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エッセイ他

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長めの詩と、物語と、ポエムの延長線上にあるエッセイと。
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2023年4月の記事一覧

不義

不義

 結婚という契約を交わした男と女は無条件に祝福すべきものとされている。

 人を集めて幸せそうな顔をしてみせて、永遠という空疎を誓う。体裁さえ整えておけば、そこは喜びの場なのだという約束事が、不安も憂鬱も塗り込めて覆い隠す。

 婚姻関係という型に収まって数年後、喪失をきっかけとした心身の不調に対処するために読み漁った本から得たいくつかの概念は、私にとって禁断の知恵の木の実だった。

 どんなとき

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奪う痛みを抱えて生きる

奪う痛みを抱えて生きる

 幼い頃から動物好きだったこともあって、人が他の生き物の命を奪わなければ生きていけないことについてよく考えていた。

 人に限らず従属栄養生物は、自力で生産できない栄養素を他の生物から摂取しないと生きられない。その事実はどうすることもできない。動物の肉を口にしなかったとしても、植物や昆虫や菌類だって生きているのだから、やっぱり何かの命を食べて生きなければならない。

 命は何よりも大切だと一方では

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現代にもガチの魔女がいるらしい

現代にもガチの魔女がいるらしい

 アメリカには実際に魔術の儀式を行うような「魔女」的な人々が100万人単位で存在しているらしい。そして近年めちゃくちゃ増えているらしい。

 というわけで、最近魔女になろうとしている直凪は、魔女についての本を読んで自分が理解した範囲のことを記事にしてみようと思い立った。紹介するのは鏡リュウジ著『鏡リュウジの魔女と魔法学 (鏡リュウジの占い入門3)』(説話社、2015年)。魔女の本を読んだのはこれが

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意識低い系の食事

意識低い系の食事

 三十数年生きてきて、一人暮らしや主婦的なものだった時期もあり、それなりに料理は作ってきた。その割にあんまり上達していない自覚がある。むしろ退化しているかもしれない。

 理由はわかっている。「もっと美味しいものを食べたい!」という気持ちが薄いからだ。

 例えば作った煮物のニンジンが硬かったとする。誰かのために作った料理であれば、「次はもう少し早い段階でニンジンを入れよう」くらいのことは一応思わ

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あの、今後宗教っぽいことを書き始めて「どうした直凪??」と思われるかもしれないので断っておきますが、10代半ばで出家したがったり神学部に転入しようとしたり最近まで仏教の本を読み漁ったりしていた人間なので、むしろそっちがデフォルトです。
なお非科学的なことは信じられない派です。

戦えないなら理想を描く

戦えないなら理想を描く

 差別や偏見と戦っている人たちがいる。

 声を上げることも必要なのだと思うけれど、自分はそうはなれないなとも思う。

 保身と言えば保身には違いない。しかし言い争いの場に立つだけの強さを持っていないのはもう仕方がない。

 明らかな差別だったとしても、「そういうことを言われると傷つくのでやめてほしい」とどれだけ言葉を選んで伝えたとしても、「責められた」「攻撃された」と感じて反撃してくる人はいる。

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ジェンダー論に関心を持つ個人的理由

ジェンダー論に関心を持つ個人的理由

 自分は女の出来損ないだと長いこと信じていた。

 自分が女であることを認められないのは子供時代の一時的なことで、大人になるまでの過程のどこかで諦めて受け入れて女になっていくのだろうと思っていた。きっとみんなそんなもので、成長していくうちに自然と女になっていくのだろうと。

 けれど思春期を過ぎても「女」になりきることができなかった。みんなが乗り越えていく「女になる」という壁を、自分だけ越えられな

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