ひつじのエッセイ

心に羽をかけよう 毎日がふっと軽くなるような 小さくかがやくような そんな言葉を探して…

ひつじのエッセイ

心に羽をかけよう 毎日がふっと軽くなるような 小さくかがやくような そんな言葉を探して https://make-excuses.com/ にも遊びに来て下さい。

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    考える前に、お腹を満たそう。 考える前に、お茶を呑もう。

  • 『葬送のフリーレン』考察

    『葬送のフリーレン』考察記事を、エピソード毎にまとめています。 考察の最新はフェルン誕生日会までです(2024年3月1日現在)

記事一覧

"私" を引き上げるコツ

ティラミスは層になっている。エスプレッソの染み込んだビスケットの上にマスカルポーネチーズクリーム、それを2、3層重ねて最後にココアパウダーを振りかける。この完成度…

人生を変えるものとしての言葉

言葉と人生の関係図書館へ行くと本棚から本棚へと何気なく歩くことにしている。ふと目に留まった本を開いて、意識に飛び込んでくる言葉を掬い上げては本を棚に戻す。そん…

美と月と恋 〜梶井基次郎『 K の昇天』考察〜

詩や短歌が好きだ。素敵な詩歌は、読んでいると「ああ、きれいだなあ」「美しいなあ」と感じる。 そういった美を感じると同時に疑問が湧くことがある。というのは、「この…

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先生、ビジネススマイルはやめてください

と言われたことがある。 私は大学卒業後に中学校の教員になった。仕事がさばききれなくて鬱になったこともある。 そんなとき、 「幸せだから笑顔になるんじゃなくて、笑…

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スプーンでヒゲを剃る

2024年1月14日放送のサザエさんのお話。 お父さんやおじいちゃんがヒゲを剃っているのを見てタラちゃんが「僕もヒゲを剃りたいです」と言った。 「タラちゃんはヒゲがな…

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ペットボトルという言語

教員をやっていたときに、発達障害の子どもに対する指導についてセミナーを受けたことがある。そのセミナーで一つのロールプレイをした。 (今回は記憶の話をたどるので出…

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読書オンチの治し方

と母は言った。翔太は私の本名だ。私は哲学が好きで、なんのきっかけだったか、ソクラテスの対話編の話を退屈しのぎにしていたのだった。 本を読んでも全然内容を覚えられ…

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歩くスピードを合わせてくれる君へ

ノットイコールの世界スタスタ向こうへ行ってしまう人もいれば、その一歩一歩を大切に歩く人がいる。世の中的には「スタスタ」行ける人が有利なのかもしれない。しかし、…

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『葬送のフリーレン』の考察記事がおかげさまで好評です。

まだ読んでいない方はぜひ立ち寄って、スキ&コメントしてください。

https://note.com/common_sense/n/n3d126ebebdc5

一汁一菜を、一生懸命に

不幸になる3つのステップ寒い、ひもじい、死にたい。不幸はこの3つのステップでやってくるらしい。 これは岡田斗司夫の動画で見た、人間が不幸になる順番についての話だ…

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クヴァールは後悔するか?~『葬送のフリーレン』考察~

「くよくよと後悔をせずに現在を生きよう」というのは、ある意味で人間の強みを捨てることではないだろうか。 それはどのような意味でか。「後悔をする」という行為は言葉…

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人生から学ぶ

思い返すだけで「うわーーーーっ」となってしまうような失敗があった。恥ずかしいこと、後ろめたいこと、迷惑をかけたことが、黒々と渦巻いている感じがしていた。 しかし…

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まあ、お茶でも

割と疲れやすいタイプである。 仕事から退勤すると、ひたすら寝そべってYouTubeやアマプラばかり観ていた。仕事が終わってから友達と飲みに行く体力がある人が羨ましいな…

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プラトン『パイドン』を読む~未来永劫、言葉を愛せ~

魂の不死を論証する死刑執行日の、幸せそうなソクラテス 『パイドン』の副題は「魂について」である。 ソクラテスは紀元前399年に、「青年を腐敗させた罪」によって死刑…

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愛することが苦手な人の愛~『葬送のフリーレン』考察~

「愛」とか「愛する」とか、そんな言葉を大真面目に語るのは何だか気恥ずかしい。 それに正直、愛に、あるいは人を愛する能力みたいなものに自信があるわけでもない。私の…

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青空の底を探るたくらみ

一つ実験をしてみよう。 ペンを一つ持って欲しい。 えんぴつでも構わない。 持ったならペン先を青空に向けてみよう。 ペンは決まった長さを超えて、どこまでもどこまで…

