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#イギリス生活

エディンバラ暮らし|巡るキャロットケーキ

エディンバラ暮らし|巡るキャロットケーキ

後悔の残る旅はきっと良い旅だ。

2018/12|はじまりのキャロットケーキ

5年前の年の瀬、母と二人でイングランドにいた。

社会人3年目になった私からの「親孝行」旅のつもりだったけど、思い返せばあれはむしろ、私の好きな国についてきてくれた母からの「子孝行」旅だった。

あのとき、小さなベーカリーでどでかいキャロットケーキを見つけた。
茶色の生地に分厚いフロスティングがかかった、見るからに重た

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絵日記|雨の日の結婚式、エディンバラ市役所にて。

絵日記|雨の日の結婚式、エディンバラ市役所にて。

エディンバラのMorningsideで、なんとかという教会が毎週木曜日に開く無料の英会話教室に少しのあいだ通っていた。
そこで出会った女の子と仲良くなり、彼女のパートナーや友人も交えて、ケイリー(スコットランドのダンス)や8月のフリンジフェスティバルに何度か一緒に出かけた。たまに遊ぶ程度だったけど、それでもその子が中国に一時帰国したとき、急に寂しい気持ちになったのを思い出す。

そんな彼女がイギリ

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エディンバラ暮らし|犬にやさしい社会

エディンバラ暮らし|犬にやさしい社会

ある日、ザ・メドーという、その名の通り芝生が広がる大きな公園のそばのカフェで、紅茶とスコーンのクリームティーを決め込んでいたときのこと。隣の席に老紳士と耳の垂れたおしゃれな犬がやってきた。

どう見ても介助犬ではないし、ここはドッグカフェというわけでもない。

静かにびっくり仰天していると、ひとりと一匹はあまりにも慣れた感じで、片方は新聞を広げ、片方はテーブルの下に身を伏せた。老紳士は私と同じセッ

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エディンバラ暮らし|チャリティショップのある街

エディンバラ暮らし|チャリティショップのある街

ある日、チャリティショップに救われる

夏の終わり、日本への帰国を控え、私は困っていた。持ち帰る予定の荷物がスーツケースに入りきらない。冬までの滞在予定を大幅に短縮したというのに、たった数ヶ月でいつの間に物が増えたのか?
(いやあなた、そりゃそうでしょうよ。という記事はこちら)

元々、帰国するときには処分する予定で持ってきた服や生活用品がある。別送品として日本に送るにも、手間とコストの割に合わな

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エディンバラ暮らし|物欲は希望だ

エディンバラ暮らし|物欲は希望だ

来た時はミニマルだったのに、数ヶ月の滞在で宝物が増えた話。

英国初日:リュックサックとスーツケースと私

今年の5月、冬が来るまでは英国で過ごそうと、リュックサックと大小のスーツケース2つを持って私はヒースロー空港に降り立った。

リュックサックにはPCやビザの書類、カメラ、イヤホン、Kindle、サングラスやアクセサリー類、もらったプレゼントなど失くしたくないものを。大きなスーツケースにはこの

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エディンバラ暮らし|家とお金と、あるイギリス人の庭

エディンバラ暮らし|家とお金と、あるイギリス人の庭

20代のフラットメイトや60代の夫婦と一緒に過ごして考えた豊かさの話。

フラットを追い出される

「この家、8月末に退去しなきゃいけなくなった」
7月のある日、イギリス人のフラットメイトが慌てていた。

「え?なんで?」

「元々3人で借りてたんだけど、オーナーとメインで契約を結んでた子がロンドンの家族と暮らすということで、出ていくことになったのね。そしたら残りの私たちも出ていきなさいって」

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エディンバラ暮らし|海鳥センターボランティア/自然への愛を育むのは

エディンバラ暮らし|海鳥センターボランティア/自然への愛を育むのは

ノースベリックにあるスコットランド海鳥センターで、夏の間すこしだけボランティアとしてお世話になった。
(応募したときの徒然なる日記はこちら)

地場の環境チャリティは何をしているのか、どんな人が関わっているのか。身近な自然や環境問題に対して、人々にいかに興味を持ってもらうのか。
そういうことを思い出しながら書いたら、長くなった。

