感がしんどい。だからぼくは図書館へ通う。

図書館に着くと真っ先に、空いている机を探す。運悪

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