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何か書いて発信してみたい気持ちになったので、やってみます。現在主婦。3人の子どもあり。…

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何か書いて発信してみたい気持ちになったので、やってみます。現在主婦。3人の子どもあり。2019年3月に乳がんステージ4が判明。本が好き。鍼灸・あん摩マッサージ指圧師。

マガジン

  • 紹介して頂いた記事

    私のnoteをご紹介頂いた記事です。大切にします。ありがとうございます😊

  • 乳がんが判明して、からの私

    結果的には「乳がんが判明する前の私」という内容になりました。

記事一覧

遊びをせんとや 生まれけむ

「にーらめっこしましょ、あっぷっぷ!」 にらめっこしよー!と寄ってくるのは我が家の長男、小学校2年生。彼はにらめっこをするのが好きだ。 しかし、からきし弱いので…

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3年前
11

あるひとつの幸せ

自転車で、町の図書館へ行った。 15分ほど走る道のり。 田植えが終わり、水面にはまだ頼りない苗がきれいに並んで植わっている。白鷺の姿が見える。勢いよくジョワジョワー…

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3年前
14

ギアチェンジがやってくる時

くちびるの右下内側に、じんじんヒーヒーと痛みがある。口内炎。慌てていたのか気が散っていたのか、食事中に噛んでしまった傷がなかなか癒えない。氷を口に含むと、滲みて…

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3年前
12

新年度、家族丸ごと変化の時で、読めず書けずにいました。元気です。子どもが夕方から発熱して、たぶん健全な熱だけれど、今晩は様子見です。少しばかり心細くて、やさしいnoteを眺めています。

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3年前
7

What a Wonderful World

病院は真空だ。入院病棟はパッキングされている。 息苦しいと感じるひともいるだろう。 私も外に出ればあるいは、新鮮な空気に驚くかもしれない。しかし今のところ、この真…

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3年前
32

人生会議 〜死は誰のものか〜

私が最も身近に死と出会ったのは、母方の祖父の死である。 私が初めての子どもを産み、3ヶ月ほどした頃だ。 祖父母は皆、長生きしたと思う。 高齢であったから、ある程度心…

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3年前
59

声は語る

今、私がどこにいるかというと、病院のベッドだ。消灯後の真っ暗な4人部屋の、窓側のベッド。ピンク色の綿の掛け布団にもぐりこんで、お隣さんの寝息を聞きながらこのnote…

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3年前
22

ご飯と、アオサの味噌汁と、鱈のホイル焼きと、ウィンナーと、じゃがバタと、鮭とばを、七輪で煮たり焼いたりして食べた。火の番は子ども。火を熾すのも絶やさず守るのも根気がいる。美味しくて晴れやかな真っ黒顔。

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3年前
24

私の髪の話 第二話

一段落した脱毛の話を書き始めたはずが、新しい薬の開始により、また新たに脱毛が再開している。また抜け方が違うのがふしぎ。 あくまで、これは私の髪の話だ。 坊主頭は…

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3年前
19

私の髪の話 第一話

鬘を借りることになった。 カツラである。今風に言うとウィッグ。 これから記すのは、がんの治療中、ここ半年で私に起こった、俺の家……ではなくて私の髪の話だ。 昨年の…

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3年前
14

痛み

痛みについて書いています。気が進まない方は読まずにお通りください。 痛みで夜中に目が覚めた。 突如としてやって来て、まったく自分では制御出来ない。それが痛みだ。…

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3年前
15

鳩時計の振り子が規則正しく揺れている。 振り子は鳥を象った木製で、腹の部分だけが白い。無音で行ったり来たりを繰り返す。 「お休みモード」に設定されたエアコンが、…

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3年前
14

春へ・小景

ほとけのざ。仏の座。 ほとけのざの明るい紫色がポツポツ目に映るようになってきた。 幼稚園まで、徒歩で20分ほど。 末っ子とともに歩く道。 少し前には椿の落ちたのが、…

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3年前
8

彼女はただ泣きたかっただけ

長女について書こう。 彼女はもう間もなく、小学校を卒業する。 私にとって、初めての子ども。 最近は、イヤフォンで音楽ばかり聴いていて、机に向かう時間が多い。あいみ…

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3年前
19

noteという遊び場で 真剣に遊ぶ

スキを頂いた数が100を越えました。 愛想が良いとは思えない私のnoteに、3000を越えて読んでくださる方がいて、さらにスキまで頂いて、コメントくださる方までも。 ただた…