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"私" を引き上げるコツ

"私" を引き上げるコツ

ティラミスは層になっている。エスプレッソの染み込んだビスケットの上にマスカルポーネチーズクリーム、それを2、3層重ねて最後にココアパウダーを振りかける。この完成度の高いスイーツが失敗の賜物であると聞くと驚くかもしれない。

ティラミスを発明したシェフは、本当はバニラアイスクリームを作りたかったらしい。ところが作っている途中、卵と砂糖の入ったボウルに誤ってマスカルポーネチーズを落としてしまった。

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人生を変えるものとしての言葉

人生を変えるものとしての言葉


言葉と人生の関係図書館へ行くと本棚から本棚へと何気なく歩くことにしている。ふと目に留まった本を開いて、意識に飛び込んでくる言葉を掬い上げては本を棚に戻す。そんなことでふとやってくるインスピレーションもあるからだ。

言葉が図書館には溢れている。筆者の彼女は、そういう膨大な情報量を目の前にすると「ウッとする」と言っていたが、確かに、全部を受け止めようとすればそうなるかもしれない。

思えば何百何千

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美と月と恋 〜梶井基次郎『 K の昇天』考察〜

美と月と恋 〜梶井基次郎『 K の昇天』考察〜

詩や短歌が好きだ。素敵な詩歌は、読んでいると「ああ、きれいだなあ」「美しいなあ」と感じる。

そういった美を感じると同時に疑問が湧くことがある。というのは、「この〈美しさ〉は一体何なのだろうか?」ということだ。

この〈美しさ〉はどこから来たのだろう。この〈感じ〉はどういえばいいのだろう。つやめいて、美しいことは分かっている。しかし、この気持ちは一体なんなのかと、モヤモヤする。

そんな疑問が特に

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先生、ビジネススマイルはやめてください

先生、ビジネススマイルはやめてください

と言われたことがある。

私は大学卒業後に中学校の教員になった。仕事がさばききれなくて鬱になったこともある。

そんなとき、

「幸せだから笑顔になるんじゃなくて、笑顔になるから幸せなんだ」

ということをどこかの本で読んだのだ(その手の本を読んでいたあたり、そのときの私の落ち込み具合を察していただきたい)。

これは一面本当だと、今でも思う。生理機能は心の持ちように影響を与える。胸を張りながら落

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スプーンでヒゲを剃る

スプーンでヒゲを剃る

2024年1月14日放送のサザエさんのお話。

お父さんやおじいちゃんがヒゲを剃っているのを見てタラちゃんが「僕もヒゲを剃りたいです」と言った。

「タラちゃんはヒゲがないでしょう、剃らなくてもいいのよ」

とサザエは言った。

それでも、どうしてもヒゲが剃りたいタラちゃん。その様子を見ていたマスオさんは、あるアイデアが閃いた。

「タラちゃん、これで一緒にヒゲを剃ろうか」

そう言って持ってきた

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ペットボトルという言語

ペットボトルという言語

教員をやっていたときに、発達障害の子どもに対する指導についてセミナーを受けたことがある。そのセミナーで一つのロールプレイをした。

(今回は記憶の話をたどるので出典がない。あくまで、遠い記憶の出来事に対する考察だ。)

内容は単純だ。のどが渇いているのでペットボトルに入っているお茶を飲む、というもの。「簡単ですよね?」と講師の方は言う。

「でも簡単というのは大人の目線からであって、まだ握力がつい

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読書オンチの治し方

読書オンチの治し方

と母は言った。翔太は私の本名だ。私は哲学が好きで、なんのきっかけだったか、ソクラテスの対話編の話を退屈しのぎにしていたのだった。

本を読んでも全然内容を覚えられない

というのは、あまり気分のいいものではないだろう。「私って頭悪いのかしら」と思って自信を失ってしまう人もいるかもしれない。

しかし、そんな風に思わないでほしい、というのが私の願いだ。これは能力の問題ではない。方法の問題である。

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歩くスピードを合わせてくれる君へ

歩くスピードを合わせてくれる君へ


ノットイコールの世界スタスタ向こうへ行ってしまう人もいれば、その一歩一歩を大切に歩く人がいる。世の中的には「スタスタ」行ける人が有利なのかもしれない。しかし、そんなことはきっと、どうでもいいのだろう。

