シェア
東原そら
2021年5月30日 13:33
「おかけになった電話は…」 機械的な声が、連絡が取れないことを無慈悲に伝えてくる。 まただ。 この時間、夫は電話にでない。 言い訳はきまって、「忙しい」だ。 夫に他の女性がいないか、私は不安でたまらない。 私はまたコールする。 バスの運転中でも、出てくれたっていいじゃない。
2021年4月24日 20:57
人間は欲深いんだ。 大きな感動も、二度目は自然と薄れてしまうものなのさ。 だからこれは、人としてあるべき当然の行動だったんだ。 俺は人間として、あるがままに動いたまでだ。 そして、ここで地に頭をこすりつける。 うむ。完璧だ。 これで今回の浮気謝罪のシュミレーションができた。
2021年4月2日 20:08
うちの嫁は時代劇専門TVの虜だ。 推しは、桃太郎侍。 ちなみに俺の推しは、馴染みのランパブの桃萌だ。 今夜も目を盗み帰りに楽しむ。 家に着き玄関を開くと、「一つ、人の世の倫理を侵し。二つ、ふしだらな色事三昧。三つ、醜く下劣な夫を、退治てくれよう。桃太郎」 鬼面を纏う嫁がいた。
2021年3月31日 19:48
「パパ。ぼく、このあいだ、はじめておつかいしたんだ」「へえ、何を買ってきたの?」「おてがみをとどけたの」「へえ、誰に?」「よく、おうちにくるひと」「よく来る人?美香ちゃんのママかな?」「ううん。おじさん」「おじさん?」「うん。ママがよくチュウしてるおじさんだよ」
2021年3月27日 20:29
今つき合ってる人いないし、まあいいか。 告白への答えは、軽い思いだった。 でも彼はいつも笑顔で話を聴いてくれた。 彼は他とは違う。 ある日、元カレから誘われ迫られた。 軽い気持ちで唇を重ねるも、偶然、彼がいた。 泣いていた。 彼はもういない。 私は今も帰らない日々を求めてる。
2021年2月20日 19:39
知らない番号だ。「もしもし」「俺だけど!」 着信拒否したのにしつこい。 友達の電話でも借りたのだろうか。「話すことなんか、もうないけど」「もう一度だけチャンスをくれ!香」 プツ。 私は無言で切る。 いったい何人と関係をしているのか。 もう私の名前には辿り着けない気がする。
2021年2月19日 20:09
あるところに、わたしとぼくがいました。 ふたりはそうしそうあいです。 あるひ、ぼくがほかのことあそんでいました。 わたしはげきどします。「うわきもの!」 ぼくはいいます。「あきた」 わたしはきょうらんしてぼくをさしました。「これが幼児恋愛の推薦図書なの?」「世も末ね…」
2021年2月17日 07:41
「別れたんだって?」噂を聞きつけた友人が心配して来た。原因を訊ねられ「NTR」と答えた。「彼女、年上が好きだって」「そうか…」「体型もぽっちゃりが好みだと」「何でお前と付き合ったんだ?」「さあ」「災難だったな。その相手はわかってるのか?」「購買部のおばちゃん」
2021年1月24日 19:25
自分で古風と自覚している。好きな唄は関白宣言。異動の辞令が下り、俺達は遠距離になった。だか愛する女は生涯お前ただ一人だ。ある日、サプライズで女の家を訪ねた。部屋には俺の知らない男。繕う女に罵声を浴びせ俺は去る。嫁に貰う前でよかった。あっちの女に逢いに行くか。
2021年1月21日 10:36
玄関を開くと揚げ物の匂いがした。 嫁がカツ丼よ、と微笑む。 食卓に着くと、突如照明が落ちた。 停電を疑うも、嫁が懐中電灯で何かを照らしている。 桃色の名刺に汗が垂れる。「さあ始めましょうか」 感情が無い笑顔に食卓は取調室と化し、そっとカツ丼が置かれる。「早く吐いたが楽よ」
2021年1月18日 20:00
絶体絶命。 つり橋の板が壊れた。 落ちる俺を彼女がつかむ。「助けて!」「こんな時だけどさ、香とどこに行ったの?」「そんなこと、今はいいだろ!」「そう、さよなら」 パッと手がひらき、俺は谷底へ。 夢だった。 安心も束の間。 枕元で彼女が証拠写真を携え仁王立ち。 絶対…絶命…