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女風料理人リウ、恥ずかしながら童貞です 「第1話」クレオパトラの夢 1
あらすじ
手越リウは高校時代に男性機能を失ったが、反比例するように女性扱いが上手くなる。その能力を使って専門学校でフランス料理を学びつつ女風としてフランス留学と将来の開業資金を貯めている。卒業後フリーの女風セラピストとして独立、性感マッサージと得意のフレンチで、世の疲れた女性達を癒し、いつの日か自分の男性機能を復活させる女性が現れることことを願いつつ日夜戦い続けている。
男性機能がなくなると
キッシュが冷たくなるまえに【第60話】 大至急でカルボラーナを
ミカエルの駐車場に入るとほとんどが埋まっていて、一番奥に一台だけの空きを見つけてプジョーを滑り込ませると、ダッシュボードのオレンジ色に光るデジタル時計は20時ちょうどを示していた。運転席からミカエルの窓越しに見える店内には、8割がた座席が埋まっているようで、ミカさんが忙しそうに速足で動いているのが見えた。本来はミカさんの娘さんの明日香ちゃんがいて三人態勢でお店を回しているのだが、今は交通事
【第58話】キッシュが冷たくなるまえに (朝のモノローグ)
早朝の国道をひとり車を走らせている。眠れない朝にすることと言えば、10代20代ならばジョギングで汗をかいてシャワーを浴びてすっきりなのだろうが、さすがに30を超えるとなかなか運動する気力も失せて、つい車に乗ってしまう。天気は晴れ、湿度は高くなく気持ちのいい朝だ。海沿いの道を窓を開けて流れ込む風は、潮の香がしてやさしく僕の前髪を揺らしてリアシートに抜けてゆく。時折見かけるコンビニの配送車と、老人が
もっとみる【第56話】キッシュが冷たくなるまえに
「おっ、帰ってたんだ。試作はうまくいったの?」
引き戸を開けて姉さんがキッチンに入ってきた。テーブルの上の芋焼酎を見て、「私もいただこうかしら」と言ってグラスを戸棚から出すと、冷蔵庫から氷を出してグラスに入れてテーブルの上に置いた。父さんが芋焼酎を注いで、ペットボトルに残った炭酸水を残らずグラスに注ぎ込むと、ちょうどグラスにすりきれいっぱいまで満たされて、表面では炭酸の泡がシュワシュワ音を立て