【小説】田舎暮らし案内人奮闘記 第5話
こんにちは、移住専門FP「移住プランナー」の仲西といいます。
ここでは、これまでの17年間の活動、2500組以上の移住相談対応から
皆さんに役立つ情報を書いています。
今回は、これまで受けた移住相談を小説風に書いてみました。
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第5話 台風のように通り過ぎる移住者!
私の朝の日課。
5㎞のジョギングとシャワー、梅干しと卵かけご飯、そしてスマホで為替相場をチェック。
やがて、遠くから小学校のベルが聞こえてくると、私も子供たちと同じ様に、書斎に向かいデスクに向き合う。
そして、教科書の代わりに、PCを開けて電源を入れる。
まずは、メールチェックが仕事のスタート。
本日も受信トレイには50件の未読メッセージ。
移住に夢見る人からの熱いメッセージが届いている。
相談メールをフォルダー移動し、着信の古いものから内容を確認。
子供のようにワクワクした気分でメールを開く。
本日の相談は、朝一番の市役所からの電話だった。
市役所の担当者のお助けコールが始まりだった。
突然訪ねてくるのだから、常識的とは言えなかった。
当然、移住も引っ越しのひとつである。
引っ越しをするのに、引越し先の町に了解を得る必要もない。
だから、突然引っ越してくるのならば、市役所に助けを求めることなく、自分で解決すべきところである。
私は「困ったなあ」とつぶやきながら、市役所に向けて家を出た。
市役所で待っていた相談者は、良く日焼けした青年であった。
私も若い頃にバックパッカーとして海外を放浪していことがあった。
その経験からして、この青年も旅の途中に見えた。
こんな調子で会話が進んだ。
軽いタッチで来られるのも、焦点がつかめずにアドバイスがやりにくい。
「とりあえず問題を一つ一つ片付けるしかない」と思った私は、お世話になっている不動産会社の社長にTELをした。
そして、「先に家賃を入れてもらえるのならば、社長自身が所有するアパートの部屋が空いているから貸してあげる」との回答を取り付けた。
岡田君にその旨を伝えるが、「大丈夫です」のOKサイン。
すかさず私は、「そこは、ありがとうございます」だろうと、胸の中で叫んだ。
私の経験から「仕事は何でもやります」と答える人ほど長続きはしない。
それに「知り合い」や「友達」の単語を多く話す人ほど、私は「仲間が少ない」と思っている。
まあ、はきはきした話し方ではあるので、接客業ならば大丈夫だろうと考えて、お世話になっている温泉施設のマネージャーに連絡をした。
「正社員では雇えない。3か月の使用期間を了承するならば面接をする。」とのことであった。
その旨を、岡田君に伝えると、またしても「大丈夫です」のOKサイン。
取り急ぎ、彼に市役所の部屋を借りて履歴書を書かせる。
そして、彼を温泉施設に連れていき、面接を受けさせた。
その後、不動産会社の社長と合流し、アパートに入室する手続きを終えた。
朝早くから市役所に出かけたが、気付くと午後の3時を回っていた。
取り合えず、住まいと就職の紹介を終えて自宅に戻ると、どっと疲れが出た。
その日の夜、温泉施設のマネージャーから採用の連絡をいただき、翌日から勤務をすることで決定をした。
私はビール缶を開けながら、移住サポートの仕事について考えた。
これが引っ越しと捉えるのならば、移住サポートの仕事ではないのかもしれない。
しかし、移住サポートの仕事は、人の人生に関わる仕事であるのだから、あらゆるサポートが必要でもある。
それから、2週間ほど過ぎたある日。
私は温泉施設に彼の様子を見に行った。
すると、温泉施設のマネージャーから思わぬ一言が返ってきた。
私は慌てて、不動産会社の社長に連絡をした。
私はどっと疲労感と怒りが襲ってきた。
あの2週間前の1日は何だったのだろうか。
そして、私には挨拶もなく消えてしまった。
一期一会とは言うけれど。
彼がどこかで幸せに暮らしていることを祈って・・・
(終わり)