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3年前
20

治療が変更される時

がん治療のお話。個人的見解であり、独り言です。感情的で、非論理的な。 8月から開始した、パクリタキセルという抗がん剤を変更する提案を医師から受けた。 1月終わりに…

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3年前
9
遊びをせんとや 生まれけむ

遊びをせんとや 生まれけむ

「にーらめっこしましょ、あっぷっぷ!」

にらめっこしよー!と寄ってくるのは我が家の長男、小学校2年生。彼はにらめっこをするのが好きだ。

しかし、からきし弱いのである。
8年生きてきて、たぶん一度か二度しか勝ったことはないと思う。ほぼ負けの人生。

お母さん、にらめっこしよー!
の時点でもう笑っている。ニコニコ。
いいよーと答えると、一瞬きゅっと表情をひきしめる。ひきしめるのだが、口もとの一部が

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あるひとつの幸せ

あるひとつの幸せ

自転車で、町の図書館へ行った。
15分ほど走る道のり。
田植えが終わり、水面にはまだ頼りない苗がきれいに並んで植わっている。白鷺の姿が見える。勢いよくジョワジョワーと音を立てて、清らかな水が放たれている。透きとおった緑の匂い。水田を渡る涼しい風に吹かれるのが好きだ。

片田舎の図書館だが、なかなかに立派で広い。現在、利用制限はしていないようだけれど、人はまばら。床のワックスを塗り直したのか、きゅー

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ギアチェンジがやってくる時

ギアチェンジがやってくる時

くちびるの右下内側に、じんじんヒーヒーと痛みがある。口内炎。慌てていたのか気が散っていたのか、食事中に噛んでしまった傷がなかなか癒えない。氷を口に含むと、滲みて涙が出る。それでも一時の麻痺のために氷を口にほおりこむ。痛みを和らげるために痛みを誘発するという、よくわからない循環。でも少し落ちつく。

我が家に、ギアチェンジが巻き起こっている。
その渦の中心になっているのは長女だ。
中学生となり、強豪

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新年度、家族丸ごと変化の時で、読めず書けずにいました。元気です。子どもが夕方から発熱して、たぶん健全な熱だけれど、今晩は様子見です。少しばかり心細くて、やさしいnoteを眺めています。

What a Wonderful World

What a Wonderful World

病院は真空だ。入院病棟はパッキングされている。
息苦しいと感じるひともいるだろう。
私も外に出ればあるいは、新鮮な空気に驚くかもしれない。しかし今のところ、この真空状態が心を落ち着かせてくれてもいる。決して嫌いではない。

何も、しなくてはならないことがない。
誰かの送り迎えや、誰かの食事や、誰かの話し相手や、誰かのお風呂や、誰かのケンカの仲裁や、誰かのスケジュール管理や。誰かの。

「誰か」には

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人生会議 〜死は誰のものか〜

人生会議 〜死は誰のものか〜

私が最も身近に死と出会ったのは、母方の祖父の死である。
私が初めての子どもを産み、3ヶ月ほどした頃だ。
祖父母は皆、長生きしたと思う。
高齢であったから、ある程度心の準備も出来ていた。

母方の祖父母は、田舎に暮らしていた。生まれてから死ぬまで、同じ集落で生きた。
家の裏山に先祖代々のお墓があり、竹藪がある。畑や田んぼで作物を育て、食べる分を賄っていた。祖父は気ままな人で、酒を飲み、タバコを吸い、

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声は語る

声は語る

今、私がどこにいるかというと、病院のベッドだ。消灯後の真っ暗な4人部屋の、窓側のベッド。ピンク色の綿の掛け布団にもぐりこんで、お隣さんの寝息を聞きながらこのnoteを書いている。

入院中である。
「痛み」なんてタイトルで、水の底にいるようなうす暗い痛みについて書いたけれど、まったくもって段違いの痛みがやってきたのだった。

こりゃダメだ。
と判断して、救急車のお世話になった。
救急隊員の方は、す

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ご飯と、アオサの味噌汁と、鱈のホイル焼きと、ウィンナーと、じゃがバタと、鮭とばを、七輪で煮たり焼いたりして食べた。火の番は子ども。火を熾すのも絶やさず守るのも根気がいる。美味しくて晴れやかな真っ黒顔。

