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【読書感想文】西村賢太「小銭をかぞえる」

こんばんは!
最高峰の私小説で感想文を書きます!小栗義樹です!

今週投稿予定の短編小説ですが8割ほど書けました!明日には投稿したいなと考えています。よければぜひ読んでみてください。宜しくお願い致します。

ということで、本日は読書感想文を書かせて頂きます!
今読んでいる本・好きな本を題材に感想文を書く試みです。この記事を通して、題材とさせてもらった本に興味を持っていただけたら嬉しいなと思います。

本日の題材はコチラです

西村賢太「小銭をかぞえる」

です。

2011年に第144回芥川賞を苦役列車という作品で受賞した西村賢太さんの短編です。

冒頭のご挨拶にも書きましたが、個人的に私小説の中で最も優れた作品が小銭をかぞえるだと思っています。僕の中では間違いなくNo.1です。同時に、文学としても優れた作品だと思っています。文学って何?という問いがあるのなら、答えは小銭をかぞえるを読んでみてほしいです。

僕は、屈折している人間らしさがお話の中にちゃんと納められている作品こそが文学だと思っています。お話が面白ければ文学というわけではなく、人や社会、時代を学べるお話こそが文学だと思うのです。もっと言えば、誰かの人生を追体験することができ、自分の人生と比較したとき初めて文学は意味を成すのだと思っています。

小銭をかぞえるは、普通の人生を送ることが出来ている人には絶対に体験できない想像を絶する出来事がパッケージされています。そこには人の弱さや弱い男の見栄、そんな男と暮らす女性の苦労とその男への女性ならではの理解・解釈などが詰まっています。話自体はとにかく理不尽です。全面的に男が悪いと普通なら考えますし、それが事実です。でも、それが主人公の男が持つ弱さからくる怖さによる威嚇なのだとすれば、男であれば誰しもが一度は大なり小なりの事案でやったことがある攻撃なのではないか?と思います。

だから嫌でも共感してしまうし、男ってそういう生き物だよなと妙に納得してしまうのです。

西村賢太さんは石原慎太郎さんのファンだったことで有名です。滅多に他者の作品に評価をしない石原さんも西村さんの作品を激賞していて、お互いを認めあう良い関係だったのだと思います。石原慎太郎さんと西村賢太さんが対談している動画がyoutubeに投稿されています。良かったら観てみてください。とても刺激的な対談です。西村さんの命日は石原さんの命日の4日後です。同じ年の石原さんの死の4日後に後を追いかけるようにして西村さんは亡くなりました。

死を運命と呼ぶのは非常識かもしれませんが、これはちょっと運命がかっているように感じてしまいます。デルジベットのイッセイさんとバクチクの櫻井さんが同じ年に亡くなったのと同じくらいの電撃です。

石原さんと西村さんの作品は似ています。こういうと怒る人もいるのかもしれませんが、男性の身勝手に振り回される女性とその女性の立ち振る舞い・行動パターンがすごく似ているなと思うのです。

それは行くところまで行った先で見た景色なのだと思います。八方ふさがりに近い状況の中で男女がどのような行動を起こし、どのような気持ちを抱くのかを知っているからこそ書ける作品を創作したのがこの2人です。小銭をかぞえるにしても、処刑の部屋にしても、人間観察程度では書けないくらいの生々しさがあります。そういう部分で共感することができたからこそ、この2人は互いを認め合い、良い関係を築くことが出来たのではないかと僕は思っています。

言い訳というと失礼かもしれませんが、そんな男の理不尽な言動を正当化してしまう理由も双方の作品にはきちんと設計されています。それこそが双方の作品の最大の魅力で、石原慎太郎さんは「若さ」を理由とし、西村賢太さんは「家庭の崩壊・不完全な父親」を理由としたのだと思うのです。

どちらも小説だからこそ展開できるお話で、現実にこうしたシチュエーションはほとんど起こらないと思います。ところが、西村賢太さんは実体験をベースにした私小説として展開しています。だからこそ、紡がれる言葉もその人が見てきたものから生まれるオリジナリティーがあるし、セリフの言い回しや間も西村賢太さん本人の声で再生されるので現実味が帯びています。

小銭をかぞえるは、石原慎太郎さんと似た系統の作品ですが、大きく違う点は私小説である点です。石原さんが西村さんのメッセージに共感しつつ、西村賢太さんの作品を激賞したのはこの違いが大きかったからなのではないかと僕は思います。

後味として感じる絶妙に残る苦みも含めて、本当に文学のど真ん中を突いた素晴らしい作品です。

ぜひ読んでみてほしいなと思います!
宜しくお願い致します。

というわけで、本日はこの辺で失礼いたします。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
また明日の記事でお会いしましょう!


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