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新しい物語の始まり/『失われたものたちの本』ジョン・コナリー

新しい物語の始まり/『失われたものたちの本』ジョン・コナリー

2023年4月12日(金)

昨年の5月以降、更新を止めてしまっていた。文章を書くことが苦になった訳ではない。ただ、何となくnoteというプラットフォームから離れてしまっていただけだ。

近況報告としては、この4月から好きな人と住み始めたことぐらいだろう。
私たち2人は本を読むこととお酒と紅茶を飲むことが好きだ。

目まぐるしい日中を終えた2人は、本棚から世界の欠片を抜き出し、ジンソーダか紅茶を作

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ホラー小説に初チャレンジ/『シャイニング』スティーヴン・キング

ホラー小説に初チャレンジ/『シャイニング』スティーヴン・キング

2023年2月1日(水)

私はホラーというジャンルが昔から苦手である。

だが、何事も食わず嫌いは良くないと思い、2020年頃に積極的にホラー映画を鑑賞していた。

その時期に観たのは日本のホラー映画を代表している『呪怨』(清水崇監督)とTwitterで話題になっていた『ミッドサマー』(アリ・アスター監督)の2本である。

『呪怨』はTSUTAYAでDVDを借りて視聴を試みたが冒頭の15分ほどで

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本の虫が完成するまで/私の読書遍歴 2~4歳編

本の虫が完成するまで/私の読書遍歴 2~4歳編

2023年1月20日(金)

厳格な家に生まれた私は、幼少期にテレビの視聴やTVゲームを禁止されており、
結果的に娯楽は制限されたものになっていた。
リストアップしてみると以下の通りある。

父の書斎にあるクラシックのCDを流す

両親によって選定されたビデオの視聴(週に数回という制限あり)

書籍と関わる(読み聞かせ、読書、図鑑を眺める)

お絵描き、工作

この中でも一番手軽に取り組めた娯楽は

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本の虫が完成するまで/私の読書遍歴 4~8歳編(上)

本の虫が完成するまで/私の読書遍歴 4~8歳編(上)

2023年1月22日(日)

4歳の頃、父の仕事の都合でボストンに引っ越すことになった。

ボストンは日本で言うところ京都のような都市で、歴史的な建造物が多数存在している場所である。
気温は北海道に似ており、冬になると雪が積もり、その辺の坂道は子供たちによってソリ滑りの会場に変わる。
(ボストンでの体験についてはまた別途、記事にする予定)

渡米した翌日に時差ボケや言語理解を配慮してもらえず現地の

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本の虫が完成するまで/私の読書遍歴 4~8歳編(下)

本の虫が完成するまで/私の読書遍歴 4~8歳編(下)

2023年1月29日(日)

「私の読書遍歴 4~8歳編(上)」でも書いた通り、4歳~8歳まで私はボストンに住んでおり、現地の子どもたちが通っている学校に通っていた。

肌の色や目の色が異なるクラスメイトと同じ言葉を理解できるようになると、
比較的に親日の地域だったこともあり、すぐにクラスの一員として受け入れられた。

言葉を理解したことで、子どもたちの定番の遊戯である「ごっこ遊び」に混ぜてもらえ

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子どもの感性を失ったおとな/『飛ぶ教室』より

子どもの感性を失ったおとな/『飛ぶ教室』より

2023年1月25日(水)

中学受験が近いからであろうか。
某大手塾の鞄を背負った少年が駅のホームで声をあげて泣いているのを見かけた。

私も中学受験を経験した身なので
「今は辛いかもしれないけど大人になって振り返るとそんな大変なもんじゃないよ。挫けないで!」と声をかけたくなった。

だが『飛ぶ教室』の前書きを思い出し
「少年に声をかける権利はあるのか?」と思いとどまってしまった。

児童文学を

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ともかく、もう、盗まれるものなんか何もないのだから。

ともかく、もう、盗まれるものなんか何もないのだから。

2023年1月10日(火)

長時間の残業の帰り道はカポーティの小説の一節と、シモーヌ・ヴェイユ『工場日記』を思い出す。

ともかく、もう、仕事終わりの私にできることなんか何もないのだから。

21時59分、井の頭線にて。

友情は実践されるものである

友情は実践されるものである

今年は友人の結婚式が立て続けに行われる。
いわゆる「結婚ラッシュ」と言われているものが私にも訪れたらしい。

式を挙げる友人から結婚式のスピーチを依頼された。
仲が良い自覚はあったが「本当にこんな私が友人代表として話して良いのか?」という不安に陥っていたタイミングでヴェイユの一文を思い出したので引用。

「友情」という言葉で思い出したが、中学生の時は武者小路実篤の「友情」という小説が大好きだった。

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