私の髪の話 第二話

私の髪の話 第二話

一段落した脱毛の話を書き始めたはずが、新しい薬の開始により、また新たに脱毛が再開している。また抜け方が違うのがふしぎ。
あくまで、これは私の髪の話だ。

坊主頭は気持ちがいい。
つい手が頭に伸び、触れる。
思いもよらない凹凸がわかる。冷んやりしていてふよっと柔らかみ。ここには大事なものが宿されている予感。
覆われていない頭部は頼りなくもある。
生後数ヶ月の乳児のように危うい。丁重に、優しく扱わなけ

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私の髪の話 第一話

私の髪の話 第一話

鬘を借りることになった。
カツラである。今風に言うとウィッグ。
これから記すのは、がんの治療中、ここ半年で私に起こった、俺の家……ではなくて私の髪の話だ。

昨年の夏から、抗がん剤を始めた。その副作用としてほぼ全ての人に脱毛が生じるという話は聞いていた。副作用の中でも、丁寧な説明が割かれている大事な項目である。女の命とも言われる髪が抜けていくことは、男女に依らず、恐怖であり深い悲しみであり驚愕であ

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痛み

痛み

痛みについて書いています。気が進まない方は読まずにお通りください。

痛みで夜中に目が覚めた。

突如としてやって来て、まったく自分では制御出来ない。それが痛みだ。

例えば転んだ時。転んだ瞬間は驚きに支配される。頭の機能が静止して、視界はスローモーションになり、音は消える。
転び終えると、それから世界が動き出す。
声が聞こえ、目の前がはっきりする。恥ずかしさが生まれる。さまざまな感覚が戻ってくる

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夢

鳩時計の振り子が規則正しく揺れている。
振り子は鳥を象った木製で、腹の部分だけが白い。無音で行ったり来たりを繰り返す。

「お休みモード」に設定されたエアコンが、僅かに羽を開き時々生ぬるい風を送る。換気扇がうるさく感じられて、そろそろ蓋を開けて掃除をしなければと思う。壁にかけられたドライフラワーは色褪せ、もう香りを放たない。誕生日にもらった花束、日毎に水気が抜けていく。腐るよりも枯れていく様が気分

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春へ・小景

春へ・小景

ほとけのざ。仏の座。
ほとけのざの明るい紫色がポツポツ目に映るようになってきた。

幼稚園まで、徒歩で20分ほど。
末っ子とともに歩く道。
少し前には椿の落ちたのが、お土産だった。白、薄いピンク、赤。濃い緑の硬い葉。
椿は花ごと落ちるので、すぐに3歳の手のひらいっぱいになる。

昨日からは、ほとけのざ。
幼稚園に子どもが通い出して、初めてその存在を知った。
それまでは「雑草」が空き地に生えているな

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彼女はただ泣きたかっただけ

彼女はただ泣きたかっただけ

長女について書こう。

彼女はもう間もなく、小学校を卒業する。
私にとって、初めての子ども。
最近は、イヤフォンで音楽ばかり聴いていて、机に向かう時間が多い。あいみょんとNiziuが好き。
髪を伸ばし出したのは、3年生くらいからだったか。今は肩あたりまでの豊かな黒髪を、ドライヤーとブラシで整え、結わえ、きっちりとピンを刺して後れ毛を留めている。
背は小さいけれど、ここ一年でぐっと伸びてきたところ。

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noteという遊び場で 真剣に遊ぶ

noteという遊び場で 真剣に遊ぶ

スキを頂いた数が100を越えました。
愛想が良いとは思えない私のnoteに、3000を越えて読んでくださる方がいて、さらにスキまで頂いて、コメントくださる方までも。

ただただ、自分が書きたくて書き始めました。
でもnoteは日記ではない。
人の目に触れているんだなぁと、ちょっと怖くなったり。嫌な思いをさせたり傷つけたりすることがあることを、コメント送信する前のひと声で刻みました。

PVって何の

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治療が変更される時

がん治療のお話。個人的見解であり、独り言です。感情的で、非論理的な。

8月から開始した、パクリタキセルという抗がん剤を変更する提案を医師から受けた。

1月終わりに受けたCTで、びみょうに・すこーし・わずかに、腹膜に転移しているがんが増大しているらしい。尿の出を妨げつつあり、腎臓を守る意味でも薬を変えましょう、ということである。

CTより頻回に行っている血液検査ではまずまずの様子だっただけに、

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