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桜漬けの季節



「高校生」の肩書きが無くなったら
身を焦がしたあなたに気持ちを伝えよう、と。
何が哀しいって言葉遊びみたいな三年間
結末に名前を呼び間違えられたことよ
表紙のつもりが教科書の一頁でお別れ
『あの人の代わりはいない』
『好きに変わりはない』
だけど、顔が思い出せないの
オリジナルはとうに加工されていた。
《昼想:夜夢》

職種サジェスト『やめとけ』『きつい』
幸せを願われてばかりいる。
着こなすスーツ、継続購入した定期券
改札付近で名残惜しそうにする
そこのふたりに本当の
「終電」が来ませんように。
なお、乗り換えの案内はできない
《エキストラ》

振り返れば引っ越しだらけ
地元なし転校生として育った
成れの果てがワンルームに双子の段ボール
新品なのに必ず止まる時計にも慣れる
しかしどうもおかしい
住み始めるとその針が動き出した
初めてのチク、タク、と同居
ホラー?ミステリー?ファンタジー?
……これから自分はどうなるのだろう
《秒、読み》

初心者マークを見やすい位置につけた
数曲で収まる人生プレイリスト
貯めたポイントは使い切ってアウトドア
深緑、キャンプの道具だけ揃えてどこへ行く
道に迷ってナビゲーション頼り、毎日が旅
早くもスピーカー壊れて0か100の
駐車場フェスティバル2024
《高鳴り流しっぱなし》


花曇りの散歩、あそこも開店休業
いつぞやの春、餡パンを娘にあげて桜の塩漬けを食べた、即興で歌う笑顔の親子、揺れるブランコと幻影

誰よりも小さく、こちらが帰宅すると喜んで駆け寄ってくる、ランドセルが届いた入学おめでとう、待ち受け画面は今でもプリクラ、連絡を取る為にこのスマートフォンがあって、無断外泊した夜は心配のあまり眠れなかった。

ーー見返りなど求めない
ただただ、
愛する君が生きていればいい
《或る父親のアルバム》


★作者も新生活です。





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