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最新経済研究の半歩先

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#経済学

人的資本家が所得格差を広げる?

人的資本家が所得格差を広げる?

今日は最近のマクロ経済学研究で注目されつつある「人的資本家」という概念について解説し、それによって所得格差が広がっているのか考えていきたいと思います。(一般向けに平たく書いておりますが、最後の章だけ研究者向けに書きました)

人的資本家とはおそらく多くの方が「資本家(Capitalist)」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。端的にいうと、企業に資金を提供している株主です。同じく「人的

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ノーベル経済学賞2021:川口大司「社会問題の因果関係を解明する 自然実験の確立~カード、アングリスト、インベンス」

ノーベル経済学賞2021:川口大司「社会問題の因果関係を解明する 自然実験の確立~カード、アングリスト、インベンス」

このnoteでは、東京大学の川口大司先生に『経済セミナー』2021年12月・22年1月号にご寄稿いただいた、2021年ノーベル経済学賞の解説記事を公開しています! 

受賞者たちの研究成果の紹介はもちろん、彼らが巻き起こした論争、経済学のあらゆる分野にもたらしたインパクトとその意義を語るとともに、川口先生がセンター長を務める東京大学政策評価研究教育センター(CREPE)でのご経験もふまえて、政策現

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「歴史データ×経済学」の可能性(経セミ2022年2・3月号 付録)

「歴史データ×経済学」の可能性(経セミ2022年2・3月号 付録)

このnoteでは、『経済セミナー』2022年2・3月号の特集「『歴史データ×経済学』の可能性」の巻頭鼎談:

の中で、トークの題材となったトピックの関連情報や、その背後にある研究、参考文献や資料、補足情報などをリンク付きで紹介しつつ、ちょっとだけ本号特集の内容を覗いてみたいと思います!

コンピュータの性能向上や、テキストや画像認識技術の発達などなど、技術進歩とともに、歴史的な史料の活用可能性に改

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データ・ビジネスの最前線に迫る!!(渡辺努・辻中仁士編著『入門オルタナティブデータ』、「はしがき」公開)

データ・ビジネスの最前線に迫る!!(渡辺努・辻中仁士編著『入門オルタナティブデータ』、「はしがき」公開)

渡辺努・辻中仁士 [編著] 『入門オルタナティブデータ ―― 経済の今を読み解く』が発売になりました!(2022年2月18日。電子版も配信中です)

コロナ禍を通じて、携帯電話の位置情報に基づいた「人流」や、クレジットカード取引履歴に基づく足元の「消費動向」などなど、新しいタイプのデータを目にする機会がグッと増えました。これまで、人々の社会・経済活動の動向を捉えるデータとしては、政府が集めて公表す

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書評:小倉義明著『地域金融の経済学』 (経セミ2022年2・3月号より)

書評:小倉義明著『地域金融の経済学』 (経セミ2022年2・3月号より)

評者:原田喜美枝(はらだ・きみえ)
中央大学商学部教授

地域金融の現実を受け止め
理論、実証から今後を考える本書は、著者のこれまでの地域金融に関する研究をベースに執筆されている書籍であり、研究者としての長年の考察が随所に生かされている。理論的考察や、数多くの実証分析の紹介、それらの断片を組み合わせ、地域金融という経済活動が経済学的にまとめられている。

日本の生産年齢人口は1995年にピークを迎

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金融規制と危機を理論・実証の両面から(植田健一『金融システムの経済学』より)

金融規制と危機を理論・実証の両面から(植田健一『金融システムの経済学』より)

このnoteでは、東京大学教授の植田健一先生による『金融システムの経済学』の「はしがき」とあわせて、内容を紹介していきます。

本書は、主に戦後の金融システム(金融制度や規制)の歩み、自由化・国際化と経済成長の関係を振り返り、それを読み解くための経済学の理論と実証研究の成果を学びながら解説していくものです。

さらに、そこで学んだ経済学の原理を用いて、金融危機や金融のデジタル化、フィンテック興隆の

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経済学と経営学の交差点(経セミ2022年4・5月号付録)

経済学と経営学の交差点(経セミ2022年4・5月号付録)

新年度最初の『経済セミナー』2022年4・5月号、特集は【「職場」の経済学】です!

