高山京子

詩を書きます。たまに短歌を載せます。仕事は近現代の日本文学研究、教育。ブログ:http…

高山京子

詩を書きます。たまに短歌を載せます。仕事は近現代の日本文学研究、教育。ブログ:https://takayamakyoko.hatenablog.com/(文学や映画の長めのお話はこちら) X :@takayamakyoko

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  • 常に暫定版の詩集(仮)

    消え去るイメージを中心とした私的世界。

  • 取り残された者たちの詩

    生きることのせつなさ・かなしさ・わびしさ・やりきれなさについて。

  • 短歌

  • スナック京子

    虚構の文学的私詩。

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2024年6月1日に高山京子第一詩集『Reborn』出します

先日(3月4日)、「詩集を出そうかなと思っています」というタイトルで投稿しましたが(詩集を出そうかなと思っています|高山京子 (note.com))、このたび、ようやく、それが出版の運びとなりました。高山京子第一詩集『Reborn』、6月1日に出ます。Amazon、楽天ブックスで予約・購入が可能です。詳細は以下のリンクからお願いします。 詩集 Reborn (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社) | 高山 京子 |本 | 通販 | Amazon 詩誌「コ

    • 【詩】アネモネ

      吐息の混じった欲望が空気をふるわせる、遠い国からそれはやってきた、もうすぐ会えるというのに、あと一日が待てない、あと一時間が苦しい、手を伸ばした先には雪をかぶった熱い肌、それが溶け出したらもうあとは知らない、明日なんて来なくていいから、流れていく体には、アネモネの血の色が、日に透けて、無数の空に溶け出した、わたしはそれをひとつひとつ掬って、あなたに捧げる、わたしがこの世でできることは、たったそれだけ、アネモネの青色が降り注ぐ夕方、わたしとあなたにも、やがて深い暗闇が訪れる、手

      • 【詩】heaven

        あなたは生きたまま 石膏色の噴水になって みんなはその顔が あなたに似ていると噂する 心ないことを言う あなたは黙っている だけど毎晩 わたしが水のなかに入り その首を抱いてくちづけると あなたの目からは 涙が溢れ出す わたしにはわかる あなたは生きていることが だってあなたを 石膏のなかに 生きたまま閉じ込めたのは わたしだから あなたが欲しかった 誰にも渡したくなかった だからこうするしかなかった だってあなたは みんなに愛されていて わたしなんか 誰にも愛されたことがな

        • 【詩評】園イオさんの詩のこと

          先日、詩誌「凪」第五号を読んでいて、園イオさんの「若き亡者」という詩にぶつかったとき、大げさな表現でなく、私は正直、ぶったまげてしまった。なんだ、これは。こんな詩を書く人がいるのか。詩に関しては浅学無知であるにしても、これではいくらなんでもひどすぎる、と己を深く恥じたことであった。 とにかく、言葉が、走っている。躍動している。そのリズム感、深いところに流れる音楽性などに、私はすっかりやられてしまったのである。それはすべて、自分の詩にはないものであった。なぜか私は、小林秀雄の

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        2024年6月1日に高山京子第一詩集『Reborn』出します

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        • 常に暫定版の詩集(仮)
          368本
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          393本
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        記事

          【詩】鼓動

          血が流れていない 生きることが薄い 世界とは透明な壁一枚で隔てられ 人びとは無関係に通り過ぎて行く 泣いても叫んでも 声が聞こえることはない しかし あなたの言葉にだけは あたたかな血が脈打っている 濃密な生の刻印 誰かはきっと気づいている いまこの瞬間にも必ず 妙本寺の海棠の花は 無限に落ちていく それを見ている男ふたりを わたしがまた見ている あれはいつだったか 男のうちのひとりは詩人で もうひとりの男に恋人を奪われた かなしみはそんなところに宿る 海堂の木は す

          【詩】鼓動

          【詩】かぞく

          ああわたしは あなたがたに ころされたかったのだ うまれるまえから きょうのこのひまで ころされたいぐらい あなたがたをあいしていたのだ なぜうまれたのか わからなかったけれど わたしはあなたがたに ころされるためにうまれてきたのだ うれしいです おとうさんおかあさん あなたがたは うまれたいえからにげたくて あたらしいかぞくをつくった それはどんなにがんばっても たよりなくて やがてわたしがうまれた にげるようにつくられたいえ みんなにげながらせいそくしている わたし

          【詩】かぞく

          【詩】桜の森の満開の下(坂口安吾に)

          誰もいらない 殺されてもいい 斬られたい 首を絞められたい 指を絡ませ 脚を絡ませ 舌を絡ませて 抱き合った しがみついた 溶けて重なり合いたかった 名前を呼ぶ 際限のない愛の言葉 いまとここがあるだけの 鈴鹿山の奥の奥 桜の森はしんとして わたしたちの息遣いだけがこだまする まばらに咲いていても、喜ばれる、桜、嫉妬してしまうほど、僕は、世界から、拒まれていた、吹きっさらしの、風のなか、立っていることを、余儀なくされる、宇宙に、放り出される、ひとつだけの魂、きっと、君は、見

          【詩】桜の森の満開の下(坂口安吾に)

