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福祉の仕事

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2023年7月の記事一覧

選択と決断③

選択と決断③

利用者Aさんの体験入所が始まり
そのままおそらく別れがないまま退所だろうと言われていた。

 
Aさんの体験入所初日
何人かの利用者から、「今日Aさんはどうしたの?」と聞かれた。

Aさんは皆勤賞だった。
施設を休んだことは今までに一回も、なかった。

「おうちの都合でお休みみたいだよ。」

私はシレッと言った。

 
今まで福祉職として働いてきて
こういった類のケースはあった。

 
別れの言葉

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選択と決断②

選択と決断②

年々不穏になりやすく、攻撃的な利用者Aさんを受け入れる入所施設探しは難航し
このまましばらくは現状維持なのだと私は思っていた。

そんな中、とある施設で体験利用をしないかという話が出た。

 
その入所施設は強度行動障害の方専用の施設らしい。
強度行動障害とは、攻撃的な行動の頻度が高かったり、不眠の状態も服薬では改善が難しい等の特徴がある。

入居者である障害者が元職員に次々に襲われた
殺傷事件や

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選択と決断①

選択と決断①

私は障害者施設で働いている。

以前の職場の障害者施設では10年以上働いていて
その後退職し、今の職場へ転職した。
転職先も障害者施設である。

 
私が転職した頃から
利用者Aさんという方がその施設にはいた。

正確に言えば
Aさんがいる施設に私が来たのだ。
Aさんはその施設を長く使っている利用者だった。

 
「おはよー。」

その人は私に必ず挨拶する。
どこにいても、だ。
まず私を探して挨拶

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七夕のリアル

七夕のリアル

「ナタってなんですか?」

利用者が言う。

 
「ナタは木を切る時に使うものだよ。」

リーダーは説明した。

 
ホワイトボードには“七夕”と書いてあり
私は声を押し殺して笑った。

惜しい。
似て非なるものだ。

 
利用者がそう言ったから
今年の七夕はナタ記念日。

 
 
今年の七夕は思いのほか忙しかった。

七夕にちなんだ予定、利用者と作る七夕飾りの担当、そして七夕の日に販売担当とバタ

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目薬のこだわり

目薬のこだわり

目薬をつける利用者がいる。

その利用者は目薬をつける際に毎回私を指名する。
何故かは私にも分からないが
私の勤務日は必ず私を指名する。

 
私はそれが嬉しかった。
好かれているようで嬉しかった。
私じゃなきゃダメだということが嬉しかった。

私がいなきゃいないで休みの日は他の職員を頼れるようだった。
全く融通がきかないわけではなかった。

 
リーダーからは時折言われた。
色々な職員ができた方

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ライブTシャツを着た福祉職員

ライブTシャツを着た福祉職員

利用者が新しい服を着てきたので話題に出した。

 
保護者「真咲さんもいつもお洒落ですよ。移動支援の方に、“〇〇(勤務先施設)にライブが好きでライブTシャツをよく着る職員さんがいる”って話したら、皆さんにすぐ伝わりましたもの。」

どうやら私はライブTシャツの人らしい。

 
確かに仕事着の9割以上はライブTシャツだ。
夏場はライブタオルも首に巻いている。
通勤バッグにはアーティストのキーホルダー

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行ったコンサート、行けなかったピアノ発表会

行ったコンサート、行けなかったピアノ発表会

私の職場の利用者は
何人かが障害者の音楽教室に通っている。

楽器を演奏したりするらしい。

 
その音楽教室が創立周年記念で大々的にコンサートをすることになった。
コロナ禍により、ずっとできなかったらしい。

利用者からは練習に励んでいると話を聞いていた。

 
コンサートのお知らせをもらった時
その日は施設営業日だから希望者で見に行かないかという話になり
素敵な提案だと私は思った。

 
ほと

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利用者とおばあちゃん

利用者とおばあちゃん

歩いて施設に通っている利用者がいる。

だが、今年の夏は暑い。
心地良い風が吹く春や秋ならまだしも
夏の熱風の中歩くのは大変だということで
期間限定で送迎希望の話があった。

 
初日はちょうど私が送迎担当だった。

待ち合わせ場所に立っているだろうか。
少し緊張しながら指定場所に行くと
遠くから歩く影が二つ見えた。
利用者とその祖母だった。

 
「わざわざすみません。これからよろしくお願いしま

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施設利用者の予備の着替え

施設利用者の予備の着替え

施設に予備の服はあるが
利用者は全員予備の服や下着を持参している。

 
思えば前の職場の施設は予備の服を持ってくる方よりも持ってきていない方の方が多く
たまにトイレで失敗して下着が汚れた時が大変だった。

予備はサイズの問題もあるし(全サイズを常備していなかった)、貸したまま返ってこないこともあった。

あの頃は予備の服を持ってきても置き場がなかった。
新しく広い場所に移転してもなお、そんなスペ

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ベルトと紐で遊ぶ利用者

ベルトと紐で遊ぶ利用者

春、パーカーを着てベルトをつけて仕事をしていると
利用者が私のパーカーの紐で遊んだり、ベルトを外そうとしたり、ベルトで遊んだりした。

 
コラコラ

なんて注意しながらも私はニヤけている。
かわいい利用者に遊ばれるものを私が持っていることが嬉しいのだ。

 
よく私のカバンも遊び道具にされる。
キーホルダーを揺らして音を鳴らして遊んでいる。

 
保護者はそれをよく謝るが
私からしたら謝る必要は

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気が緩む金曜日

気が緩む金曜日

某利用者が日中不安定な様子だったので
送迎の時に保護者に伝えた。

 
保護者は迷惑をかけたのではないかと不安がっていたし
当の本人も不安がっていたが
安心させようと、色々と話をする内に雑談になった。

「あそこの職員さんはみんな仲がよいわよね。それはよく伝わってくるわ。利用者にも伝わって、それでいい雰囲気なのだと思う。」

「真咲さんが働きやすい環境でよかったわ。うちの子は真咲さん好きだから、こ

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生理の謎

生理の謎

転職してからずっと周りに聞けずにいることがある。

それは、女性職員がナプキンをどうしているかということだ。

 
生理時、私は三角コーナーにナプキンを捨てるわけだが
利用者のものはまだしも、職員のものは見かけない気がする。

 
タンポンなのだろうか。
持ち帰っているのだろうか。
私が気づかないだけで、捨てているのだろうか。

 
謎は深まるが
私は未だに聞けずにいる。

 
ナプキンを持ってト

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GHを利用する人に課題がないわけではない

GHを利用する人に課題がないわけではない

最近は福祉施設が乱立している。

以前は街中から離れたところに社会福祉法人の大きな施設があったくらいだが
今は民間の企業が経営する小さな施設が乱立している。

 
福祉施設は補助金により儲かるイメージがあるからだろうか。

 
私が特に気になるのはグループホーム(GH)の求人だ。

手がかからない利用者相手。
簡単な調理のみ(レシピと食材が届くので簡単な朝食や夕食を作る)。
夜勤なし。
人間関係が

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話し終わったら拍手する利用者

話し終わったら拍手する利用者

朝の会でイベントについて利用者がみんなの前で発表した。

今年度から出店販売に携わった利用者がイベントの売り上げや何が売れたかを話すようになった。

 
「真咲さんは付け足すことがありますか?」

新施設長が私に振る。
思いがけず振られて驚きつつ
イベントについて気づいた点を伝えた。私も販売で出勤した日だった。

 
私が話し終わると
それまで私の体に寄りかかって甘えていた利用者が背筋を伸ばし、拍

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