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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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#浮気

私は、たしかめたい (140文字小説)

私は、たしかめたい (140文字小説)

「おかけになった電話は…」

 機械的な声が、連絡が取れないことを無慈悲に伝えてくる。

 まただ。

 この時間、夫は電話にでない。

 言い訳はきまって、「忙しい」だ。

 夫に他の女性がいないか、私は不安でたまらない。

 私はまたコールする。

 バスの運転中でも、出てくれたっていいじゃない。

欲深きものよ (140文字小説)

欲深きものよ (140文字小説)

 人間は欲深いんだ。

 大きな感動も、二度目は自然と薄れてしまうものなのさ。

 だからこれは、人としてあるべき当然の行動だったんだ。

 俺は人間として、あるがままに動いたまでだ。

 そして、ここで地に頭をこすりつける。

 うむ。完璧だ。

 これで今回の浮気謝罪のシュミレーションができた。

推しは、桃太郎侍 (140文字小説)

推しは、桃太郎侍 (140文字小説)

 うちの嫁は時代劇専門TVの虜だ。

 推しは、桃太郎侍。

 ちなみに俺の推しは、馴染みのランパブの桃萌だ。

 今夜も目を盗み帰りに楽しむ。

 家に着き玄関を開くと、

「一つ、人の世の倫理を侵し。二つ、ふしだらな色事三昧。三つ、醜く下劣な夫を、退治てくれよう。桃太郎」

 鬼面を纏う嫁がいた。

はじめてのおつかい? (140文字小説)

はじめてのおつかい? (140文字小説)

「パパ。ぼく、このあいだ、はじめておつかいしたんだ」

「へえ、何を買ってきたの?」

「おてがみをとどけたの」

「へえ、誰に?」

「よく、おうちにくるひと」

「よく来る人?美香ちゃんのママかな?」

「ううん。おじさん」

「おじさん?」

「うん。ママがよくチュウしてるおじさんだよ」

帰らない日々 (140文字小説)

帰らない日々 (140文字小説)

 今つき合ってる人いないし、まあいいか。

 告白への答えは、軽い思いだった。

 でも彼はいつも笑顔で話を聴いてくれた。

 彼は他とは違う。

 ある日、元カレから誘われ迫られた。

 軽い気持ちで唇を重ねるも、偶然、彼がいた。

 泣いていた。

 彼はもういない。

 私は今も帰らない日々を求めてる。

君の名は? (Twitter140文字小説)

君の名は? (Twitter140文字小説)

 知らない番号だ。
「もしもし」
「俺だけど!」
 着信拒否したのにしつこい。
 友達の電話でも借りたのだろうか。
「話すことなんか、もうないけど」
「もう一度だけチャンスをくれ!香」
 プツ。
 私は無言で切る。
 いったい何人と関係をしているのか。
 もう私の名前には辿り着けない気がする。

うわきものってなに (Twitter140文字小説)

うわきものってなに (Twitter140文字小説)

 あるところに、わたしとぼくがいました。
 ふたりはそうしそうあいです。
 あるひ、ぼくがほかのことあそんでいました。
 わたしはげきどします。
「うわきもの!」
 ぼくはいいます。
「あきた」
 わたしはきょうらんしてぼくをさしました。

「これが幼児恋愛の推薦図書なの?」
「世も末ね…」

盗られたおんな (Twitter140文字小説)

盗られたおんな (Twitter140文字小説)

「別れたんだって?」
噂を聞きつけた友人が心配して来た。
原因を訊ねられ「NTR」と答えた。
「彼女、年上が好きだって」
「そうか…」
「体型もぽっちゃりが好みだと」
「何でお前と付き合ったんだ?」
「さあ」
「災難だったな。その相手はわかってるのか?」
「購買部のおばちゃん」

関白希望 (Twitter140文字小説)

関白希望 (Twitter140文字小説)

自分で古風と自覚している。
好きな唄は関白宣言。

異動の辞令が下り、俺達は遠距離になった。
だか愛する女は生涯お前ただ一人だ。

ある日、サプライズで女の家を訪ねた。
部屋には俺の知らない男。
繕う女に罵声を浴びせ俺は去る。

嫁に貰う前でよかった。
あっちの女に逢いに行くか。

恐怖のカツ丼 (Twitter140文字小説)

恐怖のカツ丼 (Twitter140文字小説)

 玄関を開くと揚げ物の匂いがした。

 嫁がカツ丼よ、と微笑む。

 食卓に着くと、突如照明が落ちた。

 停電を疑うも、嫁が懐中電灯で何かを照らしている。

 桃色の名刺に汗が垂れる。

「さあ始めましょうか」

 感情が無い笑顔に食卓は取調室と化し、そっとカツ丼が置かれる。

「早く吐いたが楽よ」

絶対絶命 (Twitter140文字小説)

絶対絶命 (Twitter140文字小説)

 絶体絶命。

 つり橋の板が壊れた。

 落ちる俺を彼女がつかむ。

「助けて!」

「こんな時だけどさ、香とどこに行ったの?」

「そんなこと、今はいいだろ!」

「そう、さよなら」

 パッと手がひらき、俺は谷底へ。

 夢だった。

 安心も束の間。

 枕元で彼女が証拠写真を携え仁王立ち。

 絶対…絶命…