いわゆる「日本的経営」の機能不全、長時間労働の是正とワークライフバランス、職場や労働市場における大きなジェンダー格差など、日本の企業・組織や働き方について、これまでさまざまな議論が交わされています。

さらに2020年以降、新型コロナの影響もあり、デジタル化の遅れやテレワークなどの新しい働き方への対応を通じて、問

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書評:佐々木勝著『経済学者が語るスポーツの力』 (経セミ2022年4・5月号より)

書評:佐々木勝著『経済学者が語るスポーツの力』 (経セミ2022年4・5月号より)

評者:久米功一(くめ・こういち)
東洋大学経済学部教授

スポーツとは何か
~その面白さと可能性を語りたくなる書2021年、新型コロナウイルス感染症の拡大により延期されていた東京2020オリンピック・パラリンピックが無観客で開催された。その開催の是非を問われた私たちは、スポーツの役割や機能について否応なく考えさせられた。同年10月に刊行された本書は、その問いに対するさまざまな考え方を提示した、非常

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「再現性危機」とは? どこが問題で、どんな対策が必要か?(経セミ2022年6・7月号付録)

「再現性危機」とは? どこが問題で、どんな対策が必要か?(経セミ2022年6・7月号付録)

『経済セミナー』2022年6・7月号、特集は【経済学と再現性問題】と題してお送りしてます!

「先行研究で得られた科学的な知見が、再現できないかもしれない」。

本特集では、近年、心理学において指摘された「再現性の危機」を契機に、その後さまざまな分野で注目を集めているこの問題にフォーカスしてます。

そして、「これのどこが問題なのだろうか?」という点からじっくりと確認したうえで、「なぜ生じてしまう

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行政データ活用に向けて(新連載「行政データと実証経済学」スタート!)

行政データ活用に向けて(新連載「行政データと実証経済学」スタート!)

『経済セミナー』2022年6・7月号より、新連載=「行政データと実証経済学:東京大学CREPE自治体税務データ活用プロジェクトの実践」がスタートします!!

この連載では、2021年夏にスタートし、現在も継続して取り組まれている、東京大学政策評価研究教育センター(CREPE)による

「EBPM推進のための自治体税務データ活用プロジェクト」

の実践プロセスや、そこで得られたさまざまな成果や、関連

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教育の問題に経済学がどう挑んでいるか、この一冊で学ぶ!(松塚ゆかり『概説 教育経済学』より)

教育の問題に経済学がどう挑んでいるか、この一冊で学ぶ!(松塚ゆかり『概説 教育経済学』より)

一橋大学の松塚ゆかり先生による単著『概説 教育経済学』が発売になりました!!(2022年8月刊) 

松塚先生は、コロンビア大学でPh.D.(教育経済学)を取得後、コロンビア大学教育経済学研究所研究員、一橋大学大学教育研究開発センター准教授等を経て、2018年から一橋大学森有礼高等教育国際流動化機構教授を務る教育経済学の専門家で、以前に『経セミ』に以下の記事をご寄稿いただきました。

この度、一橋

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政策現場にコロナ分析を提供し続ける経済学者の軌跡!

政策現場にコロナ分析を提供し続ける経済学者の軌跡!

この note では、仲田泰祐・藤井大輔『コロナ危機、経済学者の挑戦――感染症対策と社会活動の両立をめざして』の内容紹介と、仲田先生による、二人のプロジェクトへの想いが込められた本書の「はしがき」をお届けします。

なお本書は、2023年度・第66回 日経・経済図書文化賞の「総評」(審査委員長である吉川洋先生ご執筆)にて、「本書は、経済学がどのように社会貢献できるかを示す貴重な記録だ」との評価をい

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