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ポルトガル語圏の歴史

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ポルトガルの歴史やポルトガル旧植民地に関わる歴史についてまとめてあります。歴史全般にご興味のある方、ポルトガル語に興味のある方、ポルトガルやブラジルに興味のある方はぜひご覧くださ…
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#ブラジル

アンシエタの奇跡(ブラジルの伝説と神話III)

アンシエタの奇跡(ブラジルの伝説と神話III)

『ブラジルの伝説と神話』には、キリスト教と先住民と関係についての話も収められています。

以下で語られるのは、ブラジルではじめて宣教したと言われるサン・ジョゼ・アンシエタのものがたりです。

アンシエタは、1534年にスペインに生まれ、ポルトガルのコインブラ大学で学んだとされます。その後、1553年にブラジルに到着して、布教を始めました。

同書に収められているのは、アンシエタがブラジルで先住民に

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『ブラジルの伝説㈡』パラグアスの夢

『ブラジルの伝説㈡』パラグアスの夢

カラムルと呼ばれるポルトガル人が、ブラジルの地に定住したという伝説があります。カラムルは、現地女性と結婚し、その後やってくるポルトガル人の定住を手助けしたとされます。このカラムルに関連する伝説は次のようなものがあります。これもブラジルで出版された『ブラジルの伝説と神話』とからの引用です。

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カラムルこと、ディオゴ・アルヴァレス

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ブラジルの伝説と神話㈠雷の子

ブラジルの伝説と神話㈠雷の子

しばらく『ブラジルの伝説と神話』という児童書を読んでいたことがあります。それを読んでいると、南アメリカ大陸の独自性とヨーロッパの緊密な関係との両方を感じることがありました。今回紹介する「雷の子」もそのひとつです。

少し長いのですが、引用してみます。

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「雷の子」

1510年のことだった。

ポルトガル人は航路の大発見で世界

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フィールドノート群馬県大泉町の「六月の祭り(フェスタジュニーナ)」の調査報告(2018年7月)

フィールドノート群馬県大泉町の「六月の祭り(フェスタジュニーナ)」の調査報告(2018年7月)

1.はじめに 「六月の祭り(フェスタジュニーナ)」は、ブラジルの祝祭暦で最も活気あふれる伝統行事のひとつともいう[ニウタ:131]。また、その重要性はクリスマスやそれに関連する諸行事の対になるほどである。起源は夏至を祝う土着の祝祭で、豊穣を祈るものであった。その後、そうした夏至の祭りがキリスト教に取り込まれ、聖人の祝祭日と混じりあった。そのため、六月の祭りは、結婚の聖人とされる聖アントニオ(6月1

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プルートの母親(ピアーダ:笑い話)

プルートの母親(ピアーダ:笑い話)

ポルトガル語で笑い話をピアーダpiadaといいます。
私は10年くらい日本に住むブラジル人の方々と仕事をしていたのですが、そのときに聞いた話です。実際にはポルトガル語で交わされた会話をがもとになっていますので、もう少し面白かった気がします。

*2013年11月13日にあるブログで投稿した記事です。

昨日聞いた話だ。

友人 「プルートって知ってるよな」

わたし「ああ、あのディズニーのキャラク

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ポルトガル語とポルトガル語圏

ポルトガル語とポルトガル語圏

00.はしがき

本ページは、ポルトガル語圏の歴史についてお話しした際に作ったメモ書きに基づいています。私は、ポルトガル語圏という場合、ポルトガル語が公用語となっている国やかつてポルトガルの植民地でポルトガル語が話されていた地域、ポルトガル語が共通語となっている移民コミュニティなどを指して使っています。なお、このメモ書きは、おおむねTeach yourselfシリーズのPortuguese Lan

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私訳「ゆうじょうのうた」(カルロス・ドルムン・ジ・アンドラ―ジ)

私訳「ゆうじょうのうた」(カルロス・ドルムン・ジ・アンドラ―ジ)

ゆうじょう の うた

うた を ひとつ つくろうか
はは が はは である と わかるような
すべて の おかあさん が おかあさん である と わかるような
そして はは が ふたつのめで はなす ような うた を

ひろい どうろ に つづく みちが
たくさん の くにぐに を とおっていく
ぼく の こと を しらない としても ぼく は しっているから 
むかし から の ともだちたち

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ブラジルとポルトガル:ヨーロッパ系ブラジル人の起源(3)国名の由来

ブラジルとポルトガル:ヨーロッパ系ブラジル人の起源(3)国名の由来

(2)からつづき

ここまでで確認したのは、1)ブラジルを発見した人物というのは、ポルトガルがインドに派遣した艦隊の司令官ペドロ・アルヴァレス・カブラルという人物だった、2)カブラルらがブラジルに到着したときの様子はカミーニャという人物の書簡から明らかになっている、3)書簡から見る限りポルトガルとブラジル人(現地人)の接触は穏当なものだった、4)その一方でカブラルはその地に十字架を立てるという、か

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ブラジルとポルトガル:ヨーロッパ系ブラジル人の起源(2)ブラジル発見

ブラジルとポルトガル:ヨーロッパ系ブラジル人の起源(2)ブラジル発見

(1)からの続き

以上のような大航海時代の到来の中で発見されたのが、ブラジルでした。この発見が意図的だったのか、偶然だったのかは説が分かれていますが、とりあえず、その話は置いておいて、まずはだれがブラジルを発見したのかということを確認します。

1.ペドロ・アルヴァレス・カブラル

コロンブスの成功に焦ったポルトガル王は、1497年にインドに向けて、ヴァスコ・ダ・ガマを派遣しました。ガマは翌年、

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ブラジルとポルトガル:ヨーロッパ系ブラジル人の起源(1)大航海時代・ポルトガル・ブラジル

ブラジルとポルトガル:ヨーロッパ系ブラジル人の起源(1)大航海時代・ポルトガル・ブラジル

前回までにブラジルにはどんな人々が住んでいるのかということを書きました。とくに、ブラジルでは人種に基づく人間類型があるということを指摘しました。人種による人間類型は、日本人が単一民族だと考えるような社会においてはわかりづらい概念かもしれません。ブラジルでは、白人、黄色人、黒人、混血、先住民が用いられています。また、そうした人種と社会階層が結びついていることを指摘しました。

今回は、こうした人種で

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ブラジルと人種

ブラジルと人種

私はかつてブラジルと関連する職場にいました。そのため、ブラジルに関連するお話をする機会に恵まれました。ここから何回かに分けて、ブラジルを人の移動とのかかわりから考えてみたいと思います。

1. はじめに

みなさんは、「ブラジル人はどんな人たち」という問いにどうこたえられるでしょうか。ブラジル人にあったことはなくても、なんとなくのイメージをもっているのではと思います。たとえば、陽気だとか、思慮深い

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