          【詩】自傷する言葉たち

          苦しみがのどにつかえて 声が出ないような そんな日がある ひとりぼっちで 消えたくなるような そんな夜もある だけどこういうおばかさんは 泣くに泣けない 泣いていいのに 叫んでもいいのに すべてが内向しては 心を閉ざして 自分を傷つけようとする はっきり言いましょう、ばかです あなたを傷つけることなんか 望んでいやしないのに 傷つけてしまう 大事にしたいのに 崖っぷちのところまで 追い詰めてしまう それがわたしの愛し方 呼吸をするように 愛がわからないひとの愛し方 ぶ

          【詩】自傷する言葉たち

          【詩】世界の終わりと僕たちと

          空が割れて落ちてきた、海が崩れてこなごなになった、世界の終わり、僕は君の手を取って走り出す、街ではひとがあっちへこっちへ、でも僕は君を離したりはしない、だって木星の裏でやっと見つけたんだからね、星が地滑りを起こしているから、いまここでキスしていいよね、フジサンが噴火したら大変だ、逃げまどうひとたちで道路は大混雑、僕らは手をつないで走る、坂口安吾の「白痴」かよ、みんなとは違う方向へ、二人きりになれるチャンス、こんなときなのに君はうれしそう、僕もニヤけている、フジサンは怒っている

          【詩】世界の終わりと僕たちと

          【詩】春の日

          寝ても寝ても夢の中、春の午後、僕は君の髪に溶けてゆく、絡めた指までいつしかひとつになって、どうせだったら桜の花びらになってしまえばいいのにねって君が笑うから、一緒に散る姿を想って僕は欲情してしまった、春だから発情かな、消える、僕らはいつか、それまでは、好きすぎてどうしていいかわからないから君の耳を噛んでみた、他にやることもあるだろうに、外は春の嵐、洗濯物が飛んで行きそうだったから、とりあえず洗濯ばさみになってみたかったのかな、君はくすぐったそうに笑う、いつもそれを見たくて僕は

          【詩】春の日

          【詩】逆説

          わたしのすべては 逆説でできている 本当のわたしを見てほしいから 誰にも見られたくない 捨てられなくないから 捨てる 嫌われたくないために 先に嫌いになる 好きだから 離れたい 好きすぎるから 死にたい 幸せだから 死にたい 何が何でも今すぐ 死にたい だから それなのに 別れの時間が迫るなかで 泣きそうな顔をしながら キスをしている わたしという存在は 逆説だから 究極のところ 死にたいということは 生きたいということ 真実のわたしは ただ生きたいだ

          【詩】逆説

          【詩】もう、それだけで。

          君のからだが好き。そう言っても、怒られなかった。軽蔑されなかった。君はうれしそうに、プラトニックラブじゃなくて本当によかったね、なんて言ってる。僕はたまらなくうれしくなる。僕を否定する世界のなかで、僕は生きてこなきゃならなかった。君は僕を否定しない。絶対に。もう、それだけで。あなたは生い立ちがひどすぎる。だから精神的な恋愛が信じられないんだよ。むかしの彼女はそう言った。僕は穢らわしい人間なんだ。そう思っていた。だけど君は違う。好きだったら触れたいって思うよ。性愛のない愛なんて

          【詩】もう、それだけで。

          【詩】憂鬱な午後

          いのちをかけているひとにしか 用はない いのちをかけて作られたものしか 欲しくない いのちをかけた恋しか したくない いのちをかけた言葉しか 書きたくない 読みたくない 話したくない 聞きたくない いつかは終わる あした死ぬかもしれない だからすべては美しい だけど、でも、ときどき思うよ 愛さなければ 傷つけることもないし 傷つくこともなないし さみしくなることもなければ せつなくなることもなくて 楽なんだけど それでも僕たちは 愛するのを やめることができない

          【詩】憂鬱な午後

          【詩】ひとでなし

          誰にでも優しいということは 誰にも優しくないということ ああこのひとは 他人はおろか 自分さえ どうでもいいのだなと 生まれた瞬間から すべてをあきらめてしまって 無限にひとに優しい 偽善どころか 現実にはいない 善人の塊というか うつろなあなたを 死んでもいいほど 好きになってしまいました あなたみたいに 薄笑いを浮かべながら 絶え間なく自分を傷つけているひと それでいて平気なひと 見たことがなかったから 怖くて でも目が離せなくて あなたはみんなを見ていながら 誰ひとり見

          【詩】ひとでなし

          【詩】性、なんて

          坂の下で 小さくなった 老夫婦とすれ違う いたわりあって この世界を生きている ふたりにも 激しい性愛があったのかなあ、なんて わたしは考えてしまう なんだか変な感じ もう脳内は あなたの唇や舌の感触で いっぱいになっている あの夫婦にも そんなときがあったのかな みんなが あんな奴はやめろって そういうひとを 好きになってしまう気持ち わからないかな きっと つまらないセックスしか したことがないんだろうね かわいそうに、平和なんだね、おめでとう、ご苦労さん わた

          【詩】性、なんて

          【詩】重なる

          あなたはとても繊細で 感受性が鋭いから 何でもお見通しで 私はいつも バラバラに解体されていく あなたの愛撫は行き届いていて 何をされたら喜ぶのか すべて見透かされていて 私はいつも ゆるやかに溶けてしまう 私とあなた あなたと私 境界が消えるときの ゆるやかな記憶 私たちはきょうも からだを重ねる すき だいすき あいしてる 消えることのないあなたのさみしさ 溢れて止まらない私の愛しさ 混じり合って ひとつになって せつなさになる 私たちはせつなさで満たされている

          【詩】重なる