ペラペラと話せる人がいれば、いちいちどもって、「えっと」とか言いながら、ごもごもと話す人もいる。私はどちらかと言えば後者だ。言いたい気持ちにたどりつくまで遠回りをする。何かと近道が優遇される世界

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『葬送のフリーレン』の考察記事がおかげさまで好評です。

まだ読んでいない方はぜひ立ち寄って、スキ&コメントしてください。

https://note.com/common_sense/n/n3d126ebebdc5

一汁一菜を、一生懸命に

一汁一菜を、一生懸命に

不幸になる3つのステップ寒い、ひもじい、死にたい。不幸はこの3つのステップでやってくるらしい。

これは岡田斗司夫の動画で見た、人間が不幸になる順番についての話だ。岡田斗司夫は『じゃりン子チエ』の中の1シーンを取り上げて、「悩みに殺されない為の自衛術」を提案している。(動画URLは下記へ)

『じゃりン子チエ』の漫画に出てくる、寒空の下で人のためにラーメンを作っていた店主は、人生を悲観して死のうと

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クヴァールは後悔するか?~『葬送のフリーレン』考察~

クヴァールは後悔するか?~『葬送のフリーレン』考察~

「くよくよと後悔をせずに現在を生きよう」というのは、ある意味で人間の強みを捨てることではないだろうか。

それはどのような意味でか。「後悔をする」という行為は言葉を操る人間にしかできない優越性である、という意味である。

猫は後悔するだろうか?

そんなユニークな問いを立てた人がいる。論理学者の野矢茂樹は『語りえぬものを語る』(講談社, 2020)で次のように疑問を提起した。

私たちが何かを後悔

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人生から学ぶ

人生から学ぶ

思い返すだけで「うわーーーーっ」となってしまうような失敗があった。恥ずかしいこと、後ろめたいこと、迷惑をかけたことが、黒々と渦巻いている感じがしていた。

しかし、そんな黒いところさえ、自分が自分の意志で選択する態度によって学びになるのだと教えてくれる本がある。ポール・シーリィ著『「潜在能力」であらゆる問題が解決できる』だ。

「うわー、そんな胡散臭そうな本を読んでるの?」

と言われてもしょうが

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まあ、お茶でも

まあ、お茶でも

割と疲れやすいタイプである。

仕事から退勤すると、ひたすら寝そべってYouTubeやアマプラばかり観ていた。仕事が終わってから友達と飲みに行く体力がある人が羨ましいなあと、思っていたのだ。

マツコが「ストレスは人間関係でしょ」と言っていたのを思い出す(たしかそんなようなことを言っていた気がする)。

人と話すときは、お互いに何らかの思惑があるのだと思う。相手の思惑を考えてみたり、自分の思惑のつ

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プラトン『パイドン』を読む~未来永劫、言葉を愛せ~

プラトン『パイドン』を読む~未来永劫、言葉を愛せ~


魂の不死を論証する死刑執行日の、幸せそうなソクラテス

『パイドン』の副題は「魂について」である。

ソクラテスは紀元前399年に、「青年を腐敗させた罪」によって死刑が決定した。パイドン、というのは、ソクラテスの弟子のうちの一人で、死刑が執行される正にその日にソクラテスの最期を見届けた人である。物語はパイドンが、どんなことがソクラテスとその弟子たちによって議論されたかを伝達する、という形式で進ん

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愛することが苦手な人の愛~『葬送のフリーレン』考察~

愛することが苦手な人の愛~『葬送のフリーレン』考察~

「愛」とか「愛する」とか、そんな言葉を大真面目に語るのは何だか気恥ずかしい。

それに正直、愛に、あるいは人を愛する能力みたいなものに自信があるわけでもない。私の関心は自己中心なのがデフォルトだし、きっと、程度の差こそあれ、他の人だってそうだろうと思っている。しかし、考えてみればみるほどよく分からない。

愛って一体何なのだろうか。

いや、これは、本当に恥ずかしい問いかけをしてしまった。

ただ

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青空の底を探るたくらみ

青空の底を探るたくらみ

一つ実験をしてみよう。

ペンを一つ持って欲しい。
えんぴつでも構わない。

持ったならペン先を青空に向けてみよう。

ペンは決まった長さを超えて、どこまでもどこまでも青空に溶けていく。

人は何かにつけて空を仰いできた。

青空は人類の歴史が美しく眠っている場所である。

その底には英知が佇んでいる。

空に線が伸びていくと、透明な線を伝って未来がこちらに流れてくる。それは一体、どのような感じだ

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