マガジンのカバー画像

こころの栄養達

31
心やこころを揺さぶってくれた、素敵な言葉の宝箱。 いつも素敵な言葉を紡いでくださってありがとうございます。
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩集評】『生と死のあわいに迷子 田中淳一詩集』

わたしは詩を書き始めてそれほど時間も経っていない浅学の者だが、いい詩集、というものについては、しばしば考える。それと同時に、読み手にとってのっぴきならない詩集、というものについても考える。田中淳一さんの詩集『生と死のあわいに迷子』は、間違いなくわたしにとって後者の詩集だった。わたしは、読みながら何度も、巻末に添えられた田中さんのプロフィールを確認した。一九五五年生まれとある。わたしは七五年の生まれ

もっとみる
詩/境界

詩/境界

境界

今日
狂った人を見た

雨の中
横断歩道の向こう側
赤信号の下
傘もささず
叫んでいた

もうたくさんです!
もうたくさんです!
もうたくさんです!

青になって
突進してくる擦れ違いざま
視線を投げると
血走った眼で
うすら笑いを浮かべた、

そうか
これが理不尽な神々の原型、

つぶやいて
ふと我に返る時
記憶に侵食されている

信号が点滅している

2006年3月

詩/思いのソドム

詩/思いのソドム

思いのソドム

私の中の死にたい私は
私の中で死ねばいい
私とともに死ぬのではなく

私の中に一つでも
信じるに足るものがあるなら
自分を滅ぼすことはない

皮膚で体を覆ったのは私ではない
内臓を配置したのは私ではない
心臓を動かしているのは私ではない
肺でガス交換しているのは私ではない
体中に血管を張り巡らせたのは私ではない
ホルモンを分泌しているのは私ではない
目を横、鼻を縦にしたのは私ではな

もっとみる
嫌わないで

嫌わないで

過去は過去だけど
無理に忘れることはない

過去があったから
今があるのだし

今はいつか過去になる

過去も今も大切な物

辛い過去があったから

こうやって笑っていられる

あの日
泣いたこと
笑うことを忘れてしまった事

それも経験
笑う事を思い出せたのだから
大切な出来事で
この日が来るためのもの

無理に忘れることもないし
無理に思い出すこともない

心の隅の箱の中
そっとしまっておけ

もっとみる
雨を聴く

雨を聴く

小牧幸助さま、宜しくお願い致します

いっそう勢い増した雨は
鬱屈した心をかき消すように
視界をぼかし全てを薄墨色に
染め上げる

かの道標たる街灯に
その白きぼやけた光に
ロダンバックの一輪の白薔薇重ねた夜

炎ではなく水のようにと、
全てを洗い流せ、
かの方に習え
感傷より自己凝視なのだと
分かった心算でいた夜

そうか
付け焼刃は消滅するのだ
知った心算
かくありたしと願った夜

全ては虚無

もっとみる

あなた と
まちあわせ

あまり に はやく
ついちゃって

ぷれぜんと の じゅんび も
してなくて

どきどき そわそわ
おちつかなくて

はなつみ しながら
まっていて

そしたら
いっぱい に なっちゃって



ただ あなた の
えがお が みたくて





𖧷 ⁺.

無数の優しい鳥が奏でる音に包まれて

我は静かに横たわり

終息の地を夢見る
嗚呼、鴉よ、海鳥よ、燕よ、鴎よ

我を水底に

咥えて
投げ落として下さらぬか
今夜の雨音より
優しいその音に

抱かれ眠りたい

死にたかった小学生時代。
中学、高校時代、なんでこいつらのために死ななきゃいけない!段々とあいつらが阿呆に見えてきて負けるもんか!と意地張りの性格が現れた。凄いという言葉を聞いた時、ざまぁって思った。死んでたら存在すらも忘れられてだろうからね

「水平線」

「水平線」

海の光上
先頭切って走りゆく白い帆

立ち昇った水蒸気
あなたの面影

空を分ける飛行機雲
貴方への道

両足で立った水平線。
線の向こうを光が跨いだ。

【詩】産みの苦しみ

【詩】産みの苦しみ

産みの苦しみ

いつもいつも私は苦しむ
苦しむことなく産むことはできない
何度となく描いて消去して
何時間もそれに費やす

それは苦しむことで産まれてくるが、産まれた時の喜びは大きい

何度も何度も読み返す
何度も何度も消去する

そうして産まれたそれは

我が子と等しくかわいい
我が子と等しく素敵で
我が子と等しくいとおしい

作品たちに命があるとするならば
私を全力で支えることだろう
私を全力

もっとみる
「翳」

「翳」

葉の隙間から溢れた光は、他のどんな光よりも眩しいらしい。