ボランティアには、子供たちに海の自然環境を教えるホリデークラブや、

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エディンバラ暮らし|スープ日記

エディンバラ暮らし|スープ日記

カフェで見かけるSoup of the Day(今日のスープ)というメニュー。

野菜系のどろっとしたスープにパンの付け合わせといったシンプルな一皿で、派手ではないけど温かく、物価高の英国でそれでも安く、味も失敗が少ない。1人暮らしを支えた安心の存在の一つであった。

今日はそんなスープを取り巻く暮らしの話。

気を取り直してのカレンスキンク(スモーク魚のスープ) - スコットランド海鳥センター

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エディンバラ暮らし|版画の先生/戴冠式小話

エディンバラ暮らし|版画の先生/戴冠式小話

生活するように仕事をする人、自分の小さなビジネスを持っている人、自分の仕事を「見て!」と楽しそうに話す人。こんな人に私もなりたい。

もう2ヶ月も前のこと。ニュータウンにあるEdinburgh Drawing Schoolで版画の夏期講習に参加した。

英国にいるうちになにかしらのアートレッスンを受けたいと思っていて、直近で申し込めるものを探している中で見つけたものだった。版画なんて小学校の図工の

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エディンバラ暮らし|作ること食べること

エディンバラ暮らし|作ること食べること

王立植物園で野菜を育てている話を以前書いたけど、ある日の回がとんでもなく豊作だった。

10:00 雑草の手入れから始まる

朝から植物園へ向かう。前回種を植えてもう空き地がないので、この日は種蒔きはせずに雑草の処理だけ。

雑草はまとめてコンポストにする。
ミミズや虫や微生物の力を借り、6ヶ月かけて土に戻していく。分解を促進する薬剤は入れず、生き物たちのなすがままに任せる。分解中の雑草はわずかに

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エディンバラ暮らし|Foraging(野草採集)の日

エディンバラ暮らし|Foraging(野草採集)の日

英国で道端の草を食べたという話。

※10/30追記あり

「自然・コミュニティと繋がりたい」と考えていたら、地元の人との緩いつながりができたり、王立植物園でガーデニングしたり、海洋生態系保全のボランティアをやらせてもらえたりなど色々な角度で願いが叶っている。

今回のForaging(野草採集)も、そのひとつだ。

Cambridge Dictionaryによればforaging:”to go

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エディンバラ暮らし|王立植物園で野菜を育てている

エディンバラ暮らし|王立植物園で野菜を育てている

ガーデニング大国イギリス。植物園といえばロンドンのあるキューガーデンが有名だけど、エディンバラにも素敵な植物園がある。

中心駅からバスで10分ほど北上したところにある、エディンバラ王立植物園だ。世界中の多種多様な植物が一堂に会す。

丁寧に、でも野生味を損なわないように手入れされた植物もそうだけど、それに引き寄せられたハチや鳥たちもどこか人間慣れしていて、森で出会うよりも距離が近くて楽しい。

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エディンバラ暮らし|アートの街で生活してみて

エディンバラ暮らし|アートの街で生活してみて

イギリスは国民への福祉政策のひとつとして美術館を無料で開放している。エディンバラでも有難いことにそうなのだけど、心から嬉しいポイントは他にもある。

ひとつは、わざわざ美術館まで足を運ばなくても街中のそこかしこにギャラリーや額装屋、ポストカードショップ、画材屋さんの数々があること。もうひとつは建築や生活デザインそのものがアートになっていることだ。

アート産業の活気

アート産業の存在は散歩してい

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エディンバラ暮らし|鶏の照り焼きとボヤ騒ぎ

エディンバラ暮らし|鶏の照り焼きとボヤ騒ぎ

先日フラットメイトがカレーを作ってくれたのが嬉しかったので、自分もさらっと振る舞えるようなレシピをストックしておきたいなと思った。近場のスーパーで簡単に食材を揃えられ、尚且つ火の通し加減とか勝手がわかるもの…。
鶏のサイ(骨付きもも肉)が目に飛び込んできたので照り焼きを作ることにした。

***

照り焼きは英国人にとって受け入れられる味なんだろうか。

以前どこかのレストランに入ったとき、日本食

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