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東原そら
2021年7月25日 20:07
ねえ?覚えてる? 三度目のデートを。 あなたが照れくさそうに、つき合ってくれって言った日だよ。 つき合って二年、私の誕生日にプロポーズしてくれたよ。 覚えてないの? 引戸がガラッと開き、女が怒鳴り込んできた。「このストーカー!性懲りもなく彼の記憶を改竄しようとしてるわね!」
2021年7月24日 19:28
「いまの彼とはうまくいかないわ」 今日も、私の前には長蛇の列。 自信が無い人達が、選択を私に委ねに来る。 自分のことはどうだろう。 しこりが疼く。 拒絶した求婚。 あのとき受諾していたらと、今も思う。 人生に間違いはつきもの。 大切なのは、そこからの学び。 さぁ、次の人どうぞ。
2021年4月11日 20:43
瞼が動かない。 僕の目は一瞬で固まった。 透き通ったように輝く金色の髪。 純白の真白い皮膚。 澄んだ海のような碧い瞳。 つり革で揺れる僕は、正面の女性に恋をした。 結婚してください。 僕は囁くように想いを告げた。 彼女はにこりと答えた。「あなたのランドセルが取れたら考えるわ」
2021年3月20日 20:39
鋭いジャブが来た。 俺は蝶のようにかわす。 この試合は敗けられない。 俺には誓いがある。 隙あり!カウンターだ。 王者がリングに倒れた。 勝った。 俺はリンクサイドの彼女に叫ぶ。「結婚しよう!」「いや。ボクサー収入安定してないし」 俺もリングに伏す。 ダブルノックダウンだ。
2021年2月6日 19:55
あの人との出会いはきっと運命だった、と思う。 共に汗した部活。 励ましてくれた受験。 運命のいたずらで、私たちは永い時を隔てられた。 こんな所で、また出逢えるなんて。 あなたは米寿で、私はもう古希。 それでもかまわない。 あなたと共に過ごしたい。「残りの人生を、私にください」
2021年1月19日 22:53
下校中の校門でクラスメイトに呼び止められた。 あまり話したことがない男子だ。 「明日、暇を壊しませんか?」 変な誘い文句だなと、噴き出してOKをした。 当日の帰り際に「今度」と言うので、次の予定かと思うと、「指輪をはめませんか?」と言いだした。 今度はいろいろすっと飛ばした。
2020年11月18日 17:58
「今日は月がきれいですね」と晶子の同僚教師である前田が呟いた。 晶子は平静を装うが心拍は通常より力がある。 単純に風景を愛でたのか、「今なら手が届きますよ」と返すか逡巡する。 晶子は意を決し後者を選ぶ。 「じゃあ翳してみましょう」 言われて翳す晶子の薬指にすっと小さな月が煌く。あとがきハロウィンの夜空に輝くブルームーンを見て頭に浮かんだ作品です。色々と手順を省略して
2020年11月17日 20:32
「ケンケンパッ」と彼女が並木道の枯れ葉の上ではしゃいでいる。 童心に返るその様を見て、心の鐘が激しかったプロポーズの日を思い起こし口元が緩む。 君は相変わらずだね。 僕らは潤わなかったね。 踏めばすぐ砕ける枯れ葉だった。 いま君の傍らは名前も知らないその人が潤わせているんだね。あとがき散歩中に枯れ葉を踏んでパッとインスピレーションが降りてきた作品です。決して、作者の