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取り残された者たちの詩

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生きることのせつなさ・かなしさ・わびしさ・やりきれなさについて。
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記事一覧

【詩】天使の涙

わたしは天使の羽根を折る それがあなたへの愛の証 どんなに遠くにいたとしても 異なる宇宙に…

高山京子
2週間前
19

【詩】SとN

雪が降るためには もう少しがんばらないといけない きみと約束したから ぼくができることは た…

高山京子
3週間前
29

【詩】偽善者たち

誰かが死んだときに ペラペラとしゃべる奴の 命は紙切れのごとく 薄っぺらい しばしの間でいい…

高山京子
4週間前
30

【詩】どこかで

かなしいことがあったとき 涙が出なかったら 夕方 ちょっとだけ思いっきり走る 河川敷の公園と…

高山京子
1か月前
49

【詩】メルヘン

美しくて 醜くて 綺麗で 汚くて 優しくて 冷たくて 瀟洒で 野蛮で 開いていて 閉じていて 愛し…

高山京子
1か月前
28

【詩】おっちゃん

きょうも団地に消防車と救急車が来た おっちゃんがまた火の玉を見たのだろう おっちゃんは定期…

高山京子
1か月前
41

【詩】罪と罰

アンナは人妻でした 若いヴロンスキーと恋に落ちました ふたりは幸せでした だっていつも絶望していたから 絶望とは美しい恋です けれども神は許しませんでした 人びとも許しませんでした アンナは死にました 人間界から放逐されました ヴロンスキーは生きていく意味がなくなりました なぜですか 神は人の顔をしています 人は神です 美しい者たちを裁くのは いつも下劣な神々です 下劣な神のもと 人は恋をします そして死にます 魂は永遠に彷徨うばかりで ときには大義を掲げて戦争をします 笑い

【詩】帰宅ラッシュ

これはまた場違いなところに来てしまった 生まれた瞬間に思ったわたし 案の定 この世に居場所…

高山京子
2か月前
32

【詩】におい

匂いと臭いのちがい 何だろうね からだがくさいといじめられた 誰にも言えなかった お母さんに…

高山京子
2か月前
25

【詩】残骸

愛し合うふたりが、離れ離れになったのは、若すぎたからでした、ばらばらになった魂は、荒野を…

高山京子
2か月前
23

【詩】乳腺外来

男 • 女 性別記入欄 • に◯をつける 婦人科 乳腺外来 新しく作った診察券には 無情にもFの…

高山京子
2か月前
29

【詩】鈍い光の午後

快楽という 秘密は 会うたびに 重ねられて それは わたしたちが 遠いむかしに 恋をして…

高山京子
2か月前
43

【詩】季節

来年の五月になったら 常磐線の夜ノ森駅に来てくださいね きっと、きっと 会いに行きます ぼ…

高山京子
2か月前
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【詩】日々

どの駅だったか、気分が悪くなって、トイレの個室で、長いことうずくまっていた、吐いた、しばらくして、何事もなかったように、出勤した、みんなとしゃべり、笑った、お昼を食べて、こっそり吐いた、毎日がそんな感じだった、ふと思い出した、東海道線、横須賀線、湘南新宿ライン、戸塚駅、それでもわたしは、働かなければならなかった、生きなければならなかった、ホームで立ったまま、岩波文庫の、ファウストを読んでいた、わたしはただ、さみしかったのだと思う、そうすることでしか、自分を保てなかった、 みん