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七夕のリアル

「ナタってなんですか?」

利用者が言う。

 
「ナタは木を切る時に使うものだよ。」

リーダーは説明した。

 
ホワイトボードには“七夕”と書いてあり
私は声を押し殺して笑った。

惜しい。
似て非なるものだ。

 
利用者がそう言ったから
今年の七夕はナタ記念日。

 
 
今年の七夕は思いのほか忙しかった。

七夕にちなんだ予定、利用者と作る七夕飾りの担当、そして七夕の日に販売担当とバタバタした。
公私共に七夕尽くしだ。

 
七夕の日当日は某場所で販売だった。

 
そこでの販売は私は二回目なのだが
前回はコロナ禍ということもあり
出店数は少なかったし、ドタキャンする施設もあった。

だが今回はコロナが第5類になったことで
出店数は当時の二倍だったし
初めて出店する施設もちらほらあった。
また新たな発見がありそうな予感がした。

 
その日の販売のために新製品を用意し、ディスプレイも用意し
その他の仕事も忙しない中、あっという間に6日になった。

あまりの仕事の忙しさに仕事を一人では抱えきれず
私は周りの職員に仕事を手伝ってほしいと頼んだし
周りは快く承諾してくれた。ありがたかった。

 
7月7日当日。
その日は早めに利用者の送迎に行き、そのまま販売場所まで私が連れて行くことになっていた。

遅れてはいけない、と早めに家を出たら
思いのほか早く職場に着いた。

 
今日は一番早く職場に着いたかなと思ったが
新施設長とリーダーがもうすでに仕事をしていた。
一体何時から仕事をしているのだろうか。普段残業もしているのに。

準備をし、出発する。
早めに出発したが道が混んでいて焦った。
一人目は迎え時間が3分遅れたが
他の利用者の迎えで調整ができ
販売場所には余裕をもって着いた。

 
心配だった駐車場にも無事停められてよかった。
第一駐車場に停められないと、駐車場はかなり遠くなる。

 
荷物が多い。
みんなで手分けして一気に運んだ。

その時たまたま他施設の仲の良い方が別件の仕事で来ていて
ササッと荷物運びを手伝ってくれた。
ありがたかった。

 
販売エリアに行くと、既にいくつかの施設が来ていたので挨拶をした。

早速準備に取りかかった。

 
思いのほか、販売場所が狭くて設置がやりにくい。
更に規制が入り、予定のディスプレイとは大幅に変更を余儀なくされた。

 
それなら、こうだ。

転職して三年目。
それなりに販売の場数を踏んでいる。
思ったより販売場所が狭いのは今回が初めてではない。

 
即興で思いついたディスプレイで形を整えると
あとは利用者と一気に飾りづけに入った。

 
その日は最高気温35度。晴れ。
クーラーがきいた室内だったが
荷物搬入と準備だけで汗が滴り落ちた。

  
時間になり、販売開始となったが
その日は販売場所がよくなかった。

エリアの端だったため
人が来ても端まで来ないのだ。

 
雑貨より食べ物の方がウケがよく
私達のように雑貨販売の施設は苦戦を強いられた。

 
とはいえ
雑貨は一つあたりの単価が高いため、食べ物販売の施設に人だかりができていたとしても
トータル売上は雑貨販売店のがあるというのはよくあることなので
人だかりだけでは売上は比較できなかったりもする。

 
例えばだが
その日の出店施設の販売物で一番安いものが100円、一番高いもので1万円で売られていた。

販売開始してから一時間くらいした時
新施設長と同僚が利用者と共に遊びに来がてら様子を見に来た。

売れ行きがあまり芳しくないことや販売場所があまりよくないことを伝えた。

 
利用者や同僚の姿を見て気が緩んだのは利用者だけではなく、私も同じだった。
今日は朝早い出発だったため
みんなに会えていなかった。

様子を見てきていいと言われ、新施設長と店番を交換し、利用者とイベント会場を練り歩いた。
その日は販売職員が私だけだったので、周りの様子を見に行けていなかったのだ。

 
他の施設のディスプレイ、販売物、新製品をチェックしつつ
挨拶しつつ
私は新規施設にも挨拶をした。新規施設がどんなことをしているのか気になったのだ。

 
私の職場は人見知りな職員が多いが、私はしない。
話しかけ、お互いの情報交換をし、刺激を受け、切磋琢磨をする。
それがよりよい。

 
新施設長に報告をし、新施設長と再び販売担当を交換をした。
新施設長らは再び施設に戻っていった。

 
新施設長らが去った後
それなりに人が来て売れた時間帯と暇な時間帯とが交互に来た。
午前中の売上はそこそこといったところだった。

 
そのそこそこの売上には
保護者や知人が来店し、買ってくれた分も含まれていた為、一般からのウケというと、なんとも微妙なところだった。

 
出店施設が多ければ多いほど
売上は分散する。
他の施設はどのくらいの売上かが気になった。

 
やがて午後になり
別の利用者と同僚がやってきた。

体力のない利用者は半日のみ販売で交代となる。
数人がお昼で施設に戻り、逆に早お昼を食べた利用者と同僚が午後にやってきた。

なお、私と体力のある利用者はガッツリ一日販売担当である。

 
午後一で来た同僚は初めての販売だった為
販売備品ややり方を説明した。

お客様の流れや説明などの関係で
私のお昼は予定より大幅に遅れることになった。
ちゃちゃっと食べて、同僚のフォローに入る。

 
午後また他の職員と利用者が遊びに来た。
普段は販売に入る職員も利用者も限られているから
遊びに行くという名目で販売に触れられるのはいいことだ。

  
やがて販売デビューした同僚のご家族や利用者の保護者も見えて
和気藹々としたムードだった。

  
 
だが
その後思いがけない出来事があった。

 
一日分の疲れがドッと来た。
新施設長に電話し、戻ってから詳細を更に報告し
前施設長や事務長にも戻ってから報告し
他の正職員にも伝えるような大きな出来事だった。

 
同僚は「私ならブチ切れる。」と言っていたし
「それは疲れたね。」と労われた。

私や販売担当の同僚の気持ちや苦労が伝わったのは救いだった。

 
ドッと疲れた中、大量の荷物を車に運んだ。
他施設はもう帰っていた。

 
朝早かったこともあり、ドッと疲れたが
売上金を確認したら想像以上だったのでその点はよかった。

 
「今年、七夕に何を願う?」

ある人に聞かれた。

 
私の願いは彦星に出会うことではない。
厄介な方々と恨まれず後腐れなく距離を置けること。

今年はそれが一番の願いとなった。

 
私は職場に恵まれた。
しみじみ思った。

 
愚痴一つこぼさず、朝一で仕事をしていた新施設長とリーダーを思う。

引き続き、この職場で頑張ろう。


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