【詩】におい
匂いと臭いのちがい
何だろうね
からだがくさいといじめられた
誰にも言えなかった
お母さんにはとくに言えなかった
だってお母さんも
同じにおいがしたから
かなしみは憎しみに変わった
妹も弟も同じにおい
呪われているみたい
不幸の烙印
家ではいつもどきどきしていた
おとなになって
同じにおいのひとを
好きになった
かなしみに惹かれた
裸で絡みあっていると安心した
同じにおい
微妙にちがうにおい
これで見捨てられないような気がした
馬鹿だったね
やっぱりそれは
暗い影を落とした
においって何だろうね
最近、お腹のなかに
生き物を飼うようになった
コドモ、という名の生き物
毎日せっせと育っていく
わたしの知らないあいだに宿り
その体を棲処とし
身勝手にも
やがて出て行くことが決まっている
わたしもそうだった
あの頃は
何も思い煩うことがなかった
追い出される恐怖も知らないで
においって何だろうね
このコドモは
わたしと同じにおいをしているのだろうか
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