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社会的弱者 その2

「なんてひどいセンターだ…」

管理者はギリギリに出社。
挨拶も返さない。
周知は把握していない。
業務が落ち着いている時は管理者同士で恋バナに花を咲かせてる。
質問されてから何かを調べる始末。
クライアントからは信頼されず、
クライアントがいうこと以外は何もできない。
もちろんクライアントへの要望はほぼ却下される。
故にスタッフからの要望が全く反映されず窮屈さが増す。
MG(マネージャー)陣は自分の使いやすい人間ばかり登用。
気に入らない人には嫌がらせもする始末。

そんなお陰で、入電をいただくお客様対応もそれはそれはひどいものになるのも自然の摂理。


とあるキッカケで、入電内容の履歴の改ざんを上層部で行なっていることを知った。
理由は、クライアントから指摘を受けないためとのこと。

しかも、その改ざん後の内容が、お客様の意図とは全く違うものになる内容。

許せなかった。


そのセンターは、人の命に関わる内容を取り扱う業務だった。
困っている人が頼りにして電話をしてくるのだ。

まあ、受電のコールセンターという場所は往々にして困っている人が電話をしてくる場所。
そしてその困りごとやお客様の心情に寄り添い、問題を解決する場所。

困って、助けて欲しくて電話をして来て下さるにも関わらず、その内容を自分たちの保身のために改ざんするなんてことは、どう頑張ってもボクは看過できなかった。

しかも、最前線で直接お客様と対応をしているのはボクたち。
そうして必死に対応した内容を改ざんされることに、ひどい憤りを感じた。


改ざんと言っているのは、お客様の意図が全く違うものとなってしまうから。
言葉遣いや、そのままでは伝わらないから、という理由で、意図は変えずに直すのはそれは【修正】というもの。
それならボクだって憤りは感じない。

ミジンコほどの小さな正義感を振りかざし、派遣元の担当者へ連絡をする。

「そうですか。では私からそちらの責任者へ連絡をしてみます。」

そうして、派遣元の担当者、センター長、GM(グループマネージャー)、ボクの4者で面談が組まれた。

GM「何を指して改ざん、とおっしゃるのですか」 

セ「そんな事実はありませんよ」 

 「いやいや、お客様の意図が変わるような履歴の修正はそれは改ざんです」

そんな平行線のやり取りが30分ほど続いた。

GM「証拠はあるのですか?」

 「そんなもの、ボクに確認する術があるとお思いですか?」

セ「それで改ざんと言われても、どうすることもできません」

飽くまでシラを通し切る管理陣。
決定的な物的証拠を持ち合わせていないボクに、なす術はなかった。


その後日、センター長へと直談判を決行。
直属の上司へ頼み込み、時間を取って貰った。

「何か、センターへのご意見があるとか」

「はい、大変烏滸がましいかと存じますが、そのお陰でスタッフもお客様も困っています。」

「もし何か良い案があるのでしたら、資料にして提出していただけますか?」

「かしこまりました」


そうして後日、約10ページに渡る改善案を提出。

「ありがとうございます。GMとも共有してみます」


後日、派遣元の担当者から呼び出しを受け、社に向かう。

「残念ながら、更新が難しいとの連絡がありました。詳しいことは、就業先のセンター長から後日お話があると思います」

寝耳に水だった。

そうしてセンター長から呼び出しを受け、話しを聞いた。

理由はこうだった。


・本来の与えられた業務を逸脱したこと
・管理者の悪口を外で言っている
・社外で業務の話しをしていた


何を言っているのかさっぱり分からなかった。

外で悪口?社外で業務の話しをしていた?
どっからそんな話しが出てきた。

そして本来業務を逸脱した?
あなたに直接話しをして資料提出を求め許可したのはあなただろう。

コールセンターというところは、基本的に個人情報を扱うことが多いため、確かに業務のことを社外(飲食店など)で話すことはコンプライアンス違反となる。
(ここでいう個人情報とは、お客様からの問い合わせ内容なども含む)

もし仮にだ、ボクがその行為をしていたとしよう。
ではその時一緒に話していた人間は?
そして指導や注意もなしに一発アウト?

「あとは派遣元の担当者とお話ししてください」

そう言って通達を受けるだけで、その時間は終わりを迎えた。


後日、派遣元に出向き、担当者と、その上席も立ち合い、話しをしに行った。

「お力になれずすみません」

(なる気なかっただろう…)

「ただ、本来の業務を逸脱してしまっては、私たちもどうしようもなく…」

「センター長から資料を提出するように言われて提出をしました。勝手に突きつけた訳ではありません」

「社外で業務の話しをするのは…」

「その証拠がどこにあるのですか。そして仮にそうだったとしたら処分を受けるのはボクだけなのですか」

「・・・・」

「ボクたち派遣社員は勤め先の在り方に対し意見を言うことは許されないのですか。
事実、こうして意見を言い、意見があるなら資料を出してと言うから出したらこのザマです。
そりゃあなた方からしたら大事な取引先ですから、強く言えないのでしょうね。
しかしそれでボクらの様にこうして仕事を奪われる訳です。
職を失うんです。
それがどう言うことか、あなた方には解らないのでしょうね」


何かの鬱憤を晴らすかのように、気持ちをぶつけた。

何をどこまで受け止めるのか。

きっとこの人達も含め、就業先の人たちも、ボクら派遣で仕事をする人たちの気持ちが判らないのだろう。

こうしたことが横行しているから、苦しくとも、嫌でも、気持ちを抑えつけ、耐え忍びながら仕事をしている。

欠員が出たらまた新しく人を補充すればいい。

まるでガソリンのように。

ボクらは飽くまで人だ。

そこには想いも感情も考えもある。

何より心がそこにある。

人を使うのなら、それを忘れてはならないと思う。

勤める人間は、働かせて貰っている。
雇う人間は、働いて貰っている。

それを忘れないでほしい。

どこまで行っても、人なのだから。







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