「不老不死」を現代的に考えてみる「世界不死計画」

2024年2月12日 07:30

＜文学（５０歩目）＞
一緒に「不老不死」を考えてみる。

世界不死計画
フレデリック・ベグベデ (著), 中村佳子 (翻訳)
河出書房新社

「５０歩目」はフランスのフレデリック・ベグベデさんの作品です。

フレデリック・ベグベデさんは、同じくフランスのミシェル・ウエルベックさんの友人であること。そして、本を手に取った際に同い年であったことから読んでみました。

不老不死の身体を手に入れる為に、医学や生物学の権威を尋ね世界中を旅する物語です。

これだけ読んだ際には、亡くなられた立花隆さんが出された「臨死体験」「死はこわくない」の様な書籍ではないか？と感じました。アプローチは、立花隆さんとフレデリック・ベグベデさんは同じでした。
しかし、表現方法は大きく異なる。

それは、取材された対象の医学者・生物学者等々が異なるからともいえますが、誰もが避けられない「死」の受け入れ方が異なるからだと感じました。

ベグベデさんのベースの欲求は愛する二人の娘たちとずっと一緒にいたいから。

その為には、「僕らの時代から、「死」からおさばらだ！」という動機に突き動かされている。

仕事等、全てをなげうって、科学者のもとを訪れ、しつこくインタビューを繰り返す。

この過程で、奥さんが見かねて「今、一緒にいるじゃない！」との一言。
これが効いています。

サイエンス小説であり、人間の感情をありのままに出した小説。
その中に、とても大切なことが描かれている。

そして、2018年当時の科学の最先端がわかりやすく書かれていて、ベグベデさんの文章のうまさから、「こういうのを今後も続けて欲しい」と思いました。

また、翻訳者の中村佳子さん。同世代の方なのですが、難しい題材の仏語作品をとても美しく翻訳してくれる。作者と翻訳者のレベルの高さを感じました。

でもね、「やっぱり娘たちとずっと一緒にいたい」と言うのは私も同感です。

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