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【詩】鈍い光の午後

快楽という 秘密は 会うたびに 重ねられて それは わたしたちが 遠いむかしに 恋をしていたから まったくもって 嘘はなかった そうとしか 考えられないほどに わたしたちの肌は なじんだ いまはただ 新しい性愛を 復習しているにすぎない はずなのに なぜ 
すれ違う愛 報われない愛 満たされない愛 そんな愛を抱えて きょうもあなたは キッチンに立つ 一年 三六五日 ほぼ変わらない 穏やかな時間が 過ぎて行く 私は幸せだ そんなふうに 言い聞かせながら だけどあなたは あきらめきれない 何かを 何を 愛を? 
さみしいのは あなたがいるから 悲しいのも あなたがいるから あなたがいるから わたしはひとりなのです 地上に 投げ出されたまま ずっと 見失われている 存在は ばらばらになって それでも 生きて いつまでも 閉じたまま 
その図書館の 三階からは 深い森が 見えました 十一月の 空は 沈むような 灰色で もう二度と 光は 現れないかも しれない 東京の存在は コンクリートの ビル群などではなく 森の色で わかるのです 窓際の席が いまにも 崩れ落ちそうに 歪んでいる 午後

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